テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

転写

2014-03-18 20:02:54 | 脱線して底抜け
先日、船のことを話していて、昨今の旅客船の内装についての話になりました。
木の温かみが良いという話題でしたが、実は旅客船では、防火の観点から、木はだんだんと使われなくなっています。かといって、樹脂や金属素材の無機質な触感では物足りなく、また、巾木(床からの立ち上がり部分に5~10cmほど施された横木)や腰壁に彫られた意匠(カーブやラインなど)が無いと、高級感にも欠けます。無機素材(鉱物)系の不燃ボードなどでは、そのような意匠造作は不可能ですが、高級船室などでは、任意に成型可能で、かつ木ねじが立つ、そんな防火内装建材があります。しかも、表面には自然な木目が印刷されており、手触りもほんのりと暖かく感じます。これは転写という技術が使われた印刷で、フィルムなどの表面に、インクジェットプリンターなどで、顔料、染料で木目、石目や様々な模様を描き、そのフィルムを印刷したい素材に密着させ、加熱圧締して、素材の表面に模様をそのまま定着させる方法です。
昔、マーブル模様などを水転写という方法、水の表面に数種の顔料で模様を描き、その水面に浮いて描かれた模様に、曲面の被塗物を静かに沈め、複雑な曲面にも精緻に模様を転写し、その後、乾燥、上塗りサーフェサーなどをコーティングする技法が小物中心に使われていましたが、フィルム転写はフィルムと被塗物の間を抜気することで、密着を高め、鋭角で細かいリブなどにも充分追従して、フィルムに印刷された図柄を転写します。
その昔、駄菓子のおまけで、セロハンに図柄が印刷され、何かに重ねて爪で擦ると、図柄が転写される玩具がありましたが、その発展形です。工業化されたのは印刷による図柄ではなく、数十色が揃ったカラーシートフィルムをXYプロッターのような機械で、任意の形状、文字などに切り抜き、それをアプリケ-ターフィルムに配置して簡単にロゴなどを貼れるようにしたタックシートカラーの方が早く、その昔、JRなどのロゴが変わったときに、大規模に採用され、ごく短時間で全車両のロゴ変更を行ったことが知られて、一気に普及し、運送会社のロゴや図柄は今は全数そうなってます。
フィルム転写の優れたところは、組み合わせる素材にコーティングする塗料との組み合わせ相性が抜群なところで、複雑な多角形のアルミ支柱などでも、石目などを転写すれば、まるで御影石を精緻に削りだしたような見た目が得られ、手触りこそ硬質感に劣りますが、素晴らしい仕上がりです。木目の場合、平板は転写に敢えてこだわることなく、ダイノックシートなどの壁紙の発展形が手軽で良いのですが、真空加熱転写の凄いところは、複雑な形状への追従性であり、装置の大きさの制約から、さほど太いものには施工できないのですが、通常のアルミ建材には充分で、高コスト(手間がかかる)が何とか解消されればもっと普及するとは思うのです。

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