風邪をひきやすい、ケガが治りにくい…。みんな「年のせい」とあきらめていることが、実は「免疫力の低下」のサインだ。言い換えれば、的確な対処法を実践すれば免疫力は維持され、健康長寿に結びつく。やらない手はないだろう。
人間が本来持つ寿命は生物として見た時、50年前後。しかし、最近の日本人の平均寿命は、男性が79・59歳、女性に至っては86・35歳まで伸びている。背景には、産業革命以降の近代文明がもたらした数々の恩恵、特に医学の進歩が大きく関係していることは言うまでもない。
しかし、生物としての寿命年齢を過ぎれば、免疫機能は低下していく。この低下の度合いが大きい人を「病弱体質」と呼び、その体質を改善することで健康長寿の実現に役立てるべきだ、と唱えるのが今回紹介する「年齢別の正しい対処で病弱体質は変えられる」(すばる舎)。
著者の安部良氏は、日本を代表する免疫学研究の第一人者。最新刊となる本書では、年代に応じた対策を講じることで免疫機能を高め、病弱体質から抜け出す方法を紹介している。
まずは別掲のチェックシートを見てほしい。この中の一つでも当てはまれば「病弱体質」の可能性が大だが、この記事を読んでいる読者の大半は、二つ三つは当てはまるのではあるまいか。これを克服するには、免疫力を向上させる以外に手はない。
人間の免疫機能は、年齢に応じて四つのステージを経ていく。第一ステージは出生から生後半年あたりまでの「乳幼児期」で、免疫機能が未発達。第二ステージは12歳頃までの「少年期」で、免疫を鍛えていく時期。第三ステージは30~40歳あたりまでの「出産・子育て期」で、免疫力が最強。第四ステージがそれ以降の「シルバー期」で免疫力が落ちていく。
重要なのが、ステージごとに免疫機能を高める、あるいは高く維持するための取り組みが異なるという点だ。
小紙読者の多くは、第三ステージから第四ステージに移行したあたりに当てはまるはず。この世代がどうすれば免疫力を維持し、低下に歯止めをかけられるのか。実はもう、悠長に構えてはいられないのだ。
本書にはさまざまな取り組みが紹介されているが、その中から一つだけ紹介する。「肉食のススメ」だ。
かつては高齢者の肉食は控えるべきだという考えが主流だったが、今は違う。老後の運動機能を維持するためにも、高齢になるほど肉を積極的に取るほうが免疫力を維持するためにも重要だ。
「他にも色々な取り組みが紹介されています。免疫研究の権威が教える免疫力改善法の王道を理解すれば病気になりにくくなる。基礎体力も上昇して、病気知らずの体をつくれます」と編集を担当したすばる舎の菅沼真弘氏は太鼓判を押す。
むやみに若い世代と競っても意味はない。自分に合った、身の丈に合った健康法で、着実な健康長寿を目指すべきだ。 (竹中秀二)
■安部式「病弱体質」チェックシート(抜粋)
・肌荒れや乾燥肌が続く
・口内炎がよくできる
・傷の治りが遅い
・すぐに下痢になる
・慢性的な便秘
・疲れやすく、いつもだるい
・日々ストレスを感じている
・タバコを吸う
・睡眠不足、運動不足
・平熱が36度未満
60歳以降に働く場合、それ以前とは違った働き方をする必要がある。年金の受給が始まったり、行政の給付金が受け取れたり、年齢によって制度の変更があったりするからだ。
最も気をつけなければならないのが、働き方によって年金がカットされる「在職老齢年金」制度だ。正社員として厚生年金に加入して働くと、給与と年金の合計が一定の上限額を超えれば、年金額が減らされてしまう。65歳未満は上限額が28万円で、65歳以上は46万円だ。
たとえば、60歳時点の月給が40万円だったAさん(62歳)が、それ以降も正社員として再雇用され、24万円の月給をもらっている場合、一般的な年金額10万円と月給の合計が34万円となり、上限額(28万円)をオーバーする。このケースでは、上限額との差額の6万円の2分の1にあたる3万円がカットされ、年金額は7万円に下がる。
年金カットはそれだけではない。前述した高年齢雇用継続給付金をもらっている場合、さらに年金額は減る。「高年齢雇用継続給付金と年金の併給調整」という仕組みで、年金から給付金の40%が減額されることになる。
Aさんの給付金額は3万6000円。すると、年金額は7万円から、給付金額の40%にあたる1万4400円が差し引かれ、5万5600円となる。結局、Aさんの月収は「給料24万円+給付金3万6000円+年金5万5600円=33万1600円」となるが、年金はトータルで4万4400円も減額されていることになる。
ここでは、年金をいかに減らされずに働くかがポイント。
「厚生年金に加入せずに働けば、在職老齢年金制度は適用されず、年金はカットされません。正社員の4分の3未満の時間で働けば、制度上、厚生年金に加入しなくて済みます。また、前述のように雇用継続給付は週20時間以上働く人に適用されます。そうした条件から、『週20時間以上、正社員の4分の3未満』で働けば、年金も給付金も総取りできる理想の働き方になります」(社会保険労務士の北村庄吾氏)
正社員の4分の3の労働時間とはいえ、あくまでそう契約するだけで、オーバーした時間分は残業代として受け取ればいいだけだ。
また、正社員ではなく、「個人事業主」として会社と再雇用契約を結ぶというのも有効だ。これでも厚生年金に加入する必要はなく、年金はカットされない。
「ただし、大卒(22歳)で就職したほとんどの人が60歳まで働いても、基礎年金の加入期間の上限である40年まで、加入歴が2年足りない。満額受給するために、個人で国民年金に加入しておけば、年金額も増やせます」(北村氏)