テレビで放送していた歌劇「ルサルカ」(全3幕)を録画して観た。初めて観る演目だ。演奏時間は約3時間
作曲ドボルザーク(1904年5月、62才没、チェコ)
演出・美術・衣装・振付・照明:ステファノ・ポーダ(51,伊)
<出演>
ルサルカ:アニタ・ハルティク(1983、ルーマニア)
王子:ピョートル・ブシェフスキ(1992、ポーランド)
ヴォドニク(水の精、ルサルカの父):アレクセイ・イサエフ(1995、アゼルバイジャン)
イェジババ(魔法使い):クレア・バーネット・ジョーンズ(1990、英)
外国の王女:ペアトリス・ユリア・モンゾン(1963、仏)
合唱:トゥールーズ・キャピトル国立合唱団
管弦楽:トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
指揮:フランク・ベアマン
収録:2022年10月14・16日 トゥールーズ・キャピトル劇場(フランス)
ドボルザークがオペラを作曲していたなんて知らなかった、この作品は1900年、ドボルザークの死の4年前の完成であり晩年の作である。ドボルザークは、アメリカ時代に交響曲「新世界」を残して著名な作曲家となったが、オペラでの成功を望んでいた。しかし、思うように国際的な評価を得られなかったが晩年のルサルカの成功はドボルザークを大変喜ばせた。
初めて鑑賞する演目だが、あらすじは簡単で予習にそんなに時間はかからなかった
第1幕(森の中にある湖)
ルサルカは森の湖に住む水の精。ある日人間の王子に恋をし、魔法使いイェジババに人間の姿に変えてもらうが人間の間はしゃべれないこと、恋人が裏切った時にはその男とともに水底に沈むのが条件。人間の娘になったルサルカを見た王子は彼女と結婚する
第2幕(王子の城)
口をきかないルサルカを不満に思った王子は、外国の王女に心を移してしまう。祝宴の中、居場所をなくしたルサルカが庭へ出ると、水の精によって池の中に連れ込まれ、王子は恐怖のあまり、王女に助けを求めるが、王女は逃げる
第3幕(森の中にある湖)
森の湖へ移されたルサルカに魔法使いは、元に戻すには裏切男の血が必要だと語りナイフを渡すがルサルカは拒否、王子が湖にやってきて自分の罪を聞かされて絶望し、ルサルカを呼び抱擁と口づけを求める。ルサルカは拒むが、王子は「この口づけこそ喜び、私は死ぬ」と答えるとルサルカは王子を抱いて口づけし王子は水底へと沈んでゆく
このオペラの最大の特徴は、演出・美術・衣装・振付・照明を担う万能の才人、ステファノ・ポーダによる舞台だろう、ただ、その意図するところがわからない演出が少なくなかった
- この演出のキーポイントは「水」だ、場面が森の奥の湖であることを舞台で最大限強調するため、実際の水がふんだんに使われている、まるで大浴場を舞台にしたような設営だ、ここまでやるのは初めて観た、歌手たちはみんなずぶ濡れになって演技し歌った、そして湖の中央は深さもあり、時にルサルカや父の水の精は潜って演技する、歌手はさぞかし大変だったろう
- 第1幕では舞台の上から人間の左右の大きな手首のオブジェァが降りてくる、第3幕では開幕時から左右の手首のオブジェァが湖から飛び出ている、そして上からも手首のオブジェが降りてきて最後はまた上に釣り上げられて消えていく、これも何を意味しているのかわからなかった
- 第2幕で王子の使用人たち(森番/狩人、料理人)が舞台いっぱいに積み上げられた使用済みペットボトルのようなものをゴミ収集袋に詰め込み、舞台の外に持ち出す作業を延々としていたが、これが何を意味するのか、わからなかった、第3幕でも使用人たちが水の中にある何かを拾っている場面があるが、これも意味不明だった
- 舞台や衣装の色彩という点からすると第2幕の後半、王子の城でのルサルカとの結婚披露の祝宴の舞台、や衣装が非常にカラフルで目を楽しませてくれた
いろいろ驚きのある演出であるが、内容的には突出した前衛的な置き換えなどはなく、目を楽しませる演出にとどまっていたのはよかったと思う
さて、出演者だが、タイトルロールのアニタ・ハルティクはずぶ濡れになって頑張って演技していたと思う、ルサルカが第1幕で歌うアリア「月に寄せる歌」はどこか哀愁を帯びた音楽で親しまれていると言われているが、自分は初めての鑑賞だったので、まだその良さに気付かなかった。今後、このアリアだけでも繰り返し聞いて親しんでいきたい。
さらに、このルサルカ役は、オペラであるにもかかわらず、途中で言葉を発することができなくなるため、歌唱力だけでなく、歌わない場面での演技力も問われる難しい役だが、その場面は特に違和感がなかった。
また、王子役のピョートル・ブシェフスキも特に第3幕の演技は熱演であり、いい歌手だと思った。
初めて観る演目にしては楽しめたオペラでした
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