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鈴置高史「韓国消滅」を読む

2025年03月08日 | 読書

鈴置高史著「韓国消滅」(2024/9刊、新潮社新書)を読んでみた、鈴置氏は韓国観察者、1954年生まれ、日本経済新聞社ソウル特派員、香港特派員、経済解説部長などを歴任し2018年に退社、2002年、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞

本書の記載順に従って鈴置氏の所論を紹介したい、そして、最後に私の読後感などを書きたい

はじめに

  • 21世紀に入ってからの韓国は内紛に明け暮くれた末に滅んだ李氏朝鮮を思わせるものがある、出生率が日本を下回ったというのに一向に危機感が高まらない、韓国メディアは日本を笑うばかりで同じ病に罹った自らを省みなかった
  • この本は韓国が混迷期に入ったことを伝えるのが目的

第1章 世界最悪の人口減少

1、日本より急な少子高齢化

  • 韓国の出生率は2021年時点で0.81とOECDでワースト1を記録していた、生産年齢人口比率で日本を下回る
  • 急激に縮む韓国を日本が正しく見据え、適切に対応しているとはとても言いがたい、岸田政権が日本の先端技術の成果を平気で教えるのは「衰退する日本は躍進する韓国と手を組むしかない」との判断がある
  • 出生率の低下は徴兵制の韓国では兵力の減少につながるため、核武装論にも弾みをつけた
  • 「韓国の中国化」も見落とせない、韓国は日本と同比率で外国人を受け入れているが中国人が5割を占める、中国人居住者が増えるのは必至、これを見ても韓国を日米側に引きつけるために譲歩するという岸田政権や外務省の対韓外交は破綻する

2、IFM通貨危機が諸悪の根源

  • 韓国の急激な少子化は「生きづらさ」が原因であるため解決が容易ではない
  • これには「社会の競争圧力」と「経済的な困難さ」が背景にある
  • IFM危機が激しい競争社会を生んだ、IFM危機を機に韓国企業の多くが従業員解雇を躊躇しなくなった、40才定年制になった、非正規雇用の比率も一気に上昇した、OEDC加盟国の自殺率もワースト1である
  • 競争圧力を感じて子供の数を絞り教育投資を集中するようになった
  • 2019年に生産年齢人口がピークになりマンション価格が急騰し、家計債務も急増したが、最近の金利引き上げにより家を手放す人が相次ぎ、破綻予備軍も多い

3、なぜ、危機感に乏しかったのか

  • 21世紀初頭に出生率が落ち始めたのと時を同じくして異様な高揚感に包まれた、「日本に勝った」、「韓国が上だ」、「我々は世界一の民族だ」と喝采し、政権やメディアも「世界に冠たる韓国」を煽った、美しい自画像に酔い、厳しい現実を直視しなかった、1000年以上の鬱屈の歴史ゆえか
  • 少子化にとどまらず民主主義が早くもぐらついている、米中対立が増す中での安易な二股外交にまい進して孤立を招いた自覚がない

第2章 形だけの民主主義を誇る

1、「先進国」の称号ほしさから民主化

  • 民主化は文人が軍人から権力を奪い返した事件であり、理念ではなく党派の争いだ

2、半導体を作る李朝

  • 韓国の大統領は不本意な形で任期を終えるか、退任後に貶められるのが定番だ、これが21世紀に入ってから対象がいっきに広がった、そもそも乏しかった妥協の精神は韓国の政界から完全に消え、保守と左派の生存をかけた争いが日常化した、日本の植民地に転落する原因となった李氏朝鮮と同じ構図である

3、手つかずの「経済の民主化」、革命リスクを培養

  • 韓国の上場企業は殆どがオーナー会社だ、オーナー一族専横の企業風土だ
  • 韓国に左派が多く残るのも悪しき資本主義の象徴である専横なオーナー一族が存在するからだ

4、台湾の民主化は進んだのに・・・

  • 台湾の民主化は自分たちの運命は自分たちで決めたいという思いがある、韓国は庶民の怒りと先進国ブランドが欲しさに民主化した、李氏朝鮮以来、儒教を統治原理にしたことも韓国民主主義の後退の原因
  • 民主化前に多くの国民は「妥協のできない韓国人は強いリーダーシップで率いるしかない、民主化しても合意を生めるどころか混乱するだけ」と語っていた

第3章 米中の間で右往左往

1、李承晩時代は「坂の上の雲」になるか

  • 司馬遼太郎の「坂の上の雲」に相当する小説「太白山脈」が韓国に出たがこれにより反米感情を育てた
  • 反米に一気に火が付いたのが1997年の通貨危機だ、米国と日本は韓国を救わなかったためIFM管理という屈辱を受けたが、それは当時の金泳永三政権の従中政策のせいだ

2、従中を生む「底の浅い民主主義」

  • 韓国はなぜ、中国にすり寄るのか、①長い間属国だったから、②経済的に中国に深入りしすぎた、③それと民主主義への思いの浅さに起因する

3、中国の台頭に思考停止

  • 1987年の民主化以来、政権が代わる都度、韓国外交の根本姿勢が揺れ続け、米中の間を右往左往し、国益を大いに棄損した
  • 露骨な二股外交のため韓国は米国から信頼されてなく、国を危うくしている、米中対立がこれほど激しくなると予想していなかった
  • 韓国が中国を仮想敵とみなさなければ米韓同盟も長続きしない
  • なぜ、21世紀初頭の韓国人は現実を直視しなかったのか、それは韓国には「自決」の歴史がないからだ、三国の時代から大国に小突きまわされ、19世紀の西洋のアジア侵略が始まった時もそうだったし、1948年独立後の朝鮮戦争の時もそうだったからだ
  • そもそも、韓国人は決定的な局面で米国に裏切られたという集団の記憶を持つ、1905年の桂・タフト協定で日米両国は米国によるフィリピン統治と、日本の韓国に対する保護・監督権を相互に承認した、1882年の米朝修好通商条約で米国から保護の約束を取り付けていたと思っていたからだ

第4章 日本との関係を悪化させたい

1、日本を見下し「独立」を実感

  • 韓国人に「反日」というと怒るようになった、劣等感の現れだからだ、現在は「卑日」に変えた
  • 過去の反日は日本に甘えた行動だったが21世紀に入ってから対日姿勢は変わった、日本を貶めることにより韓国が上だと確認しあう国民的行事となった、日本が衰退期に入ったと見るや態度をがらりと変えた
  • 「卑日」が定着したのは2つの理由がある、1965年の日韓国交正常化以降日本からの経済援助と技術協力があって北朝鮮に対抗する国力を持てたから日本の鼻息を窺わざるを得ないとの鬱屈、台湾はそれが無かったからはるかに良好な対日観を持つ
  • もう一つの理由は米中対立だ、日本との関係が悪いので米韓日の軍事協力に入れないと拒否した、対日関係を悪化させることで中国包囲網の結成を邪魔する、それは中国が怖いからだ

2、植民地になったことなどなかった

  • 日韓の関係が良くなることなどまず、ないであろう、日本の植民地になったことなどなかった、厳密には日本による統治は不法と思いたいのでさまざまな罠を仕掛けてくるだろう、慰安婦問題、徴用工問題、佐渡金山の世界文化遺産登録などだ
  • 尹政権は日本に植民地支配を不法と認めさせ、何とか金を出させるために「未来パートナーシプシップ基金」を作らせ、この基金を徴用工向け賠償金に振り向けさせる作戦を出してきた、こんな見え透いた罠に日本はまるわけないが、韓国側はあきらめない、日本側に呼応する勢力がいるからだ、朝日新聞は繰り返し社説で日本側の出資をさりげなく訴えてきた、政治家にも韓国へさらなる謝罪を訴える人がいる、石破茂議員である

3、「アメリカの平和」に盾突く覚悟はあるのか

  • 2015年の安倍政権戦後70年談話にも介入し、侵略・植民地・反省という3つのキーワードを使えと言ってきたが安倍政権は巧妙な論理構成でその意図には沿わず、むしろ韓国を揶揄した、よほど皮肉屋で答弁技術に熟達した役人が書いたのだろう
  • 今さら韓国が日本の植民地になったことなどないと主張するなら、サンフランシスコ講和条約を否認し、米国が定めた戦後秩序に異議を唱えることになる
  • コロナ禍で韓国紙が一斉に「西洋の没落」を謳い上げた、西欧の諸国やそこに加わった日本には韓国人の心の奥底は容易にはわからないのだ

あとがき

  • IFM危機が無かったら左派の金大中が大統領になることはなかった、危機を引き起こした保守に絶縁状を叩きつけ韓国初の左派政権を誕生させた、これ以降、韓国は保守と左派が政権を交代する時代に突入する、そして金大中政権は北朝鮮への援助に乗り出し、瀕死の北朝鮮は生き返り、核開発に邁進する
  • IFM危機は米国が中国にすり寄った金泳三政権にお仕置きをした面が強い、これで米国は韓国を中国・北朝鮮側に押しやった、IFM危機が無かったら朝鮮半島は今ほど不安定になっていなかっただろう

いろいろ参考になりました、著者の指摘には同意できる点が多かったが、「韓国の中国化」など今の日本にも当てはまる点が少なくないと感じた

読後に改めて我が国の今後の韓国との関係を考えてみると

  • 対韓外交はアメリカの意向次第であろうが、付かず離れずの態度で接するのが良いと思う、軍事的協力や経済的支援(スワップ協定や技術供与等)などはすべきでないと思う
  • 我が国の長年の友好や支援、保護に反感を持ち続け、我が国元総理大臣を暗殺し、竹島を不法占拠し、過去の両国の合意を何度も反故にし、何度謝罪してもなお謝罪・賠償を要求する反日、卑日国家とは距離を置いて接するのが賢明であろう



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