「週のはじめに考える 国防は節度踏み越えるな」
社説 7月7日 東京新聞Webより
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日本防衛の指針「防衛計画の大綱」が十二月改定されます。
敵基地攻撃能力や海兵隊機能の保有が浮上、改憲手続きなしで
自衛隊は変わるのでしょうか。
現在の大綱は二〇一〇年十二月民主党政権下で改定されました。
昨年十二月、自民党政権が復活すると安倍晋三首相は早々に大綱見直しを指示します。
安全保障環境が劇的に変化したわけではありません。
防衛白書は中国、北朝鮮を含め、「不透明・不確実な要素」と同じ書き方を
しています。
大綱見直しは「安倍カラー」を打ち出すことが狙いと考えられます。
◆敵基地攻撃と海兵隊機能
これまでは政府の有識者懇談会が出す報告書が大綱に反映されてきましたが、
今回、初めて懇談会が設けられませんでした。
意見を聞く必要はないというのです。
その一方で自民党はこれまで通り、大綱への提言をまとめ、政府に提出しました。
有識者懇談会がないのですから、たたき台はこの提言だけです。
「憲法改正と『国防軍』の設置」や集団的自衛権行使を容認する
「国家安全保障基本法の制定」など「国のかたち」を根底から変える提言が並びます。
憲法や法律のもとでつくる大綱に反映できるはずがありません。
しかし、これがたたき台なのです。
防衛省は所掌を超える項目は棚上げして、国会で取り上げられたり、
防衛省の考えと重なったりする部分を新大綱に盛り込もうとしています。
自民党提言の目玉でもある敵基地攻撃能力と海兵隊機能の保有が有力候補です。
敵基地攻撃能力は、敵の弾道ミサイル基地を攻撃できる巡航ミサイルや
弾道ミサイルなどを保有することで、
北朝鮮のミサイル基地攻撃を念頭に置いています。
海兵隊は艦艇や航空機を使って強襲上陸するので「殴り込み部隊」とも呼ばれます。
◆軍事力強化でいいのか
ともに先制攻撃につながり、専守防衛の自衛隊はこれらの機能を持たずに来ました。
万一の場合、どうなるのでしょうか。弾道ミサイルが撃ち込まれたり、
離島が侵略されたりする事態は日本有事と考えられます。
自衛隊は日本防衛に努め、敵基地攻撃や離島奪還は米軍の打撃力に頼ることに
なっていました。
安倍首相は、この役割分担を見直したいようです。
「日本を攻撃しようとするミサイルに対し、米軍に攻撃してくださいよと
頼む状況でいいのか。
自民党でずっと議論してきた」(五月八日参院予算委)と敵基地攻撃能力の保有に
言及し、「島しょ防衛で海兵隊機能をわが国が備える必要性はやはり
議論しなければならない」
(同)との考えを示しています。
敵基地攻撃について、政府見解は「相手がミサイル攻撃に着手した後」
ならば憲法上許されるとしています。
先制攻撃は違憲との立場ですが、自民党は「改憲して国防軍をつくる」と
主張しています。
そうした中で敵基地攻撃能力を持てば、周辺諸国は先制攻撃を疑い、
日本への警戒を強めるのではないでしょうか。
財政上の問題も無視できません。
地形を読み、情報をやりとりしながら飛ぶ巡航ミサイルには、
偵察衛星と通信衛星が欠かせず
、巨額の防衛費が必要になります。
コストを節約するため既存のロケット技術を組み合わせて
弾道ミサイルを持つとします。
弾道ミサイル保有国の多くは核弾頭を搭載しており、
日本は核弾頭に使える大量のプルトニウムを保有しています。
意図が疑われ、地域の不安定要因になりかねません。
海兵隊機能が必要な理由について、防衛省関係者は
「尖閣諸島が武力侵攻される事態を想定している」といいます。
中国は領有権を主張して領海侵入を繰り返しています。
安倍政権は「領有権問題は存在しない」というだけで、
日中の緊張が緩む気配はありません。
だからといって、軍事力強化でよいのでしょうか。
問題解決に政治や外交の力が不可欠なのはいうまでもありません。
海兵隊機能には陸海空の三自衛隊による統合運用が欠かせないことから
「大規模震災に役立つ」と主張する防衛省幹部もいます。
それなら純粋に災害救援のための統合運用を考えればよいのです。
◆安全保障の原点忘れるな
勇ましい方向にかじを切れば、日中関係が改善したり、
北朝鮮が核開発をやめたりするでしょうか。
むしろ北東アジアの安全保障環境を悪化させ、米国との関係まで
ぎくしゃくすることになりはしないか。
「日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような
軍事大国にならないという基本理念に従い、節度ある防衛力整備に努めています」。
これは外務省のホームページに書かれた日本の安全保障政策です。
戦後日本の原点を忘れてはなりません。
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社説 7月7日 東京新聞Webより
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日本防衛の指針「防衛計画の大綱」が十二月改定されます。
敵基地攻撃能力や海兵隊機能の保有が浮上、改憲手続きなしで
自衛隊は変わるのでしょうか。
現在の大綱は二〇一〇年十二月民主党政権下で改定されました。
昨年十二月、自民党政権が復活すると安倍晋三首相は早々に大綱見直しを指示します。
安全保障環境が劇的に変化したわけではありません。
防衛白書は中国、北朝鮮を含め、「不透明・不確実な要素」と同じ書き方を
しています。
大綱見直しは「安倍カラー」を打ち出すことが狙いと考えられます。
◆敵基地攻撃と海兵隊機能
これまでは政府の有識者懇談会が出す報告書が大綱に反映されてきましたが、
今回、初めて懇談会が設けられませんでした。
意見を聞く必要はないというのです。
その一方で自民党はこれまで通り、大綱への提言をまとめ、政府に提出しました。
有識者懇談会がないのですから、たたき台はこの提言だけです。
「憲法改正と『国防軍』の設置」や集団的自衛権行使を容認する
「国家安全保障基本法の制定」など「国のかたち」を根底から変える提言が並びます。
憲法や法律のもとでつくる大綱に反映できるはずがありません。
しかし、これがたたき台なのです。
防衛省は所掌を超える項目は棚上げして、国会で取り上げられたり、
防衛省の考えと重なったりする部分を新大綱に盛り込もうとしています。
自民党提言の目玉でもある敵基地攻撃能力と海兵隊機能の保有が有力候補です。
敵基地攻撃能力は、敵の弾道ミサイル基地を攻撃できる巡航ミサイルや
弾道ミサイルなどを保有することで、
北朝鮮のミサイル基地攻撃を念頭に置いています。
海兵隊は艦艇や航空機を使って強襲上陸するので「殴り込み部隊」とも呼ばれます。
◆軍事力強化でいいのか
ともに先制攻撃につながり、専守防衛の自衛隊はこれらの機能を持たずに来ました。
万一の場合、どうなるのでしょうか。弾道ミサイルが撃ち込まれたり、
離島が侵略されたりする事態は日本有事と考えられます。
自衛隊は日本防衛に努め、敵基地攻撃や離島奪還は米軍の打撃力に頼ることに
なっていました。
安倍首相は、この役割分担を見直したいようです。
「日本を攻撃しようとするミサイルに対し、米軍に攻撃してくださいよと
頼む状況でいいのか。
自民党でずっと議論してきた」(五月八日参院予算委)と敵基地攻撃能力の保有に
言及し、「島しょ防衛で海兵隊機能をわが国が備える必要性はやはり
議論しなければならない」
(同)との考えを示しています。
敵基地攻撃について、政府見解は「相手がミサイル攻撃に着手した後」
ならば憲法上許されるとしています。
先制攻撃は違憲との立場ですが、自民党は「改憲して国防軍をつくる」と
主張しています。
そうした中で敵基地攻撃能力を持てば、周辺諸国は先制攻撃を疑い、
日本への警戒を強めるのではないでしょうか。
財政上の問題も無視できません。
地形を読み、情報をやりとりしながら飛ぶ巡航ミサイルには、
偵察衛星と通信衛星が欠かせず
、巨額の防衛費が必要になります。
コストを節約するため既存のロケット技術を組み合わせて
弾道ミサイルを持つとします。
弾道ミサイル保有国の多くは核弾頭を搭載しており、
日本は核弾頭に使える大量のプルトニウムを保有しています。
意図が疑われ、地域の不安定要因になりかねません。
海兵隊機能が必要な理由について、防衛省関係者は
「尖閣諸島が武力侵攻される事態を想定している」といいます。
中国は領有権を主張して領海侵入を繰り返しています。
安倍政権は「領有権問題は存在しない」というだけで、
日中の緊張が緩む気配はありません。
だからといって、軍事力強化でよいのでしょうか。
問題解決に政治や外交の力が不可欠なのはいうまでもありません。
海兵隊機能には陸海空の三自衛隊による統合運用が欠かせないことから
「大規模震災に役立つ」と主張する防衛省幹部もいます。
それなら純粋に災害救援のための統合運用を考えればよいのです。
◆安全保障の原点忘れるな
勇ましい方向にかじを切れば、日中関係が改善したり、
北朝鮮が核開発をやめたりするでしょうか。
むしろ北東アジアの安全保障環境を悪化させ、米国との関係まで
ぎくしゃくすることになりはしないか。
「日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような
軍事大国にならないという基本理念に従い、節度ある防衛力整備に努めています」。
これは外務省のホームページに書かれた日本の安全保障政策です。
戦後日本の原点を忘れてはなりません。
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米国が強くて日本を守ってただけ。
これからはそれだけでは無理。