アニメーターになって4年目ぐらいの頃かな。
背景美術の友人が、先輩たちの仕事をみながらこう言うんです。
「この余白がいいんだよね」「描かないで見せるのが上手いんだよな」
これは省略するための技法なんですが、誰も彼もが真似できる事でもない。
しかし、これを知った時は「これだ!」と思いましたよ。
だって少ない手数でカッコよく見せられるわけだからね。
それからは趣味で絵を描くときは、余白ばっかりの絵になりましたが、仕事となるとそんな都合がいい注文なんてありません。
「びっちり描いてください」という仕事しか来ない。
じゃあびっちり描けるかというと、それは描いてみないと分からない事ばかりなんですよ。
描かないと描けなくなるしね。
勉強しなくなっちゃう。
いや、余白が上手くてヒットしちゃった絵描きは、それはそれでいいですよ。
尊敬します。
そういう人は横に置いてね。
僕は全く余白とは関係ない絵描きになってしまった。
余白を埋める絵描きです。
そしてそれによりスタッフからは信頼や安心を得ていると感じています。
話しは飛びます。
昨日の議論では、日本の憲法についての話がありました。
その特徴が、「抽象的」で「曖昧」で「余白が多い」ということでした。
若い頃なら「シンプルでいいじゃん」と言ってしまったかもしれないところですが、もう言えない。
『戦争を知らない子供たち』のように、知らないだけのこと事を自慢できるような歳でもない。
今はただ、恥ずかしくて恥ずかしくて。
でも、教えてもらえて、運が良かったよ。