「薄情な人、、、」
利休の後妻・宗恩(そうおん)は、これまで何度利休を、そうなじろうと思ったかわからない。しかし、そんなふうに思うたびに、面と向かうと口にできない。どうしても口にさせない強烈な何かが利休には備わっている
利休は飛び抜けて鋭い審美眼と奇知を備え、茶の湯として天下一の名声と富を得ている。秀でた男が己の道をつらぬこうとすれば、はちきれんばかりの自負をもたなければならない。傲慢になるのは仕方がない。それでいて茶の湯者としての繊細な感覚の美意識を持つ
利休は遠くで憧れとして眺めているのがふさわしい、、
妻・宗恩は、夫である利休の神経がいつもむき出しになっているのを感じて息苦しくなる
利休はけっして口うるさく罵るなどということはしない。それだけに、妻は利休の顔色、口調が気になってならなかった。そこに不満や侮蔑がただよっていないかを懸命に読み取ろうとした
ある夜などは何が気に入らなかったのか、座敷に上がった利休が座りもせず、一言も口をきかずに帰った。後におそるおそる「いかがなさいました?」と尋ねた
「床の花入れの椿が、少し開きすぎていて落ちつかなかった。あれではすわっていられない」
しかし開いた椿はまったくいけないのかと思っていると、日によってちょうどよく開いたのを利休自身が飾ったこともある
何がよくて、何が悪いのか
妻にはわからなかったが、、
妻は家の中のしつらえに、ことのほか心を砕いた。その日の花入れ一つ選ぶにしてもどれなら利休に満足してもらえるのか、どんな花をどう活ければ気にいってくれるのか、、不安でならなかった
家の中の掃除の仕方
朝夕の食事に使う皿の選び方
香の物のならべ方
飯のよそい方
料理の盛り方、、
すべてに利休独特の美しさが要求される。すべてが利休の心にかなったものでなければ利休の眉のあたりが変化する。とても気に入らないときは、眉間にシワがよる。膳にのせた皿の位置が気に食わず、自分で直されたりすると、妻は背中に冷や汗をかいた。
妻は利休の不機嫌な表情を見たくないために、心をすりへらした。。
🤔ルルの感想
利休の妻はたいへん
普通に賢い妻なら尚更利休に負けず劣らず我が強いから、利休を不機嫌にさせるのは、自分を否定されたように感じて嫌なんだろうなあ
抜けたふりというか、自然に振る舞うことができる本当に賢い妻ならば、自我が邪魔だということを知っているから、無理なく利休に合わせて楽しんで生きれそう