トーメーコーポレーションという眼球検査機器などを製造してるメーカーさんのWeb広報誌に「眼光鋭く」つうコラムがあり、ムズカシイのですが、面白いのです。
以下、引用
眼光鋭く
収差について
幾何光学では、一つの物点から出た光線は反射あるいは屈折により理想的には再び1点に集まる。しかし実際の光学系における結像では、光線は光軸に近い領域に限られるわけではなく、その光軸との傾角も大きいため、像点は理想的な像点から離れる。このような理想的な結像からのズレを収差aberrationという。大別して、光学系の分散により生じる色収差chromatic aberrationと、単色光を用いても生じる単色収差monochromatic aberration(光線収差ともいう)がある。
光学系の結像では、光軸の近傍の非常に小さな範囲を限定して、光線の光軸との傾角も非常に小さい場合、ほぼ理想的な結像が出来る。この領域を近軸領域paraxial regionあるいはガウス領域Gaussian region, Gaussian Opticsといい、このような光線を近軸光線paraxial raysと呼んでいる。ところで、θの関数sinθは、ベキ級数展開により
sinθ=θ-(θ3/3!)+(θ5/5!)-(θ7/7!)+・・・・・
奇数次のベキ級数で表される。|θ|(θの絶対値)が極めて小さい範囲では、sinθ=θと近似でき、近軸領域と考えることが出来る。
右辺の第2項まで取り、第3項以降を無視できる領域をザイデル領域というLudwig von Seidel [1821-1896])。このときの収差をザイデル収差Seidel aberrationと呼び、球面収差spherical aberration、コマ収差coma, comatic aberration、非点収差astigmatism、像面湾曲field curvature、歪曲収差distortionの5つに分類される。
絞り(入射瞳entrance pupil)の大きさ(あるいはレンズの大きさそのもの)も収差にとって重要である。入射瞳の半径をφ、入射瞳中心に入る光線の光軸とのなす傾角(半画角ともいう)をωとし、これらとザイデル収差の関係を考えよう。
球面収差は、入射瞳の径が大きくなるほど増加することは明らかであるが、理論解析から入射瞳の半径φの3乗に比例して大きくなるが傾角ωには無関係である。球面収差には横収差transverse s.a.と縦収差lateral s.a.がある。縦(あるいは軸上)球面収差はφの2乗に比例して大きくなる。球面収差は入射瞳の半径φだけに関係し、軸外(ω≠0)の物体に対しても軸上と同様に存在する。
コマ収差はφの2乗に比例し、傾角ωの1乗にも比例して大きくなる。コマ収差は軸上(ω=0)には存在しないが、コマ収差が補正されていない場合は、物点が軸上から僅かに軸外に移動すると直ちにコマ収差が現れ結像特性を低下させる。コマ収差が除かれているのは光軸上の1点のみである。非点収差と像面湾曲は、φの1乗、ωの2乗に比例して増加する。歪曲収差はφに無関係であるが、ωの3乗に比例して大きくなる。軸上では現れず、軸外の物点はωが大きくなるほど歪曲収差が増加する。糸巻型歪曲と樽型歪曲がある。
これらの定性的な関係を図1と図2に模式的に示す。
眼球では網膜面が球面状に湾曲していること、周辺網膜で顕著となる像の歪曲やコマ収差は中心外(周辺)視力が低いことでさほど大きな影響を及ぼさない。網膜の視細胞(主に錐体細胞)の入射効率から光向感度が生じるStiles-Crawford 効果も収差(特に球面収差)の影響を軽減している。つまり瞳孔の中心から入射する光線の感度は周辺の瞳孔から入射する光線よりも高く、中心視力への影響を少なくしている。
眼の収差として重要なものは、中心視力の観点からは、球面収差と非点収差および色収差である。我々の眼はカメラの様な共軸光学系ではなく、角膜と水晶体が傾斜・偏心している非共軸光学系であるため、その効果が大きければ、中心窩でもコマ収差の影響は無視できなくなる。この傾斜や偏心(ε)による収差への影響は、球面収差には無関係であるが、偏心コマ収差、偏心非点収差、偏心像面湾曲と偏心歪曲収差にはεの1乗で影響する。このことは、眼内レンズ移植手術における重要な問題である。非球面眼内レンズの普及が進んでいるが、レンズの位置異常を少なくすることも収差上きわめて大切である。
北里大学医療衛生学部教授 魚里 博
(眼光大魔人)
ここまで引用
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