クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

蘇生

2014-07-22 00:06:43 | 日記

耕一は船に運ばれ、船倉にかつぎ込まれた。

若い船員が雑炊の入ったドンブリを持ってきた。

温かい雑炊にタクアンがのっていた。

耕一はドンブリを抱えるとそれを夢中で食べた。

雑炊を夢中でかきこみ、タクアンをかじろうとしたら激しい胃痛に襲われた。そして激しい下痢がきた。

もう何日もまともなメシを食べていない耕一の胃袋は、普通の食べ物を受け付けない身体になっていた。

食べた物を全部出し切った耕一は、水を飲んで空腹に耐えた。

 

しかし、それにしても、屋根のある建物の中で寝るのは何日ぶりだろう。

これまでは夜露に濡れながら寝ていた。

身体が冷えて眠れない夜もあった。

地獄の底にいるような孤独の中で朝を迎えたこともあった。

 

だが、今は身体にかける毛布もある。

声をかけてくれる人がいる。

そのことが、いかに有難いことであるか・・・・・。

耕一の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

「助かった・・・・」

そう呟いた耕一の口から、やがて安らかな寝息が聞こえてきた。

 

 

80トンの貨物船・愛友丸は月明かりの中で静かにたたずんでいた。

 

コメント (4)
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