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斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

地球環境と技術その5

2015年12月16日 18時04分03秒 | 講義記録
本日の講義、160人の学生が朝の1限から集まり、ほとんど寝る学生がおらず、かなりの熱気をもって聴講する姿に、たいへんうれしく感じました。

朝いちばんの奈良東大寺盧舎那仏像について。建立開始は745年でした。本体鋳造は747年、開眼供養は752年5月26日です。金メッキは752年4月2日に開始となっていました。

金アマルガム法による水銀中毒については、こちらに書かれています。

また、日本の金メッキの発祥は福井県だと主張するページがこちらにあります。盧舎那仏の150年くらい前にすでに金メッキが施されていたとしています。これはこれで、なかなか面白い読み物です。ぜひ読んでみてください。

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地球環境と技術その4

2015年11月27日 07時07分27秒 | 講義記録
4)バルブリフター
いきなりバルブリフターでは、ほとんどの学生はだれるが、ここまでの下ごしらえが完璧だったので、多くの学生がうなずきながら聞いている。バルブリフターについては、こちらのページを参照されたい。
これらのページの読み方も教えた。自動車の部品の説明をするのに、低燃費を前面に出してはダメだ。信頼性つまり人の命を重視していることをまずアピールしなければならない。だから、バルブリフターの説明もまず信頼性から。「0.7GPaもの高面圧に対応可能なDLC被膜の耐剥離技術」そして「DLCバルブリフター単独で燃費約1%の向上、同時採用のDLC対応油との組合せで燃費約2%の向上効果」とくる。たった1%でも全世界のクルマの燃費が1%向上したら、燃料は1年で3日分節約できるのだから、地球規模でみればすごい話だ。その逆も真なりで、NOxを10%でも余計に吐きまくれば、あっという間に空気は汚れる。

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地球環境と技術その3

2015年11月27日 00時02分23秒 | 講義記録
3)クルマのエンジンの説明
学生諸君へ
どこかで習ってきたと思うけれども、細かな部品の名前まで覚えていないだろうから、ここでおさらい。エンジンそのものが頭に描けると、最初のメモをみて、部品ごとにピンとくるのだが、そうでないと調べることから始めないとならない。これが仕事の速さに結びつく。
エンジン全体の構造 http://www.bikeillust.gin-hp.com/bikeillust/2sutoenjinnosikumi.html
シリンダー回りの構造
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0801/30/news143.html ピストンヘッド、ピストンリング溝、ピストンピン、ピストンスカート

ここまでみて、部品同志が常に摩擦するところはどこか、見つけてみよう?部品の摩擦が小さくなれば燃費向上につながるし、摩耗が抑えられれば信頼性向上につながる。DLCコーティングがこのような問題を解決する。

学生ならびにその他の方々へ
多くの大学では、学生の自動車通学を制限していて、学生がクルマに触れる機会が少ない。長岡技術科学大学の場合、よほど大学に近いところから通っていなければクルマの通学が可能だ。そのため、たくさんの学生がクルマで通学している。こういう授業をやってわかりやすく説明すると、すぐに自分のクルマに直結するので、学生のモチベーションはどんどんあがる。学生が200人もいればだれてしまい、講義の最初の10分はぼーっとしていた学生あるいは内職のやる気最高潮の学生が多かったのだが、10分を経過したあたりから、そういった学生たちが斎藤ワールドに引き込まれ始めた。

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地球環境と技術その2

2015年11月26日 00時59分27秒 | 講義記録
学生諸君ならびにそのほかの方々へ

全学科から200人が受講しているので、直接関係ない学科もあり、こういった自動車部品の話をしてもピンとこないだろうということで、講義中に挙手でいくつかのキーワードについて聞いたところ、次のような結果になった。

ショックアブソーバを知っている YES 2%
バルブリフターを知っている   YES 0.5%
電磁クラッチを知っている    YES 0.5%
ピストンリングを知っている   YES 10%

中型以上のバイクに乗っていればショックアブソーバくらいは知っているはずだが、そもそも3ない運動の影響が多大でバイクに無縁の学生が多く、ショックアブソーバは全滅に近かった。ピストンリングくらいは知っているだろうと思いきや、全体の10%。クルマに乗っている学生はそれなりにいると思うが、やはり、こんなもん。技術者を養成する高専―大学ラインにいる学生が多くても、これが現実。

そもそも、今のクルマにクラッチがないから、電磁クラッチといっても学生はピンとこない。だから、電磁クラッチに最先端のDLC膜が使われていると話しをしてもその価値はわからない。こういうすごい発明をしたというT社のすごさもわからないし、技術でT社にあこがれるという学生は、少なくとも学部3年生の時点では限られる。

だからこそ、大学の教養科目でこういう講義をするという意味がある。実物は見せられないけれども、文章と写真と、とにかく観点を教えてあげる。たとえば、同じDLC膜なのに、一方では低摩擦係数、他方では高摩擦係数。低摩擦のDLC開発の歴史において、高摩擦DLCが得られたとしても、それをゴミとしてとらえず、それを使って新たな用途開発をするという感性をぜひもってほしい。

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地球環境と技術その1

2015年11月25日 22時58分11秒 | 講義記録
受講者諸君へ

11月25日に地球環境と技術についての講義を行いました。
講義の時に使用した資料をそのままインターネットで公開できないため、次のような形で補足説明を行います。

1)本日のタイトル 摩擦との戦い―ダイヤモンド様炭素膜―

2)就職して、ある日ふと机の上をみたら、次のようなタイトルのメモが載っていた。(あるいは電子メール回覧で回ってきた)技術者としてのあなたは、どのような行動を起こすべきか。
(1)何もしない→給料をもらって働いているのだから、こういう選択肢はあり得ない
(2)読んでみる→普通
(3)観点をもって読んでみる→観点は、これまでの知識がないと作ることができない。つまり、文章を読むときに、その文章のどこに重みがあるのか(価値があるのか)が判定できないといけない。それは大学時代からどんどん積み重ねてほしい。

観点を持つだけでは、まだ足りない。文章の中の技術用語について、読みながら調べるか、頭の中の知識を使って読み進んでいくか、同じ仕事をするにしても、使う時間が違う。少なくとも後者では、仕事が速くなる。

自動車部品へのDLCコーティングの応用展開
自動車部品では、信頼性、量産性、低コストが重視されている。DLCコーティングはこのような要求に応えることのできる技術に育ってきたため、バルブリフター、電磁クラッチ、ピストンリング、燃料噴射ポンプ、ショックアブソーバ、シャフトなどで実用化されている。
バルブリフター:水素フリーDLCコーティングが応用されている。水素フリーDLCは部品同志の接触する界面において油潤滑下で低い摩擦係数を示す。そのため、エンジン部品として過酷な潤滑環境下で動作するバルブリフター表面にコーティングされ、部品の摩擦・摩耗を抑制している。
電磁クラッチ: Si含有DLCが応用されている。Si含有DLCはある種類の油で高い摩擦係数を示す。特に、速度に対する摩擦の正相関特性を利用するばかりでなく、DLCそのものの耐摩耗特性を利用することで、動力のオン・オフを繰り返しても損傷しにくいクラッチを開発することができた。

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