2019年のザルツブルク音楽祭で上演されたオッフェンバックの「天国と地獄」の自分で録画してDVDに保存して持っていたことに偶然気づいた。まだ観た記憶がないので観ることにした。
オッフェンバックはオペラのホフマン物語で有名であるが、実はオペレッタを多く作曲した、この「天国と地獄」はその中でも最大のヒット作だ。今回の公演はオッフェンバック生誕200年を記念したもの。「天国と地獄」はギリシャ神話を基にしたグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」をパロディーにしたオペレッタだ。あらすじなどは前に「天国と地獄」を観た時のブログ(こちら)を参照。
今回上演されたこの作品を観て感じたことなどを記してみよう
- バリー・コスキーの演出は面白く、色彩豊かで退屈しない。ハチャメチャな演出などと書かれてもいるけれど、私は良いと思った。オペラは時間も長く退屈になりがちであるので、観客を飽きさせない演出は少しくらい奇抜な、と言われようが良いと思う。
- 一方で、舞台で男女のセックスを意味するエロチック演出が何回かあったのは好きになれない、奇抜な中にも最低限の品位は必要なのではないか、ザルツブルグの観客も呆れて眉を顰めていた雰囲気を感じた
- このオペレッタの演出で変っているなと思ったのはプリュトンの召使いマックス・ホップ(ジョン・ステュクス)だ、冒頭から登場し、全員のセリフ、擬音語も一人で行い、他の登場人物は口パクだったのではないか。こんな演出は初めてだ。
- 主人公の1人、オルフェの妻役のキャスリーン・リーウィックは初めて見た歌手だが、コミカルでコケティッシュな振る舞いでかわいらしい、時にふてぶてしく、浮気している妻の役を面白おかしく演じていた。体格もずんぐりして、役柄の設定にピッタリの演技をしていた、これが彼女の地なのか演技なのかわからないが演技だとしたらたいしたものだ。もちろん彼女の歌唱力も素晴らしかった。
- このオペレッタの面白いところは「世論」という役があることだ、これは面白い、この台本を考えた人(エクトル・クレミュー、リュドヴィク・アレヴィ)はさすがだ。ただ、私は新聞社などが実施する「世論調査」という名の「世論誘導」、「世論操作」は大嫌いだ。誰かそれを茶化す面白いオペレッタを作ってくれないか。
【出演】
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(世論、スウェーデン、67)
ホエル・プリエト(オルフェ)
キャスリーン・リーウェック(ウリディス、オルフェの妻)
マルセル・ビークマン(アリステ/プリュトン、羊飼い/地獄の王)
マックス・ホップ(ジョン・ステュクス、プリュトンの召使い)
マルティン・ヴィンクラー(ジュピテル、神々の王)
フランシス・パパス(ジュノン、ジュピテルの妻)
ナディーネ・ヴァイスマン(キュピドン、恋の神)
レア・ドゥサンドル(ヴェニュス)
ラファウ・パウヌク(マルス)
ヴァシリーサ・ベルザンスカヤ(ディアヌ)
ペーター・レンツ(メルキュール)
指揮:エンリケ・マッツォーラ
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
演出:バリー・コスキー(豪、56)
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