近くのシネコンで映画「DOGMAN ドッグマン」を観た。2023年、仏、114分、監督‣脚本リュック・ベッソン(仏、64才)、原題Dogman。1,300円。制作はフランスとなっているが、言語は英語の映画だ。
監督のリュック・ベッソンが5歳の時、家族によって檻に入れられた少年の実話に触発され監督・脚本を手がけたバイオレンスアクションと説明されている。
ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、米、34才)がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。警察に拘束された「ドッグマン」と呼ばれるその男は、接見した精神科医の黒人女性エヴリン(ジョニカ・T・ギッブス)と対面する、この黒人精神科医も離婚した暴力夫の影に怯えていることなど話していくと、やがて、彼も自身の壮絶な生い立ちを話し始める。
ダグラスが少年のころ、父親の家庭内暴力に苦しむ、兄も父親の味方でダグラスは巨大な犬小屋に閉じ込められ、抵抗するとついに父親にライフルで撃たれ指1本が吹き飛び、下半身麻痺になってしまう。犬と一緒に檻の中にいたせいで犬と意思疎通ができるようになり、その犬を使って警察を呼び、父と兄は逮捕され、1人で生きていくことになる。
ダグラスが住む街の向こう側には摩天楼が見え、街ではチンピラ集団が住民たちを苦しめている。犬を使って奴らを懲らしめたりしたが、なかなか仕事が見つからない。ある日、幼馴染の女優にバーで偶然再会し、恋心を抱くが実らず。やっとキャバレーのフランス人歌手としてシャンソンを歌う仕事にありつく。やがて、犬を使って犯罪に手を染めるようになるが、それは富豪の金庫から犬たちが宝石を盗み出して貧しい人に配るロビンフッドみたいなことだ。そんなある日、仕事で「死刑執行人」と呼ばれるギャングを怒らせ、追われることになる。そして、最後は犬と一緒に住む屋敷にこのギャングが手下と一緒に乗り込んでくるが・・・
この映画を観た感想を少し述べよう
- この作品ではダグラスと神の関係が強調されているようである。最初の方で、兄が巨大な犬小屋に「In the name of God」と書いた横断幕をつける。「神の名において犬小屋に閉じ込められています」みたいな意味だが、どうもこれは他の人のレビューを見ると、犬小屋の内側からは、金網の柱に遮られる部分があって、しかも文字が裏返っているから「doG man」と見える(映画を観ているときはそこまで分からなかったが)。これは神を裏側から見ると犬になるとの暗喩であり、犬は“神の使者”であるとの意味が込められているらしい、私には1回観ただけではそこまで深読みはできなかった。
- そして、最後の場面で、犬に助けられて犬とともに警察から逃げ出し、外に出ると、そこには教会があり、太陽が燦燦と十字架の上を登ってダグラスに十字架の影が映されて終わる、何かを暗示しているのだろうがよくわからなかった。観た人が解釈してくれということか。
- 多数の犬と一緒に生活するようになると、彼は犬にシェークスピアを読んで聞かせたりする。そうしているうちに彼自身もシェークスピアの戯曲を全部暗記して言えるようになってしまう。ところが彼がキャバレーで求人の面接を受けたとき、何ができるか聞かれシェークスピアならできるというのだが、実際にキャバレーで彼が女装して歌ったのはフランス語のシャンソンだ。ここでなぜシェークスピアがシャンソンになるのかよくわからなかった。なぜ彼がシャンソン歌手の能力があったのか。シェークスピア⇒シャンソン(女装)、この突然の飛躍がよくわからなかった。
- この物語では多くの犬がダグラスと意思疎通し、彼の命令でいろんなことをやる、また、彼を助ける。映画を観ているといかにも言葉が通じているのかと思えるほど賢い犬に見えるが、いったいどのように訓練、調教したのだろうか。どのようにして撮影したのだろうか、その舞台裏が知りたいものだ。
面白い映画だったが1回観ただけではすべて理解するのは無理だった。