一生懸命描いたものでも、一瞬にして紙くずになってしまう事がある。
作家が書きかけの原稿を「違う」と言ってクシャクシャに丸めて捨てるというシーンをドラマで観たことがあるでしょ。
あんな感じね。
アニメの仕事では演出家がその役目です。
僕がどんなに頑張って描いた作画も、演出意図から外れたら捨てられてしまう。
しかもオールラッシュの時にそれが分かった日にゃあ。
頭に血が上って現像所の出口のガラスの扉にぶつかるわ、一人で駅に向かって方角を間違えて返ってくるわでね。
結局は現像所からスタッフと一緒にタクシーに乗って帰りましたけど。
頭から血が下がれば自分の仕事が紙くずになった理由も分かりますよ。
僕はヘタクソなのに目立ちたがりで、余計なことをやってしまうんです。
分かっちゃいるけどなかなか治らないね。
演出意図より自分の思い込みだからな。
思い込んだら試練の道を♪
ゆくが男の、ど根性♪
子供の頃にトイレで踏ん張りながら歌いました。
やっぱり子供の頃に頭に刷り込まれた事というのは大きいね。
自分の仕事が紙くずになった時、「なんでオレの根性が通じねえんだ?」と思っちゃうんだ。
そういう時はどんなに偉そうな事を言ってもダメよ。
間違いは間違い。
紙くずになって良かったんだと思い直して、次の仕事で失敗を根性で取り戻す。
『表現者クライテリオン』も次があるぞ。