耕一は船に運ばれ、船倉にかつぎ込まれた。
若い船員が雑炊の入ったドンブリを持ってきた。
温かい雑炊にタクアンがのっていた。
耕一はドンブリを抱えるとそれを夢中で食べた。
雑炊を夢中でかきこみ、タクアンをかじろうとしたら激しい胃痛に襲われた。そして激しい下痢がきた。
もう何日もまともなメシを食べていない耕一の胃袋は、普通の食べ物を受け付けない身体になっていた。
食べた物を全部出し切った耕一は、水を飲んで空腹に耐えた。
しかし、それにしても、屋根のある建物の中で寝るのは何日ぶりだろう。
これまでは夜露に濡れながら寝ていた。
身体が冷えて眠れない夜もあった。
地獄の底にいるような孤独の中で朝を迎えたこともあった。
だが、今は身体にかける毛布もある。
声をかけてくれる人がいる。
そのことが、いかに有難いことであるか・・・・・。
耕一の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「助かった・・・・」
そう呟いた耕一の口から、やがて安らかな寝息が聞こえてきた。
80トンの貨物船・愛友丸は月明かりの中で静かにたたずんでいた。