(2018年明治神宮外苑クリテリウムの表彰台)
学生自転車選手にとってインターカレッジは特別な大会です。
ロードレースへのエントリーはありませんが私もトラック種目には参加しました。
選手は母校の名誉を背負って誇りをもって走ります。
インカレロードレースでの死亡事故は本当に悲しいことです。
自転車関係サイトでも、優勝した選手に関するニュースが一面で、事故のニュースはどちらかというと二面扱いでしたが、選手経験がある栗村 修さんは、は今回の事故を憂慮され、ツアー・オブ・ジャパンHPのブログで事故防止について訴えておられました。
事故防止、対策、リスクマネジメントをしてあげないと亡くなった選手も浮かばれません。
(2018年明治神宮外苑クリテリウム)
栗村さんの記事も参考にしながら事故の原因と対策について考えます。
1.今回の事故固有の原因
①断続的な雨で路面が濡れていた。しかし、本格的な雨降りで道が川のようになっていたら、選手も速度を抑えていたと思いますが、そうではなかったため、スビートが出ていたことも考えられるでしょうか。
②下りですが、緩いカーブだったので減速せずに、むしろ踏み込んで加速していたかもしれません。
③先頭集団を追う追走集団だったため、かなりの速度が出ていた。80㎞/hぐらいとの報道もあり、ワールドツアーのレースなら普通に出ている速度ですがウェット傾向の路面では無理をし過ぎたのではと個人的には思います。濡れた路面でスプリント、ケイリンなど短距離のゴール前より速いスピードなのですから無理があるのではないでしょうか。
(シクロクロスは一般のロードレースのようなハイスピードにはならないため、落車があってもあまり大事にならない傾向はあります。写真は野辺山の大会です)
2.最近のレース環境共通の問題
①機材の進化でレースのスビートが上がっていること。
カーボン素材のフレーム、パーツ等機材の進化、軽量化によりレースの平均速度が上がっています。タイム系種目は記録が向上しており結構なのですが、集団走行の種目では落車の際のダメージが深刻です。
②ロードレースやサーキットコースを使ったイベントが増えているため。
特に未熟なライダーが危険な走りをしたり、技術不足で事故に遭うことも考えられます。
実業団の大会や、市民レベルの大会でも重大事故は発生しています。
(さいたまクリテリウムでのエガン・ベルナル選手、彼も練習中の事故から復帰しました)
ツール・ド・フランスの100年以上に及ぶ長い歴史の中で、死亡事故は2件その内1件は、1967年にトム・シンプソン選手がアルプスの登りで単独で倒れてその後亡くなった事故で、ドーピングの影響と言われましたが、今日的に考えると熱中症の可能性が否定できないようです。落車が直接の原因での死亡事故は1993年のファビオ・カサルッテリの例ですがこの当時プロはノーヘルメットが認められており、ヘルメットを着用していれば助かった可能性があったということです。最近のヨーロッパのレースでの死亡事故も関係車両との接触や心臓疾患によるものが多いようです。
一定件数で死亡事故は発生していても、落車が直接原因での死亡事故は多くはないのではと考えています。
しかし、何らかの対策は必要です。
(さいたまクリテリウムで見事な逃げ切り勝利をした新城幸也選手、彼も練習中の事故から復活しました。公道での練習は要注意です)
事故対策として考えられること
①自転車の重量制限を今よりも重くする。
②タイムトライアルではない一斉スタートのロードレースではギヤ比の制限をかける。
一般の自転車競技ではなく、公営競技の競輪には、ルール上で結構あいまいなところがあります。(押圧行為がどこまで許容範囲?、仲間や先輩後輩でラインを組んでチーム戦をしてもOK)しかし、力のある選手が大きな倍率のギアを使うと当然スビートが上がるため、(力のない選手が大ギアを踏んでもスピードは出ません)レースが大味な展開になることの防止と共に、「選手の生命を守る」ことを目的としてギアの制限が設けられています。
最大で4倍までとの決まりです。
競輪のあいまいな決まりごとは今一歩ですが、ギヤ比制限の思想は素晴らしいと思います!
(競輪も開催されるグリーンドーム前橋、写真は全日本選手権)
軽くて加速がよい自転車で、重いギヤを下りで踏み込めばとんでもないスピードが出る可能性もあります。
ワールドツアーのレースでは時速100キロ超もあるかもしれませんが、彼らは選ばれた一握りの選手です。そしてさすがに雨の日は押さえて走っているのではと考えています。
プロテクター等ヘルメット以外の防具は、私が走っていても暑い日などは苦痛になると考えられるため現実的でないと思うのですが、ギア比の制限はあり得ると思います。ちなみに私のロードでの一番重いトップギヤは50T×11Tで4.54倍ですが、滅多に使うことはありません。
長くてまっすぐな下りで、思い切り踏み込んだら4.54倍でもくるくると回り過ぎてしまうかもしれません。
しかし、そのようなスピードで下ることは安全上では問題です。
その他、柔道の受け身の練習等で転んだ時の対処法を身に着けることも笑い事ではなくあり得ると思いますが、時速80キロ超ともなると厳しいのが現実ではないでしょうか。
自転車の重大事故の大半は頭部外傷ですから、軽いだけでなくかつ衝撃吸収に優れたヘルメット開発も重要ではないでしょうか。また、脊椎、特に頸椎部分の損傷も致命傷になる可能性があると思います。そうなるとやはり転び方の練習も必要かもしれません。
手や腕の骨は折れても何とかなるが、頭や首が折れたら命に係わる!
そのことだけは心に留めておく必要があります。
それとレースにおいては斜行等の危険走行の禁止はもちろんですが、スピードについてはセルフコントロールも必要ではないでしょうか。
事故で亡くなられた選手は1年生にして、自転車競技の強豪校、法政大学でインカレのメンバーに選ばれた逸材です。
今回の事故は残念でなりません。高校生の頃から活躍されており、自転車競技を心から愛する青年であったようです。
心より冥福をお祈りさせていただきます。
(湯ノ丸高原にて)
少なくとも私個人としては安全を意識して、体力健康維持のためにも末永く自転車と付き合っていきたいと考えています。
個人レベルの問題ではなく、自転車競技の未来のためにも関係者全員でレースの安全対策、リスクマネジメント活動を始めてほしいと熱望しています。