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気ままに生活してるシニアの残日録

東京・春・音楽祭「ルドルフ・ブッフビンダー、ベートーヴェンピアノ・ソナタ全曲演奏会Ⅴ」

2024年03月24日 | クラシック音楽

東京文化会館小ホールに東京・春・音楽祭の「ルドルフ・ブッフビンダー、ベートーヴェンピアノ・ソナタ全曲演奏会Ⅴ」を聴きに行ってきた。祭日であったこともあるだろうが、満席に見えた。7,500円。15時開演、17時過ぎ終演。今日は正面左、前から4列目だった。

曲目

ピアノ・ソナタ 第2番 イ長調 op.2-2
ピアノ・ソナタ 第9番 ホ長調 op.14-1
ピアノ・ソナタ 第15番 ニ長調 op.28《田園》
ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 op.90
ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57《熱情》

全部で7公演に分けて演奏されるが、各公演日には最終日を除いて、さまざまな時期の作品がミックスされている、どの日にも有名曲が少なくとも一曲は入っている、とブッフビンダーは説明している。なるほどそういうものか。

ルドルフ・ブッフビンダーは1946年チェコ生まれの78才のピアニスト、5歳でウィーン国立音楽大学に入学して8歳でマスタークラスを履修し、同大学の最年少記録を打ち立てる。9歳で最初の公開演奏会を開いたというすごい人だ、いままで録音数は200曲以上にのぼるという。レパートリーは幅広く、古典派やロマン派のほかに、20世紀音楽にまでわたっているが、とりわけベートーヴェンの専門家として名高い、とウィキには書いてあるので今回の東京・春・音楽祭のベートーヴェンピアノ・ソナタ全曲演奏は彼の得意中の得意の演目ということだろう。

ブッフビンダーというピアニストは知らなかったが東京・春・音楽祭のホームページの説明を読むと、これまでに全曲演奏会を60回以上も行ってきて、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を3度も録音しているそうだ。

そして、「私はウィーンでブルーノ・ザイドルホーファーに師事しました。彼の弟子には私のほかにグルダやアルゲリッチもいました。ザイドルホーファーは教師然とした人物ではなく、ひとりひとりの個性を大切にして、自分自身を保ち続けられるよう助けてくれたのです。私は伝統という言葉があまり好きではありません。ピアニストにロシア楽派やドイツ楽派のようなものはないと思っています。同じ先生についていてもギレリスとリヒテルはまったく違うタイプですよね。同じドイツ人でもケンプとバックハウスもまるで違う。どの演奏家にもそれぞれの個性があり、ありがたいことに、まったく違うのです。私には流派というものはありません」と述べているが、この考えは先日読んだ吉田秀和の「音楽のよろこび」(こちら参照)で主張されていたことと同じである。

さて、今日の演目であるが、自分のライブラリーには「田園」と「熱情」しかなく、他の曲は聞いたことがあるかもしれないが、頻繁に聴く曲ではない。演奏される機会もあまり多い曲ではないのかもしれない。そして私の中では「熱情」が一番の注目曲だ。この曲は本当にすごい曲だ、ベートーヴェンの狂気が出ている曲だと思う。それは第1楽章と第3楽章だが、一方で第2楽章のアンダンテは実に静かで美しいメロディの楽章で狂気と正反対の趣があり、その取り合わせの意図はなんだろうかと考えさせる。

その辺をChatGPTで手抜き調査をすると

  • この作品の完成は1810年でこの時期、彼は難聴が進んで個人的・社会的な生活に大きな影響を与え、恋愛でも不運な経験を重ねており、これらの出来事は彼の内面的な葛藤や苦悩を深めた
  • このソナタの繊細な美しさは、ベートーヴェンの芸術的な成熟とその内面的な豊かさから生まれた
  • 葛藤と繊細な美しさが相反するように感じられるかもしれないが、ベートーヴェンの作品においてはしばしば両方が共存している

私はこの曲を当初あまり好きではなかった、宇野功芳氏の推薦するホロビッツやバックハウスのCDで聞き流していると、特に感動するようなこともなかったが、ある時、偶然、YouTubeでこの第3楽章を弾いている動画(Valentina Lisitsa、ヴァレンティーナ・リシッツァ、ロシア、50才)を見て、そのピアノの難しそうな技巧にびっくりして、こんなに難しい、すごい、感動的な曲だったのかと思い知ったのだ。それ以来、すっかりこの曲が好きになった。

なお、このリシッツァはウクライナのキエフ生まれで、19才で渡米しピアニストとして活動していたが、2015年頃から反ウクライナ・親ロシア的な発言をするようになり、西側諸国での公演のキャンセルが続いたため、現在はロシアで活動しているとウィキに出ていた。

以上のことから今日のブッフビンダーの「熱情」には大いに注目して聴いた。その結果をいえば、ブッフビンダーの演奏はさすがというすごいものだった。彼はもう78才だが、ピアノのタッチは力強く、気力の集中もすごいものだった。ただ、第2楽章ではピアノのタッチがちょっと強すぎるのではないかと感じ、第3楽章の最後の部分でほんの少しだけ弾き遅れがあったように聞えた、素人感想だけど。ただ、私としては全体としては非常に満足しました。


(終演後、小ホールエントランスから大ホールホワイエを見る、[東京春祭] 東京バレエ団 上野水香オン・ステージがあるようだ)

そして、さらに驚いたのは、カーテンコールに答えてアンコールを弾いた時だった、「あっ」と思わず心の中で叫び声が出た、「ピアノ・ソナタ月光第3楽章だ」、これも私が大好きな曲だ、そしてこの第3楽章も「熱情」に負けず劣らずの激しい楽章なのだ。こりゃ驚いた、こんなにすごい、激しい曲を連続して演奏するなんて、しかもアンコールで、これこそすごい熱情だ。恐れいりやした。今日は完全に打ちのめされました。


向島「長命寺さくら餅」を食べる

2024年03月24日 | グルメ

3月も下旬になってきた、そろそろ桜の咲く季節だ、この季節になれば思い浮かぶのが「桜餅」だ。いつもはスーパーやコンビニで売っている桜餅を買うか、たまたまデパートなどに出かける機会があれば、そこの和菓子屋で買って帰るが、今年は久しぶりに向島の「長命寺のさくら餅」を食べたくなった。

この長命寺さくら餅は、創業300年の歴史を持つ老舗であり、店のホームページによれば、「創業者山本新六が享保二年(1717年)に土手の桜の葉を樽の中に塩漬けにして試みに桜もちというものを考案し、向島の名跡・長命寺の門前にて売り始めました。その頃より桜の名所でありました隅田堤は花見時には多くの人々が集い桜もちが大いに喜ばれました。これが江戸に於ける桜もちの始まりでございます」とある。

創業以来変わらない素材と製法で無添加で製造していると言う。素材は、

「もち」は小麦粉製の薄皮
「小豆」は北海道産
「葉」は西伊豆・松崎産オオシマザクラ

店の場所はちょっと不便なところにあり、東武線の押上か曳舟から歩いて15分くらいかかる隅田川沿いの首都高の高架線近くにある。直ぐそばには同じく老舗の「言問団子」がある。

曳舟の駅から歩いてたどり着くと、自家用車やタクシーで来ている人もいて、狭い店内に数人の先客がある。ただ、いつもは店内の席でもお茶と一緒に食べられるのだが、この時期に店内サービスは中止しているとの張り紙がある。店の人に聞いてみると、人手不足で繁忙期の対応ができないことが理由のようだ。

ばら売りもあるが、箱入りは5個入りから販売しているので、一番少ない5個入り1,500円を買った。

さて、帰宅して、夕食と食べたあと、デザートで食べてみた。久しぶりなのでもう味は覚えていないので新鮮な気持で食べてみた。

ここの店では、桜の葉をはずして、お餅に移った桜葉の香りと餡の風味をお楽しみください、桜葉は、お餅の香りづけと乾燥を防ぐためにつけてあります、としている。私もそれに従って桜葉をはずして頂いた。一つの桜餅に桜葉が3枚は使ってあるため餅に香りが充分移っている。

ほのかな香りとしっとりとした舌触り、上品な味である。普通、桜餅はピンク色になっているものが大部分だと思うが、ここの餅は白いのでちょっと戸惑うが、これは先にも書いたとおり無添加なので着色の添加物を使っていないせいだろう。一つ一つがそんなに大きくないので夫婦で5つは充分食べられた。

春の気分になりました。おいしく頂きました。