その結果、民主が現職と新人の2人を擁立した10選挙区のうち、静岡選挙区で「共倒れ」の可能性を指摘。残る選挙区では民主、自民が議席を分け合う形になり、民主2議席独占は「ゼロ」と予測している。
内訳を見ると、連合など強固な組織票に支えられた現職がやはり優勢。一方、小沢氏主導で擁立した新人は死屍累々といった様相だ。
党勢は回復したものの、支えだった小沢氏が表舞台から退場。菅首相の消費税10%発言のあおりも受け、軒並み苦戦を強いられているようだ。
例えば、茨城は民主、自民の現職2人がリードしており、小沢氏が主導して擁立した新人でアテネ五輪自転車競技銀メダリストの長塚智広氏は伸び悩んでいる。宮城も民主現職の桜井充、自民新人の熊谷大の両氏が優勢で、民主2人目の新人は苦戦。
京都では、民主、自民の現職2人が優位な戦い。小沢政治塾出身で衆院からくら替えした民主新人、河上満栄氏はかなり厳しい戦いを強いられている。「いくら1日50回の街頭演説など小沢氏から選挙戦術を指南されても、空中戦にも限界がある」(地元政界関係者)との声が漏れる。
「首相交代前は宮城、福島、兵庫など5選挙区で共倒れする可能性が高かった」という久保田氏だが、首相交代効果で民主共倒れ懸念は解消され、最低でも1人が生き残るようになったと分析。
ただ唯一、「共倒れ」としてあげた静岡は、自民新人の岩井茂樹氏と、パラリンピック競泳金メダリストでみんなの党の河合純一氏が優勢とみる。
連合静岡の吉岡秀規会長が「民主の支持率回復で少し楽になったが、共倒れの危険性はまだ残っている」というように、“悪夢”が現実味を帯びつつあるのだ。
久保田氏は「民主2人目、つまり新人の中本氏の擁立をめぐって地元組織が反発するなど、中央とのゴタゴタをみせつけられた有権者は民主にそっぽをむいてしまっている」と分析。
そのうえで、「首相の消費税発言への批判票を河合氏が吸収し、“漁夫の利”の形になる可能性が高い。ただ、報道機関の情勢調査でも順位が違うように、情勢は流動的だ」という。
熾烈を極める2人区。「選挙は歩いた距離、握った手の数しか票は出ない」(自民党の石破茂党政調会長)といわれるが、無党派層の動向が当落を左右するのも事実。
民主50台、自民45前後か 序盤情勢
2010年6月27日
共同通信社は7月11日投開票の第22回参院選に関し24~26日の3日間、全国の有権者約3万人を対象に電話世論調査を行い、取材も加味し選挙戦序盤情勢を探った。
民主党は50議席台に乗せるが、国民新党を加えた与党では非改選66議席(与党系無所属1人を含む)と合わせ過半数122に必要な56議席の獲得は微妙。
自民党は45議席前後をうかがい、勝敗の鍵を握る改選数1の選挙区を中心に与野党が過半数をめぐり競り合っている。
公明、共産、社民3党は伸び悩み改選議席維持に苦戦。第三極のみんなの党は改選議席ゼロから7議席前後に躍進の勢いだ。
ただ調査時点で約5割の有権者が投票態度を決めておらず終盤にかけて情勢が大きく変化する可能性もある。
全国で29ある1人区のうち香川と沖縄を除く27選挙区で民主、自民両党の公認候補が激突。民主党はこのうち岩手、奈良、岡山、徳島、高知などで優位。自民党は和歌山、佐賀、宮崎などで優勢だが、そのほかでは激しく競り合っている。
12の2人区では民主が議席独占を狙い原則2人擁立したが、自民党と1議席ずつ分け合う状況。5ある3人区と、5人区の東京でも民主、自民両党がそれぞれ1議席をほぼ固め、東京、神奈川では民主党が2議席目を視野に入れる。
比例代表では民主党は10議席台後半、自民党は同前半の見通し。
公明、共産、社民の3党はそれぞれ改選の11、4、3議席維持が微妙だ。公明党は選挙区で3人を公認し、いずれも優位か当選圏にある。比例代表は6年前の選挙で獲得した改選8議席の確保が厳しい状況。共産、社民両党は比例でそれぞれ3、2議席程度の情勢だ。
国民新党、新党改革はいずれも比例代表で1議席獲得をうかがう。みんなの党は比例で6議席程度確保しそうで、3人区の愛知でも1議席を得る可能性がある。たちあがれ日本は議席に手が届くかが焦点だ。
【調査の方法】24~26日の3日間、全国の有権者を対象に、コンピューターで無作為に電話番号を発生させて電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。今回、無作為に発生させた番号のうち、実際に有権者がいる世帯にかかったのは4万1550件で、このうち3万406人から回答を得た。