鮎は水が清くて、流れの急な、比較的川幅の広い川で育ったのでないと、発育が十分でなく味も香りもよくない。
鮎を食べるには、はらわたを抜かないで塩焼きにし、蓼酢で食べるのが一番完全。醤油をつけて照焼きなどにすれば、醤油の香りや味醂に邪魔され、天然の香気はたちまち滅してしまう。また、はらわたを抜いてしまっては、鮎の味覚価値は語るまでもないことになってしまう。
とり方で味も変わる。岐阜の人は鵜に呑ませたのが一番いいという。それは鵜が鮎を瞬間に即死させるために、生から死への衰えを見せないからだ。鮎の歯形がついて感じはよくないが、味に至っては確かに岐阜の人たちの自慢するとおりだ。
大きさの加減でも、とれ頃でも味が大いに違う。京都あたりでは六月中。長さなら五、六寸(約15センチ~約18センチ)の若鮎から子持ち鮎になるまでがいい。要するに鮎の肉の分子が、細かくなめらかな間が美味い。
形を整えた鮎が食膳にのぼったら、頭から順次にかぶり食うのが、真の鮎食いの食い方である。もちろん骨は吐き出す。頭を食い残してはせっかくの鮎も到底成仏しきれない。また新鮮な鮎をフライにあげるなどは、愚の骨頂である