斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

固体酸化物形燃料電池(SOFC)

2016年02月06日 10時55分37秒 | 斎藤秀俊の着眼
燃料電池は電解質に使用する素材によっていくつかの種類にわかれます。
昨日紹介した固体高分子形燃料電池(PEFC)にはプラチナを使用しますが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)ではプラチナを使いません。

SOFCは高温で作動するため、触媒としてのプラチナを使う必要がないし、高い発電効率を得ることができます。燃料電池の心臓部となる電解質に安定化酸化ジルコニウム(安定化ジルコニア)を使います。

安定化ジルコニアとは正式にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)といいます。ジルコニアを母体として酸化イットリウムを添加して、室温でのジルコニアの結晶構造を立方晶に安定化させたものです。

YSZは高温領域で相転移を起こさないため、高温型の燃料電池であるSOFCでつかわれて、電解質として高温でのイオン交換を実現します。

私の研究室の持ち味は、こういった技術を実現するセラミックスコーティングを高速、緻密で実施できる点であります。

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日銀のネガティブインタレストレートの導入

2016年02月05日 23時23分45秒 | 斎藤秀俊の着眼
日本では「マイナス金利」といわれています。グローバル化とか、英語教育が重要などといっている割には、こんなへんてこりんな英語もどきのカタカナを使う文化には霹靂します。英語では、
Bank of Japan Introduces Negative Interest Rates
といいます。ちなみにratesとなり複数形。

日本ではデフレ懸念が強まっている中、なんとか物価上昇2%を実現すべく動いているわけですが、このネガティブインタレストレート、ある現象を生み出しつつあります。ネガティブインタレストレート導入後に円高に進んだり、株価が下落したりしている足元で、金(ゴールド)とかプラチナの貴金属価格が上昇するとかささやかれたりしています。

さて、ここで技術開発との関連の話にもっていきます。
原油価格が安どまり(1バレル20ドルまで下落する?)の中で、プラチナ価格が上昇していくと燃料電池車の開発には不利に動くと予想できます。

現在実用化が進んでいる燃料電池車に搭載されているFCスタックには固体高分子形燃料電池(PEFC)が採用されています。これにはプラチナが1台あたり100g程度使われています。今、プラチナ価格が1gあたり4000円前後ですから、1台あたり40万円。プラチナ価格の上昇がどれくらいのインパクトを与えるか、よくわかります。

逆に原油価格が安どまりのまま、このままさらに円高に進めばガソリン価格はさらに値下がりし、ガソリン車からの脱却が容易ではなくなります。本来は、Negative Interest Ratesにより円安に進むはずだったのですが。もちろん、このタイミングでNegative Interest Ratesを導入していなかったら、ドル暴落(円の暴騰)の危機さえあった(まだある)わけで、いろいろと難しい。

Negative Interest Ratesは、技術開発の方向性すら揺らぎかねないパワーをもっています。一度導入すれば、あとは50歩100歩。マイナス1%にしようか、2%にしようか、心理的なバリアは崩れたことになります。



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兵器開発研究について

2016年02月04日 10時07分12秒 | 斎藤秀俊の着眼
本件については、過去にも本ブログで紹介しました。
私の基本スタンスは、兵器開発に大学研究者が積極的に関与することについて、私以外の研究者の行動や考えにとやかくいうものではないということ。

ペンシルバニア州立大学に勤務していた頃、大量破壊兵器、厳しい言い方をすれば殺戮兵器の開発プロジェクトに誘われて断った経験がありますが、それは次の期間のポスドクの給料が打ち切られることを意味していました。

日本の厳しい研究費云々というスタンスで語るような、甘い考え方、適当な考え方、しょうもないという妥協程度で考えるような事柄ではありません。研究は哲学でもあるのです。

兵器開発と言っても、大量殺戮兵器から、後方支援、侵略やテロや自然災害から市民の生命を守る開発研究があります。こういったジャンルをよくわきまえて、相当な目利きを持って従事するかどうかを決断すべきです。要するに研究を行う研究者には人生経験が必要なのです。米国の大学等で兵器開発の現状と考え方をしっかり勉強したような方が、しっかりとした哲学のもとで取り組んでほしい。

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