



小説は結構前に、どんなもんじゃいっ。お前の力、見せてみんかいっ?! と買って読んでいる。シロニンジャーこと山谷花純がこの本好きらしい。出たかったんだろな、むふふふ。それはともかく、実写では地の文が当然無く、生身のイケメンが演じてることや人となりもわりと普通の少年に寄せている為、『僕』は小説程理詰めできたり、意識的に道化のように振る舞ったり、肉体的には特に弱々しくはなかったりする。桜良の親友恭子も小説のように男性的と言っていい程に騎士のように桜良を守ろうとするワイルド王子様系女子ではない。ほぼ原作のままなのは桜良とガム君だけ。ガム君に関しては原作よりガム君らしかった。12年後にかなりスッキリしてしまったからガム君というかガム君?! だったが。桜良の方は僕と恭子が小説より落ち着いた分、前半はちょっと妖精的な人格になっていたが、本心が見え出し、僕の感情も高ぶり始める中盤以降は徐々に地に足が着いてきて、後半はとても良い。生きてることを掴もうとしている姿が綺麗だった。結末は12年後があるから少しピークが前後してしまったが、むしろ12年後の描写が比較的簡素だったから、未来の人間関係や時間経過が観客に伝わり難いところはあったような気もした。いきなりクライマックス状態だったもんね。未来の僕が生徒に語る経緯や、小説と違い完全に一人で親友の死を飲み下して結婚式まで至った恭子の気持ちがわからないではない、というくらいの間合いで、足すならもう一段踏み込んでもよかった気はした。原作の恭子と僕が共闘的に桜良の喪失から立ち直る結末は描写の少ない恭子の負担が大き過ぎるようにも思えたり、僕の代償が少ないようにも思えた(桜良の死はやはり『僕』が貰うことの方が大きい)から、12年後の改編自体は悪い気はしなかったけどね。苦味のある結末ではあるが、青春の物語であることは間違いない。