斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(39) 【プーチンの墓穴が見えた】

2022年03月13日 | 言葉
 ウクライナ侵略戦争で軍事的優位に立つロシアは、国際社会からは孤立の一途。ウクライナを制圧し終えたとしても、その先のロシア国家運営は困難を極めそうだ。プーチンの行く手に待ち受けるのは、どう考えても<破滅>の二文字のみである。

 なぜ、バレるウソばかり
 ロシア側が挙げる侵攻の理由に「東部親ロ派住民に対する、ウクライナ側からのジェノサイド(集団虐殺)」というのがあった。原子力発電所攻撃では「ウクライナの原子爆弾製造を止めさせる」を理由にした。ジェノサイドはその前から、つまり侵攻開始時から口にしていた理由付けだった。
 侵攻以前、東部の親ロ派住民は武装組織を作り、独立を唱えてウクライナ軍と衝突していた。武装組織兵の死傷を指して「ジェノサイド」と主張するなら、ロシア側の言語感覚はどうかしている。この件でオランダ・ハーグの国際司法裁判所が今月7日開いた公聴会は、ロシア側の出席拒否で成立せず、1日のみで閉廷した(9日付け読売新聞朝刊)。ロシア側の主張は世界の嘲笑を招くだけということを、ロシア側も知るゆえの欠席だったのだろう。 
 さらに最近になって「ウクライナ側がアメリカの指導で生物化学兵器を作っている」(11日)と言い始めた。よくもまあ次から次へと、すぐにバレるウソばかり考えるものだ。

 プーチンが恐れるのはロシア国内の反対派
 それにしても、なぜプーチンは、バレるウソばかりつくのか。理由は最初から国際社会を相手にしていないからだろう。主に国内向け。国際社会にはウソをウソと見破る”常識”があるが、報道統制下のロシア国内であれば、市民の耳に届く情報は限られ、ウソがウソのままで通じる。
 見えて来るプーチンの当面の狙いは、ロシア国内の反対派を黙らせることだ。国外でウソとバレても、ロシア国民が真実と受けとめるなら、とりあえず可とする。第二次チェチェン紛争(1999-2009年。プーチンは2000年に大統領就任)、2008年のジョージア(旧グルジア)侵攻と、他国を侵略することで支持率を上げてきたプーチンにすれば、国民の支持の方が大事だ。
 まず、国内反対派の動きを封じ切る。短期的には、それで凌(しの)げる。その後の国際社会での”失地回復”は、核兵器を持つ軍事大国ゆえに、黙っていても”敵”の方から歩み寄り、落ち着くところに落ち着く、と計算しているのだろう。

 ロシア国内の反対派デモに注目
 だが、プーチンのロシア国内重視は、そのままプーチンの弱点でもある。ロシア国内でも、やがて真実は知られるようになる。きっかけは目前まで迫っている市民生活の窮乏だ。経済制裁によりモノは輸入出来ず、とりわけ食料が不足する。加えて外国企業のロシア国内からの撤退により失業者も増える。中・長期的に見れば、国民の不満は必ずや爆発する。
 経済制裁はボデーブロウのように徐々に効いてくる。今後の注目点は、ロシア国内の反対派の動きだ。とりあえずロシア国内デモのニュースに注目しておこう。

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