クラウド時代と〈クール革命〉。作者は角川グループホールディングス代表取締役会長の角川歴彦氏。1943年生まれとのことなので、なんと70近い。その年齢の方が情報技術の進化と、それによってこれから起こる革命的な変化を予測した意欲作で、そのチャレンジは賞賛に値すると思う。さすが、メディア界の最前線で陣頭指揮されてきた経営者は違う。これまでの氏の経歴と年齢から許されていいと思うけど、ある種 断定的に書かれているので、読んでいてわかりやすい。ある程度年齢を召した方で、インターネット・コンテンツ事業に関心がある方々にお薦め一冊 (^^ゞ 。ただ自分は、内容的に100%賛成しているワケではなくて、特に最終章の「提言」の部分はちょっと「?」と思っている。やはり出版業界に対するアマゾンのKindleやアップルのiPadが与える衝撃やクラウド時代における「コンテンツ購入」とはどういうことなのか? などの分析は素晴らしく、これから世の中がどうなっていくか、そのとき自分たちはどうビジネスを組み立てていくのか、という点でとても参考になる。
以下、印象的な部分を抜粋しながら転載してみると
出版社の好むと好まざるとにかかわらず、音楽マーケットの決着がつけば次の主戦場は出版ということになる。そしてそれは今だ。私のように出版業界に軸足を持つ者にとって正念場は今だ。音楽は1.9兆円だが、新聞を含む出版市場は6兆円もある。音楽産業の3倍の市場規模をもつ日本で、アメリカのアマゾンとグーグルとアップルが三つどもえの争奪戦をする。日本のIT事業者と家電メーカー抜きの戦いを傍観し、かつ巻き込まれるのはなんとも憂鬱な話だ。
決して明るく語っているわけではないけど、ここまで正確に自己分析できていれば、打つべき手も見えているはずだ。
確かに、今、自分のiPhoneには約1500曲のお気に入りの曲がセットされ、いつでも持ち歩いている状態になっている。そのメリット、素晴らしさは体験していないとわからないと思う。そして今度は新聞・書籍。かつて読んだお気に入りの本、今読みたい新聞や雑誌。これらすべてを持ち歩けたら。。。紙の質感などにこわわり、電子書籍に疑問を投げかける人も多いけど、自分は一度体験したら戻れないような気がする。電子書籍を敵視するのではなく、利用する人が増えてきたときにどう対処するのか、そのことを考え、行動に移していくのは今だと、自分も思う。
さらに抜粋しながら転載。
(ユーチューブは)世界マーケットで毎月4億2000万人の視聴者をかかえる圧倒的な動画配信サイト。そのユーチューブにテレビ局が放送番組やニュースを流し始めた事実は、「放送と通信の融合」といった総務省の業界保護政策が既に過去の問題になったことを思わせる。技術革新がもたらした社会の変化が、行政による統治の先にいってしまった。ネットのイノベーションと「知」のグローバリゼーションが、法律や政策の効力を無効にする。さらにいえば近い将来、放送は通信に呑みこまれていくのではないかと予感させる。
出版業界で仕事をされてきた角川氏の冷静な自己分析に比べると、大手テレビ局の老人経営者たちの言っていることは 古めかしかったり、感情的だったりしている論調が目立つと思う。角川氏のように、これだけの本をまとめられるだけの人はいないように思える。
また著作権保護、個人情報保護ということに過度に反応してしまい、これからの成長産業であるコンテンツ産業を身動きとれないようにしてしまっている日本の社会にも警鐘を鳴らされている。このあたりの発想はとても若々しく、画期的だと思う。
最初にも書いたけど、「若い、言われなくてもネットバリバリの人たち」にはお薦めしないかな。それなりの年齢に達した経営層の方々への、未来予測の書としてお薦めします。
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先日、テレビ朝日にてビートたけしと麻生前首相の対談がありましたが、
鳩山首相に「国営漫画喫茶」とむごたらしく攻撃された「メディア館」構想、
あれの真の狙いは契約面での不備を叩かれて本来取れるべき利益を大きく損
ねている輸出アニメーション(映画)の契約交渉に外交手腕を持った政府
(官僚:例、水産庁など)スタッフのバックアップを付け、交渉の瑕疵をな
くして産業としての飛躍を図る事だったそうです。こうしたすばらしい構想
とその企画者を「漢字が読めない云々・・・」といった扇情的なレベルで判断
し、潰してしまった訳ですから、忸怩たる物が湧き上がってきます。
(でも、この対談企画の柔軟性は正直TV朝日らしからぬものだと思いましたが^^;)
あの・・、申し訳ありません。麻生某氏はどうしても好きになれないのです。たしか「メディア館」は土地取得代と建設費しか予算申請されていなくて、「ハコモノ」行政の見本でもあったような気がするのですが・・・。
「メディア館」の真のねらいも、今頃ビートたけしに言うんじゃなくて、当時、きちんと国民に説明してほしかったですよね。ただ、そこに真のねらいがあったのでしたら、「メディア館」を作るよりも他のやり方があるような気がします。
申し訳ありません。麻生某氏はやっぱり好きになれないのです。。ご容赦を。
マンガを例にとりますと、巨大産業でありながらそれを史的・専門的に整理・保存
している施設は(直近の明治大学が予定している施設を除くと)民間のマンガ図書
館(内記コレクション)だけだったりします。
上記施設が実質「箱物」である事は確かなのですが、このジャンルには(世界に冠
たる実績を挙げているのに)「箱」すら無かったのが実情でした。ですから鳩山首
相には揶揄する前に「こうした振興策を!」といった「やり方」を主張して欲しか
ったというのが率直な気持ちです。私としてはマンガを単なる攻撃材料にしていた
鳩山氏の姿勢が麻生氏の人格以上に頭にきていました^^;
余談ですが、マンガやアニメにはどこかでアングラなものとつながっている匂いが
しますね。
スタジオジブリを育てた徳間書店にしても飛躍のきっかけは「アサヒ芸能」でしたし、
角川書店が連発でヒットさせた映画「ヱヴァンゲリオン」「涼宮ハルヒ」「リリカルなのは」
なんかは18禁PCゲーム・同人誌を原作にしたり、人材をスカウトしたりしています。
新しい文化は自由でかつ混沌(カオス)の中から生まれてくるのかもしれません。
今回はいささか暴走してしまいました。読み流していただければ幸いですm(_ _)m
その後の記事に書きましたとおり、上海にきておりまして、持参したノートPCをホテルのネットにつなげることができず、返信が遅くなってしまいました。今、ようやく親切な友人に手伝っていただきつなげることができました。
>新しい文化は自由でかつ混沌(カオス)の中から
>生まれてくるのかもしれません
ぼくもそう思います。この分野のパワーは素晴らしく、海外での日本のイメージアップに貢献していると思います。
余談ですが今日(ってもう昨日ですね)上海万博の某パビリオンの物販コーナーは「秋葉原街」と称していました(全然秋葉原じゃないのですが (^_^;) )。なんとなくうれしくなった次第です。
>余談ですが今日(ってもう昨日ですね)上海万博の某パビリオンの物販コーナーは「秋葉原街」と称していました(全然秋葉原じゃないのですが (^_^;) )。なんとなくうれしくなった次第です。
「秋葉原」この街の先駆性と柔軟さには驚嘆しか思い浮かばないですね。
国内最大規模の電器の街として出発して、パソコンの街→ソフトウェアの
街と指向を変えていく毎に(関連する分野を貪欲に取り込んで)力を増し
ていく姿には適切な表現を探す事がもう難しいような気がします。
松田様のような新しい事業を追求される方と、対極なはずの18禁
ゲームやアニメのような一種アングラなものが同居して、一方オリ
ジナルの電器制作のためのあらゆる部品が出店レベルで揃う、それが
違和感なく共存している街、今気がついたのですが、ここはアジア版の
シリコン(ソフト)バレーなのかもしれません。そう考えると、日本は
今の強烈無比な情報産業の潮流に対応していく基礎を既に持っているの
かも知れないと思えてきます。
松田様の上海体験記、楽しみにしております(^^)
日本は確かに強烈無比な情報産業の潮流に対応していく基盤ができていると思います。ただ、そこが思うように大きなパワーに結集できていないと思います。
そのあたりはこれからのテーマだと思います。
上海体験記、なんとか時間を作り、ぼちぼち書いていきます。どうぞお楽しみに~♪