(かつて世界選手権が行われたグリーンドーム前橋、現在は前橋競輪が行われています)
1レースの賞金としては、世界最高額の1億円をかけて行われる競輪グランプリが平塚競輪場(400m)で開催されました。
普段は車券が売られる公営競技の競輪にはさほどの興味がありませんが、ナショナルチーム短距離のエースである新田祐大選手と脇本雄太選手の二人が出走するのでテレビでレース観戦してみました。
9人しかいないS級S班の出走選手は、①郡司 浩平、②脇本 雄太、③松浦 悠士、④和田 健太郎、⑤清水 裕友、⑥森澤 太志、⑦平原 康太、⑧新田 祐大、⑨佐藤 慎太郎
スタート後の並びでは、注目している脇本選手は予想通りの最後尾でした。新田選手は中ほどの位置取りです。残り2周目で脇本選手がスパートして後方から上がり、そのまま先頭に出て逃げ切りを狙います。
後方では、通常の自転車競技なら失格になると思われる大きな横の動き、激しいブロックも展開されます。
脇本選手自身は大外から上がってくるときに、横の動きであおられて少しスビートが落ちてしまっています。
そして、前の進路が開けた伏兵の和田健太郎選手が、脇本選手を刺して1着ゴール!
1着 和田、2着 脇本、3着 佐藤 3連単の払戻金は221,650円とかなりの高額、2連単でも20,020円ですが、当てた人がどれぐらいいるかは分かりません。
ちなみに私は、車券は買いません。
またもう一人のナショナルチームの一員である新田選手は7着でした。
オリンピック代表、世界戦の「ケイリン」のメダリストも、「競輪」では簡単に勝つことが出来ないようです。
(現在の国際競技は250mインドアですが、前橋は335mと長く、建物も大きく立派な施設です)
あらためて日本独自の文化である「競輪」とその競争形態を参考に作られた国際競技の「ケイリン」の違いについて考えてみました。
以下、漢字表記の「競輪」が日本式公営競技、カタカナの「ケイリン」が国際競技です。
①先頭誘導員について、競輪はエンジンついてない自転車で引き、ケイリンはモーターペーサーで引く。
②競輪の誘導はゆっくり始めるが、ケイリンはスタート時は、時速30㎞で、離れる時は時速50㎞とかなり早い。
③押圧、ブロック、頭で進路をこじ開ける等は、ケイリンを含む普通の自転車競技では反則だが、競輪では結構許容範囲が広い。内線突破で走っても多少ならペナルティを受けない。
④250m走路で行われる国際競技のケイリンの出走は7名だが、競輪は通常9名の出走
⑤ケイリンはカーボンフームやディスクホイールが使用できるが、競輪は使用不可(ガールズ競輪では使用可能)
⑥競輪は公営競技として金をかけて行っているというのが、何と言っても一般の自転車競技との一番の違い。
⑦スタート後の並び順もケイリンは抽選で決められている。
⑧誘導員が離れるのはケイリンでは残り3周前で厳格に決まっている。競輪は走路の長さで決まっているようです。しかし、離れる位置は無線で指示を受けてなのでレースの展開で変わってくるようで、その辺もあいまいです。
(もし33バンクだったら脇本選手が勝っていたかもしれません)
今日のレースでは、脇本選手は得意の逃げ切りを狙いましたが、400m走路での逃げ切りはやはり厳しい。もちろんあおられたことも影響していますが、これが333m走路でしたら逃げを決めていた可能性もあったかもしれません。
ところで新たに建設中の千葉競輪場はインドア250mの国際規格になるとのことです。
250m競輪は、通常の競輪とは違ったものになると予想されます。
(250m国際規格の伊豆ベロドローム)
コーナーのバンクも急になるので、現在のような許容範囲が広い走りだと、競り合いになり速度が上がってからの落車は大きな事故につながる可能性があると個人的には考えています。
走路の幅員も狭くなると考えられるので出走は9人から7人になるのではないでしょうか。
45度にも及ぶコーナーのバンクを考えるとゆっくりの誘導はできないと考えられますので、モーターペーサーか、電動アシスト付き自転車で速めの誘導となり、落車事故の防止のためには押圧行為も厳しくチェックされるのではないでしょうか。ペーサーが離れるのも3周前で決められ、国際ルールのケイリンに近くなると思います。
もしそのような厳格なルールになったら、このようなレースを古くからの競輪ファンが受け入れてくれるでしょうか。
日本独自の文化である競輪と国際競技のケイリンは違いすぎますが、私が競輪を見ていてうれしいことは、現在も30数年前、私が競技に打ち込んでした頃と同じクロモリフレーム、スポークホイルールのトラックレーサーでレースが行われることでしょうか。
ペダルとシューズの固定も昔ながらのトウクリップ&ストラップ、ハンドルも昔使っていたのと同じタイプのスチール製です。懐かしい…
(1981製片倉シルクのクロモリフレームのトラックレーサー、当時の愛車です)
現在はあまりにも機材が進化しすぎています。
それに伴い、自転車もパーツも高額になり過ぎています。それはむしろ時として競技の普及の妨げになるのではと思います。
その昔は競輪の公益金で高校や大学の自転車競技部に「貸与車」といって、普及版のロード、トラックレーサーが貸し出されており競技入門者の負担を軽減してくれていました。
とても良い制度だったと現在も懐かしく思い出します。
コロナ禍の中で2020年が暮れようとしています。
先が見えない不安の中で、元旦のニューイヤー駅伝そして、箱根駅伝が開催されることは救いです。
しかし悲しいことに、箱根駅伝では「応援したいから、応援にいかない。」と観戦の自粛を訴えています。ニューイヤー駅伝でも同様です。私ももちろんテレビの前で母校の応援をするつもりです。
スポーツは希望です。
頑張っているアスリートの為にも、東京五輪の無事の開催を祈りましょう。
どうか良いお年をお迎えください。