野に撃沈2

多摩地区在住の中年日帰り放浪者。(k10D→k7→k30→)k‐5Ⅱsを忍ばせ、人気のない野山や公園、路地裏を彷徨い歩く

唐松尾山靱帯断裂

2013-09-30 | 登山

 20年に及ぶ山行で初めて遭難しかかった。唐松尾山頂上直下の笹薮に覆われた斜面で木の根っこに躓き、左足首をひねってしまった。ついでに2mほど滑落したが、木に引っ掛かりすぐに止まってくれたので何とか事なきを得た。初めはさほど痛みも感ぜず、下山だけはできるかと甘く考えていたが、だんだんと傷みが激しくなってきた。予定では8時間の山行でまだ半分を少し過ぎたばかり、計画していた笠取山は諦めても此処からの下山には優に3時間半近くかかってしまう。勿論携帯が通じる山域ではなく、またすれ違うハイカーもほとんどいない山なので、何とか自力で痛みを堪えだましだまし降りていくしかない……。はたして下山口までたどり着けるのだろうか……。

行程概略;7時半三ノ瀬登山口→8時45分将監小屋→9時10分山の神土→10時ごろ唐松尾山頂上、この少し前で靱帯断裂→11時20分水干尾根→11時50分笠取山山麓の高原で昼食→12時20分笠取小屋→13時40分作場平登山口→14時10分中島川橋駐車場

 前日の台風通過の影響で林道には吹き飛ばされた小枝が多かった。朝5時半に自宅を出て2時間、やっと一之瀬高原に着いた。登山口と下山口のちょうど真ん中あたりの駐車場に車を止めてすぐに歩き始めた。標高1200mを超える高原は、空気が冷たくじっとりと湿気を含んでいて、辺りには未明の朝の気配が濃い。

 

 山の端から顔を出したばかりの木漏れ日が眩しい

 

 暫くは林道歩きが続く。道には小枝が散乱している。軽トラックに乗ったおじいさんが「どこまで行くんか」と声をかけてくれた。

 

 一輪だけ咲き残ったヤマホタルブクロ

 

キノコ

 

 辺りはだいぶ明るくなってきた。

 

 水の枯れかけた沢筋にはカメバヒキオコシが見られる。

 

 ムジナの巣の水場を過ぎたら急に視界が開けた。遠く富士山が見える。

 

小屋手前の分岐

 

 予定よりもだいぶ早く将監小屋に着いた。

 入り口に張られた網はシカやサルへの備えだろうか。

 声をかけても小屋の主人は不在であった。

 

 ここで水を頂いて峠までの急坂を登る。

 

 

 あっという間に小屋は眼下に落ちていく

 

 将監峠に着いた。09年版の昭文社の地図では登山口からのコースタイム2時間20分となっているが、1時間20分ほどできたことになる。そんなに急いだわけでもないので、コースタイムが間違っているのだろうか。

 峠を右折すると飛龍山、雲取山へといたる。ここは奥秩父主脈の縦走路の一部となっている。

 

 七ツ尾根コースとの出合を右に曲がる

 

 山の神土の分岐。右は奥仙波、白石山への道。ここは左に曲がる。

 

 昼寝をしたら気持ちのよさそうな草原が広がる。

 

 ここから唐松尾山までは約一時間。暫くはゆっくりとした登りが続く。山道は途中何か所か崩落していて、その度に巻きながら渡っていかざるを得ない。

 

 笹薮に覆われた急斜面の道が続く。

 

 頂上あと少しという所で木の根っこに躓いて転倒、滑落。初めは足首をちょっとひねった程度と思いそのまま登り始めた。頂上に着いたころまでは大した痛みもなく、大丈夫だろうと高をくくっていた。

 

 ここからの尾根歩きは緩やかなアップダウンで、ここが本来の山行では一番楽しいところの筈だったのだが、次第に左足には痛みが走るようになって風景を楽しむどころではなくなってきた。

 

 

 まだ冠雪のない富士山は少ししまりがない。

 

 ツツジの仲間は紅葉を始めている。

 

旨そうなキノコ

 

倒木が行く手を阻む。普段なら何でもないちょっとした障害が痛みを引き起こす

 

 山腹を走るのは大菩薩ライン

 

 何とか水干尾根の分岐まで来た。ここから下山するには距離だけだと中島口のコースが近いのだが、急な斜面なので足が耐えられそうにないので、水干経由のコースに変える。

 

水源の碑の傍にダイモンジソウが咲いていた。左足を下ろすのがつらくなってきた。

 

 

小さな分水嶺の碑、奥には笠取山が見える。

 

 痛む足を鎮めるためと昼近くになって空腹も覚えたので、昼食をとることにした。日差しが思ったより強いので日陰を選んで座った。靴を脱いでみると腫れが思ったよりひどい。このままでは靴が履けなくなると思い、早々に再び靴を履く。携行してきた菓子パンをジュースで流し込み、5分ほどで昼食を終え再び歩き始めた。

 

 昼食で休んでいる間に、青く腫れ上がった足首の痛みはだんだん強くなり、一歩歩くたびにずきんとした痛みが走る。おまけに悪寒も走るようになり、額からは脂汗が流れ出てくる。さんざんの状態だった。でもここからは1時間半あれば何とか車にたどり着ける、あともう少し頑張ろうと自分に言い聞かせて下りはじめた。

 

 この丘は富士山の絶好のビューポイントだが、眺める余裕はない。

 

 何とか笠取小屋まで来た。

 

 さに40分ほどで一休坂分岐

 

 やっと林道の登山口作場平、ここまでくればあとは車の置いた場所まで15分ほど。どうやら何とか生還できたようだ。

 

  この後は痛む左足(運転に支障がない方の足でよかった!)を車に押し込め、ほぼ右足一本で2時間かけて自宅まで帰った。次の日医者に見せると、ああこれは靭帯が切れているね!最低10日間は絶対安静、完治には2か月かかるから覚悟しておくように、とのご託宣。

 どうやらひねった時に靭帯が切れかかり、その後歩いたのがいけなかったらしい。もっともそのまま山で救助を待つなんてことは出来なかったのだが…。

2週間たってデスクワークに限定して仕事を始めたのだが、まあその間はすることもなく辛かった。今回の教訓としては歩行には一層気を付けること、それでも足をくじく場合があるのだから固定テープや杖を必ずザックに忍ばせておくこと、こんなところだろうか。

 それにしても帰れてよかった。 この辺で。