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阪田知樹ピアノ・リサイタルを聴きに行く

2024年12月04日 | クラシック音楽

フェスティヴァル・ランタンポレル、シャイニング・シリーズVol.16 阪田知樹ピアノ・リサイタル~ベートーヴェン&マヌリ~を聴きに行った、3,300円、場所は東京文化会館 小ホール、開演19時、終演20時30分

7割か8割がた座席は埋まっていた、例によって舞台に向かって右側は空席が目立った、また、女性客が圧倒的に多かった、阪田人気か

ランタンポレル L’intemporel とは、「時を超えた、非時間的な」という意味を持つフランス語、フェスティヴァル・ランタンポレルは、東京文化会館主催の現代と古典の音楽がクロスオーバーする新しい音楽祭、今年が第1回、11月27日~12月1日にかけて開催された

現代音楽の音楽祭は専門化して一般的聴衆には近寄り難くなっている一方で、古典音楽のそれは限定された名曲を繰り返し演奏しているだけで、2つにはまったく交わる点がないという問題意識があるようだ

今年はベートーヴェン&フィリップ・マヌリ、シューベルト&ヘルムート・ラッヘンマンという組み合わせで、現代と古典の4名の作曲家にフォーカスし、ピアノのリサイタルについては、1人が古典作品でのフォルテピアノと現代作品における現代ピアノを使い分けて演奏する

出演

ピアノ/フォルテピアノ:阪田知樹

阪田知樹は、1993年生れの30才、フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、6つの特別賞、日本人男性初優勝など数々の受賞歴を持つ

曲目

  • フィリップ・マヌリ:第2ソナタ「変奏曲」(2008年)
  • ベートーヴェン:ディアベリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調「ディアベリ変奏曲」 Op.120(1823年)

フィリップ・マヌリ(Philippe Manoury、1952年生れの72才 )は、フランスの現代音楽の作曲家、日本との縁が深く、しばしば来日して講演を行うほか作曲マスタークラスによく招聘されている

マヌリは次のように述べている、

ベートーヴェンの思想で私をとらえて離さないものがいくつかある、先ず第一に、音楽は絶えず進化し、刷新するものだと考えていることだ、他でもないベートーヴェン本人が「大フーガ」のはしがきに 「時には自由に、時には厳密に」と書いている

さて、今日の公演の感想などを少し述べたい

  • この日の舞台には2台のピアノが置かれていた、奥に普通のピアノと手前にフォルテピアノ、めずらしい光景に開演前には多数の人が写真を撮っていた

  • 最初の曲はマヌリ作曲の現代音楽で、かなり抽象的であった、旋律とかメロディはなく、何か特別な音が鳴っているとしか聞こえなかった
  • プログラムノートによれば、近年、現代音楽がコンセプチュアルになりすぎているように感じているとの野平音楽監督の言葉があり、まさにそんな感じがした、しかし、野平氏はマヌリはある意味ではより伝統的と言ってよいとも述べているので他の現代音楽家の曲はもっと抽象的なものかもしれない
  • 阪田知樹のピアノで聴くマヌリの音楽で一番印象に残ったのは、ピアノの大きな音の残響が続いていた時、ぴたっと途切れて次の音に入る演奏手法であった

  • マヌリの第2ソナタ演奏終了後、阪田から呼ばれて客席後方に座っていたマヌリが舞台に上がって大きな拍手を浴びていた

  • プログラムノートによれば、ベートーヴェンのディアベリ変奏曲は、実は正式名称は「変奏曲」ではなく、「変容」という言葉が使われている、これは元の主題に加えていく変奏の程度が、もはや主題の原理が判別不能とするところまで進むことを示唆しいる、とのこと
  • そして、マヌリの変奏曲も実はこのベートーヴェンのディアベリ変奏曲へのオマージュとして書かれたものである
  • ディアベリ変奏曲は長い曲だった、普段あまり聞かない曲なので集中力を保つのが大変だったが、途中の第22変奏でモーツアルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」のレポレロのアリアの意味ありげな引用があった所だけはわかった

  • フェスティヴァル・ランタンポレルの狙いが過去の大作曲家と現代の作曲家の組み合わせにより、時代を超越した普遍性を追求していくことにあると理解したが、今夜の公演を聴いて、それがどう表現されているのかわからなかった

  • おそらく、現代音楽の行き過ぎた抽象性の修正と偉大な過去の作品の現代的な解釈ということではないかと思うが、その点を阪田知樹から説明してもらいたかった

楽しめました