クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

岩間道場へ

2014-07-26 17:22:06 | 日記

今朝は6時前に散歩に出かけました。

山道は日陰が多く、厳しい暑さが避けられるので助かります。

(本文)

秋の取り入れが終わった田舎の砂利道を、高下駄を履いた少年がゆっくりと歩いていた。

陽が傾きかけた田舎道に、カランコロンと小石を蹴る音が響く。

かなたに小高い山並が見えた。

その山並みの麓から関東平野の田畑が広がっている

故郷で見る田園風景とは大分違うな、と少年は思った。

 

昨晩、故郷の秋田から夜行列車に乗って上京した少年は、今朝、上野駅に着き、常磐線に乗り換えて岩間駅で降りた。

そして今、少年は合気道の開祖・植芝盛平の道場に向かって歩いている。

開祖の最後の内弟子になるために、今こうして歩いている。

 

それにしても、東京上野駅の雑踏は想像以上であった。

田舎者の少年を驚かすに十分であった。

時は昭和41年、日本経済が高度成長の坂を懸命に登り始めた頃である。

誰も彼もが、忙しそうに動き回り、大きな声を出してうごめいていた。

《自分にはあんな喧騒の都会より、こんな田舎の方が性に合いそうだ》

少年はそんな事を思いながら、カランコロンと歩いて行った。

 

少年の名前は本間学。16歳。

しかし、本間少年の顔は妙に大人びて見えた。

その目は憂いを含み、暗く沈んでいるように見えた。

夢と希望を胸に、未来に生きる16歳の少年の顔ではなかった。

 

彼の懐には父から植芝開祖に宛てた紹介状が入っていた。

「自分の息子は暴れ者であるが、根は真面目で辛抱強い。なんとか一人前の男にして頂きたい」

そんな言葉が綴られた手紙が入っていた。

 

一時間ほど歩いただろうか、田んぼと畑の中に広い屋敷森があった。

屋敷森の入り口に「合気苑」という看板がかかっていた。

 「こんなところで、俺はこれから生活するのか・・・・」

ぽつりとそう呟くと、少年はゆっくりと合気苑の門をくぐった。

 

 

 

 

コメント (2)
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