空を飛ぶ虫はいろんな種が居ます。
FLY(飛ぶ)そのものの名の蝿、蜂、蜻蛉、蝶、蝉、蚊、鍬形、甲虫、カナブン、蟷螂、蝗、蛍、地中にいる螻蛄や水中にいる源五郎も飛びます。あの憎き蜚蠊もトぶし、蟋蟀の仲間のように種によって飛んだり飛べなかったり、トノサマバッタなどは同じ種でも飛翔型とさほど飛べない型と形態が分かれたり。
上に挙げたのは全て昆虫ですが、他の節足動物にも飛ぶヤツが居ます。
かなり前、海沿いの高層住宅に居たとき、ベランダの手すりの上を這っている蜘蛛がなんとなく目に留まりました。そいつは手すりの端までくるとクルリと向きを変えて、尻を外に向け、上に突き出し、シュルシュルと糸を吐いて、ある程度糸を上空に伸ばしたあと、パッと足を離して、飛んで行きました。国語の教科書で、空から大量の蜘蛛の糸が降って来て、蜘蛛が空を飛ぶんだという話が有り、ヤツらは飛ぶんだと知識としては知っていたものの、眼前で淀みなく一連の行動を行い、あたりまえのように空へと離昇して行く姿に目を丸くしてました。〝飛ぶ〟という行為を何十回となくしてきたようなスムーズな動きと、ある程度糸が伸びて浮力が付くまでツルっとしたステンレスの手すりをつかみ(?)、パッと離す様子をよく憶えてます。
このような蜘蛛が糸を吐いて飛行する事をバルーニングというらしく、調べてみると、単に糸を風に乗せてその力だけで飛んでいるのでなく、空中電場という極くわずかな電界を利用し複数本同時に吐いて糸を静電気反発で扇状に展開して、気流や電場の力を受けとめやすくして飛び立ちます。前述の教科書の話のようにうじゃうじゃと大量の蜘蛛が一斉に飛び立ったり、あるいは上昇気流や季節風などの強い風に乗って数百キロ以上飛ぶ事もあるようです。(ダーウィンのビーグル号が陸から遥かに離れた海上にいるとき蜘蛛が飛んできた逸話など)
ともかく、そのときベランダから飛びたった蜘蛛は、折からの陸風に乗って海の方へ飛んで行きましたが、無事数十キロ彼方の大きな島まで辿り着いたのか、海面に落ちて、魚のエサになったのか、どうなのでしょう。