厚生労働省所管の財団法人「介護労働安定センター」の2013年介護労働実態調査によると、介護現場での人手不足は依然として深刻だということです。
従業員について「不足」と答えた事業所は「大いに」「やや」を含めて56.5%に上る
その理由は「採用が困難」が最多で68.3%
採用が困難な理由は「賃金が低い」が55.4%
従業員に働く上での不満を聞くと「人手が足りない」が最多で45%
「仕事内容の割に賃金が安い」が43.6%と続く
介護業界は人手不足なのに賃金が低いせいかよく話題にのぼる
需要と供給の関係から見れば、賃金は上がっていいはずだが…
『日本の賃金を歴史から考える』で金子良事が、高い技能を持ちながら賃金の低い職種として、ソーシャルワーカーや保育士と共に介護士をあげている。
使用者側の支払い能力の問題はあるが、個別の経営者の能力に帰すべきではなく、業界全体の構造に原因があるとしている。加えて支払う側あるいは低賃金を傍観し受容している第三者からの観点をあげ、おもしろいのは「頑迷なボランティア精神」をあげている点である。
労働者本人に頑迷なボランティア精神がある場合もあるが、多くは雇用主と世間の押し付けであるように思う。やりがい・充実感・感謝といったような言葉で正当な報酬を得ることを拒まれているかもしれない…ケースワークの母とよばれたアメリカのメアリー・リッチモンドでさえ、賃金を受け取ることを強く批判されたそうだ。金子良事は、ボランティア精神に対し、「あえていわせてもらう。エゴでしかない」と非常に厳しい。「美辞麗句に包まれているがゆえに批判しにくい性質である」「美辞麗句が本物なのか偽物なのか見分けるのは難しい」「偽善の上にボランティア行為を無償の労働として消費するものもおり、罪悪感を持たされ、それに反論できないものは使い倒される」と経営者ならずも嫌な気分になるようなことを書いている。
私は労働者自身がこういう状況を作り出している部分もあるんじゃないかと自分自身の経験から思う。
ところで、介護職の賃金は本当に低いのだろうか。
経営者は賃金が低いから人が集まらないと言い、労働者は仕事内容のわりに賃金が低いと言う。ただキツイとか人がやりたがらないというだけでは賃金は上がらない。私は介護職の経験があるが、「仕事の割には賃金が低い」とは実は思ったことがなかった。なるべく「やりたくない」タダ働きはしないようにしていたし、完全週休2日でありがたかったし、夜勤のとき以外に体がキツイということもなかった。少なくともそれまで経験した仕事に比べ割に合わないとは思わなかった。同僚にしても働きに明らかに見合わない報酬というふうな人はほとんどいなかった。
ご存じのとおり、介護の仕事は資格がなくてもできる。国家資格である介護福祉士を持っていれば手当がつく事業所もあるが、まったく関係ないところもある。資格の有無にかかわらず、そのときの市場の動向によって初任給や時給が決まる。
高い技能がありながら低賃金の仕事と言えるだろうか?
今日久しぶりに美容院に行き、美容師さんも給料安いよね~という話をした。仕事の後トレーニングを受けても自主練習をしても無給。でも、あんまし問題にならないよね~とか。
髪を切ってくれた女の子が言いました。
「確かに給料は安いし、トレーニングにお金はでない。でも技術を盗むことができる。先輩の知識・技術を自分のものにできる」
違いはこれか。
介護職でこんなこと言う人私の職場にはいなかった。
世間の人から「立派やね~頭が下がるわ~」と言われ、大切な仕事なんだ、やりがいのある仕事なんだと自分に言い聞かせ、気持ちをやや上向きにすることはあっても、美容師の彼女が言ったような仕事に対する気概はなかったかも…
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