以下の文は、産経新聞の『高村氏 野党は「現実的平和主義」に戻るべき 安保法制4年』と題した記事の転載であります。
『高村氏 野党は「現実的平和主義」に戻るべき 安保法制4年』
集団的自衛権行使を限定的に認める安全保障関連法制が施行されてから29日で4年を迎えた。
北朝鮮のミサイル開発など日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す中、安保法制によって日本の防衛にあたる米軍と自衛隊の連携が強化され、抑止力は強まった。
法案の策定作業を指揮した自民党の高村正彦憲法改正推進本部最高顧問に、改めて同法の効果などを聞いた。
「やっておいて本当に良かった」というのが率直な感想だ。
トランプ米大統領は2016年の米大統領選で、「アメリカは日本を守る。日本は米国を守らない。不公平だ。どうしても守ってくれというなら、在日米軍の駐留経費を全部出せ」などと、いわゆる日本の「安保ただ乗り論」に基づく主張を展開した。
もし安保法制がなければ、日米同盟に致命傷を与えるところだった。
安保法制を作っていたから、集団的自衛権の限定的な容認であっても、米国が本当に守ってほしいところは守れるようになった。
「本当に守ってほしいところ」とは、例えば日本周辺で日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が起こっているときに、米艦船がどこかの国に攻撃されるようなケースだ。
こうしたことを、安倍晋三首相や米国のプロの軍人や国務省、国防総省の担当者がトランプ氏に説明した結果、「安保ただ乗り論」を体現するようなトランプ氏が大統領になっても、今まで以上に日米同盟は堅固になった。
普段の訓練の中でも、海上自衛隊の艦船が米空母のエスコートもできるようになった。
その姿がはっきりと抑止力になっている。
北朝鮮も「日本に手を出せば米国にたたき潰される」という現実を、最大の抑止力として受け止めている。
北朝鮮のような現実的脅威がある中で、安保法制をやった価値は大きい。
中国は、十数年前まで日本と同じ防衛費だったのが、瞬く間に日本の数倍になり、毎年すごいスピードで増やしている。
中国は日米同盟があることで現実の脅威にならずに懸念で止まっている。
中国はそれなりに合理的な選択をする国だ。
だが、彼我の力の差があまりにつきすぎ、日米同盟がなくなってしまったら、中国の指導者が国策を誤らないとも限らない。
日米同盟が正常にあることで、中国が「脅威」にならずに済むのだ。
わが国を侵略する能力のある国が、侵略する意図を持っていたら脅威になる。
だから日米同盟が堅固であることが重要なのだ。
世の中では、個別的自衛権=自衛、集団的自衛権=他衛、とすっきり割り切れると思っている人もいるが、国際的定義からいって「自国防衛のための集団的自衛権」は当然ある。
これが、集団的自衛権の「限定容認」だ。
自国防衛のためだから、中南米の某国と戦う米軍を助けたり、米軍とともにイスラム国(IS)と戦ったり出来ない。
野党は法案に激しく反対した。
今となれば、腹の中では安保法制を施行したことに感謝する野党の有力政治家も多いのではないか。
もし感謝していなければ、それこそ悲劇的なことだ。
あの当時、私は「3人の憲法学者の発言は、今の自民党に塗炭の苦しみを与えているが、将来その100倍もの苦しみを野党に与え続ける」と予言していた。
主要野党が一時の行きがかりを捨て、早く「現実的平和主義」に戻ってもらいたい。
遅れれば、二度と政権につけないのではないか。
私は野党の心ある人たちのために心配している。
憲法9条に自衛隊を明記する自民党の憲法改正案では、(戦争放棄を定めた)9条1項と(戦力不保持や交戦権否定を定めた)同2項はそのまま維持する。
自民党の改憲案は「集団的自衛権を丸々認める」という話とは一切関係ない。
2項を維持する以上、自衛隊の任務や役割は何も変わらない。
いざというとき、命をかけて戦う自衛隊員には、名誉と誇りが絶対必要だ。
自民党の改憲案は、安保法制で整理した自衛隊の任務と権限の範囲は変えない範囲で、その存在を憲法に書き込み、合憲・違憲論争に終止符を打つためのものだ。
安保法制の制定時、現行憲法下で何ができるかギリギリまで議論し、法案に取り入れた。
その枠組みは変わらない。
転載終わり。
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