東京日記
静岡県焼津市、藤枝市、北海道の札幌市にあるIT企業グループの経営者 松田敏孝の日記です。




NHKの沸騰都市シリーズは大好きな番組のひとつ。今日はシンガポールでした。ずいぶん前だけど シンガーポールには1度だけだけど行ったことがある。マレーシアのクアラルンプールからマレー鉄道に乗って、ジョホール水道を越えてシンガポール入りしたんだけど、当時は問題意識が希薄でマーライオンが水を吐いていたことくらいしか覚えていない (^_^;) 。

その後、リー・クアンユー首相というとても優れた指導者が登場して、空港や港湾など都市国家として必要なインフラを整備して産業を発展させ、欧米との時差を利用してアジアの金融経済の中心地となることを目指し、年金などの資金運用の成績は抜群で、国民生活を向上させたことは知識として知っている。クリーンで先進的な国というイメージが自分にはあった。

そのシンガポールが、今、この世界的な金融危機をどのように受け止め、どういう方向に進もうとしているのか、とても関心があった。そして番組をみて・・・。正直なところ絶句。。。す、すごい。。。想像以上だった。

赤道直下、東京23区くらいの広さの中で480万人が暮らす都市国家。天然資源はおろか、水さえも隣国に頼らなければいけない状況。そういう国がさらに発展していくためにはここまで徹底しなければならないのか。

シンガポールで問われるのは国籍ではなく能力。徹底している。

EDB(経済開発庁)という政府直轄組織の中に優秀な人材を世界中からスカウトする専任部門があり、特にバイオ研究者たちを中心に集めている。これまで蓄えてきた資金を 今、人材獲得と彼らの研究に徹底して向けているのだ。バイオポリスという施設では日本では考えられない研究予算が与えられていて、すでに日本からも癌治療の権威や白血病関連の研究で有名が学者たちが移住していた。

研究者にとっては生活面も含めて確かに理想的な環境だが、その成果査定もまた厳しい。世界中のTOPクラスの研究者が競い合い、脱落すれば容赦なく契約は解除される。「一生懸命やりました」とか「コツコツやりました」などということはまったく評価されない。

EDBの人材獲得の責任者は「ノーベル賞なんて2の次だ。GDPを増やすこと、雇用を生むこと、国家収入を増やすこと、これが第一だ」と言い切っていて、また「日本はお金はもっているけど、使い方を知らないんだ」とバッサリ。

シンガポールのやり方が研究者を幸せにするのかどうかはわからないけど、国力を伸ばすということには確実に有効に機能すると思う。また日本には、こういう「シンガポール的な要素」が必要なのも間違いないと思う。

シンガポールは優秀な能力こそが、国を繁栄に導いてくれると信じているのだ。

対比的にバングラデシュなど南アジアから集まってくる労働者の生活も紹介される。シンガポールは観光にも力を入れていて、大規模なホテルやイベント会場などの建設も進めているので、そちらにも労働力が必要なのだ。しかし、彼らの労働環境ははっきり言って悪い。またそういった海外の労働者たちがシンガポールに永住できないような雇用の仕組みも作り上げている。

それでもシンガポールで1年働けば、自国で働く10年分くらいの収入になるので、「働きたい」という希望者は後をたたない。工事現場に向かう作業者たちはトラックの荷台に乗せられ移動する。法規にうるさいシンガポール政府も黙認しているとのこと。こちらも徹底している。

一連の国家戦略の指揮を執るのはリー・シェンロン首相(写真上)。あのリー・クアンユー首相の息子で、イギリスのケンブリッジ大学、アメリカのハーバード大学で学位を取得しているとのこと。バリバリのエリートだ。あちこちの大学に留学はしたけど学位は取れなかったとかいう日本の麻○首相とでは、はっきりいって月とすっぽん。世界レベルでの見識も実行力も足元にも及ばないだろう。

シンガポールでもご他聞にもれず、今回の金融危機以来、大規模な建設案件は中止または延期が増えているようだ。そうなると外国人労働者は仕事がなくなってしまい、自国に退去させられてしまう。そのことについて外国人記者が質問したが、リー・シェンロン首相は「外国人労働者はバッファーだ。景気がよければ必要だが、仕事がなくなってしまったときは解雇される。そういう調整弁の役割を果たしているのだ。自分はシンガポールの人たちに選ばれたのだから、シンガポールの人たちの利益を優先するのは当然だ」と言い切っている。

シンガポールのやり方をすべて肯定する気にはなれなかったけど、くりかえすけど、今の日本には「シンガポール的要素」も必要だと思った。さらにその上をいくためには「一に教育、二に教育、三、四がなくて、五に教育」だと思う。日本はシンガポールに比べればはるかに国土も広く、資源もあるのだ。外国人労働者を「調整弁」などといわず、共存していくこともできるはずだ。


シンガポールではF1レースを誘致し、公道でレースを行い、世界中から注目を集めた。国としての魅力を高めるすべを知っている。またこれまでアメリカで開催されていたゲーム、アニメ系の世界的なイベントもシンガポールに誘致した。このイベントに世界中の優秀なクリエイターたちが集うので、そこでスカウトをかけるねらいがあるのだ。

シンガポール、恐るべし。

「才能こそが繁栄をもたらす」  それは真実だと思う。

でもそのことが貧困をなくし、幸せにつながるのか はわからない。

シンガポールにまた行ってみたくなった。


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コメント
 
 
 
光りと闇 (古井戸)
2009-02-18 08:53:58
夕べ再放送を見ました。

光り、と、闇の部分がありますね。アジア各国の派遣労働者やお手伝いさんがいなくなったり、。。研究者から悪評が立ったりすれば、イチコロ、の都市国家ですね。

90年代にシンガポールで仕事をしたことがありますが。当時の新聞には今年は移入が移出人口が上回った、と記事にあった。国民=市民は虎視眈々と欧米への移住を計画していたが。。いま、どうなんでしょうか。この国に育てば、愛国心、など育たないだろう。。とおもいます。これはいい面、悪い面があるとおもう。
 
 
 
確かに両面ありますよね (としたか)
2009-02-19 00:50:26
古井戸さん、コメント どうもありがとうございます。

確かに良い面、悪い面、両面ありますよね。
ぼくも手放しには賛同できないと思いました。

確かに愛国心がどうなるのか、それから子ども達が外国人労働者をみてどう思うのか、心配になりました。

でも、シンガポール、徹底しているし、強いですね。

一方で日本では、研究や教育のような、成果がでるまでに時間がかかる部分にはお金をかけていない気がします。シンガポールを見習って配分を変えていくことも必要だと感じました。
 
 
 
確かにそうですね (yamada)
2009-02-26 01:19:34
国家の繁栄という意味ではシンガポールがとっている政策は正しいと思います。世界が資本主義である以上は資本をできる限り集めることが勝ち組への条件となりますよね。

外国人労働者をバッファーとして使うことは国家の繁栄するために正しいことだと思います。

しかし、シンガポールの繁栄ではなく世界中の人が幸せになるということを考えると自己中心的な考えになってしまいます。

世界でこれだけ貧富の差があるのは、自国の国民が幸せにあればいい、自分のまわりさえよければいいという考えからきているような気がする。

自国だけ幸せになればいいという考えを、世界中のみんなが幸せになるにはと各国が考えるようになれば、無駄な戦争も貧困もなくなるのではなくかと思います。

日本人科学者のシンガポールでの生き残りを見ていると、いい評価をもらうために実験をしているようにしか見えなった。

シンガポールにまできて、ほんとにやりたいことだったのかと聞いてみたくなった。
 
 
 
私たちに出来ること (としたか)
2009-02-27 08:50:45
yamadaさん、コメント どうもありがとうございます。

自分さえよければいい、自国さえよければいい という考え方は本当に是正されるべきですよね。甚大な被害をもたらす戦争も、そういう気持ちがなくなれば起きないような気がします。

なかなか日常では「世界のために」とか発想できないのですが、まずは「自分の周囲の人たちのために」と考えて行動していくこと、そして「他の人たちや自然に迷惑をかけない」ことが、最終的には 世界に、地球規模な活動につながっていくのだと思います。

日本がそういう発想で動く国として、世界の先頭にたてるといいですね。
 
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