「現在、自衛隊の協力により第二次防衛線として強度を増した電磁柵を設置中だ。
その設置が終るまでは死に物狂いで第一次防衛線を守れ。そして設置が終ったら徹底的に壊走しろ。
どこのどんなバカが見ても警察ではお手上げだと理解するしかないほど無様に、みっともなく、壊滅的にだ」
「-我々に醜態をさらせと仰るか」
-『海の底』-
昨日の夜は、有川浩の小説『海の底』を読み返しておりました。
桜祭で開放された米軍横須賀基地に海から巨大な甲殻類の大群が上陸する。
途方も無い大群の巨大甲殻類が人に襲い掛かり人を捕食する。
人を餌と認識した巨大甲殻類は群れとなってより多くの人がいる横須賀市街地を目指す。
対応するのは神奈川県警の機動隊。
しかし、短銃の弾をはじき返し巨大な鋏で人を切り裂く巨大甲殻類の群れは、犯罪者の逮捕を主任務とする警察では対応能力を超えていた。
装備面で最も状況の対応に適している自衛隊は、政治的判断や縄張り意識等の駆け引きで前線に出ることができない。
現場の対策本部である機動隊の首脳は、早期に自衛隊を前面に引きずり出す為、状況を整えた後、日本中が注視する中、無様に恥をかく為だけの壊走をする為の壊走を最前線の機動隊の隊長達に命じる……。
物語は平行して、民間の子供達十三人を保護し、潜水艦内に避難し、救助を待つ自衛官二名の奮闘が描かれる。
二名の実習幹部が孤立した艦内から統幕さえ手をこまねいているしかなかった状況に最初の風穴を開ける……。
有川浩の通称自衛隊三部作といわれる『塩の街』・『空の中』に続く三部作の三作目です。
あ、あついお話です。
そして、おじさん達、かっこいい……。
この手のお話は、現場の人間が現場の判断で超法規的処置をとってヒーローになるってお話が多いのですが、このお話はあくまで職分を守り命令を守る人達の最善を尽くす姿を描いています。
しかし命令待ちの何も考えない人達ではなく、現場の情報をあらゆる手段を使って命令を出す人に上げて出されるべき命令の先回りをして状況を整えて手練手管を使って「上」の者に現場に即した命令を出させる……。暴走はしない。
か、かっこいい……。
面白いです。
そして燃えます!
おっさん萌えを公言している有川浩の面目躍如のお話です。
ただ、有川浩の作品に多く見られる「ベタ甘」の恋愛ストーリーはこの作品では影を潜めているので、「ベタ甘」の恋愛ストーリーが好きなお方は別の作品から読んだほうがいいかも。
面白いお話ですよ。
お勧めです。