「日本企業に足りないものすべてをこの2社が持っている」 書籍の帯布に書かれた挑戦的なメッセージ。でも読んでいくうちに「そうなんだよなぁ!」と納得すること多数。インターネット以前に創業されハードウェアの販売を中心にビジネスを組み立てるアップルとインターネット以降に創業されて検索を中心にWebサービスを無料で提供し、そこに広告をつけることでビジネスするグーグル。一見すると共通点がないようにもみえるけど、発想法や開発姿勢は似ており、「アップルとグーグルが組むことを考えると、マイクロソフトとヤフーの組み合わせよりも実はシナジーが大きく」(本文より)、お互いを評価しあっていることがわかる。
第1章では「世界を変え続ける企業 アップルとグーグルの共通項」ということで2社がもつ共通点を紹介し、
第2章では「アップルとグーグル 異なる戦略とビジネスモデル」ということで インターネット以前の会社で、モノを売るアップルとインターネット以降の会社で無料でWebサービスを提供するグーグルの違いを鮮明にする。
圧巻なのは第3章、最終章でもある「アップルとグーグルの接近と日本にもたらす影響」
1998年にアップルは 自社で開発するOSはただ一つに絞り込むと宣言した「シングルOS宣言」を発し、それがiPhoneの成功につながっていく。iPhoneの普及が日本に及ぼす影響は携帯電話業界に止まるものではなくて、これからのライフスタイル全般に影響していくことが語られる。このあたりは迫力満点だ。
携帯電話は電話の延長線上のものではなくなり、「ケータイ」としてデジタルライフスタイルのプラッットフォームになっていく。たとえばパナソニックやソニーがケータイで世界的なシェアをもっていれば、自社のテレビは自社のケータイから遠隔操作できるようにすることは想像に難くないわけで、そのような技術革新が今後さまざまなシーンで展開されることになる。これからの世の中を変えていくような技術革新が進行していくとき、アップルのiPhoneとグーグルのアンドロイドには目が離せないのだ。そのあたりの2社の考え方や日本における影響を詳しく知りたい人はこの本の第3章だけでも読んでもらうしかない。
日本企業については最近朝日新聞、読売新聞、日経新聞が共同で始めた「あらたにす」というポータルサイトなどが紹介されているが、「本質的な構造の変革を理解しない経営陣や中間層が、あまりにも権力を握りすぎているために、流れが滞ってしまっているのだろう。このままだと、日本のコンテンツ業界はことごとく緩やかに下降し、衰退していくしかない」と一刀両断されている。IT関連の大手企業についてもベンチャーについても同様だ。
マイクロソフトもパソコンの世界ではXPからVISTAへのOS移行に失敗しており、モバイル用ではWindows Mobileがシェアを拡大できないままで、「ネットについての感覚は常にどこかずれている」とバッサリ。
今さらながらスティーブ・ジョブスの「シングルOS宣言」の秀逸性を再認識した次第。
本当に残念だけど、独創性でも、技術力でも、現状では輝きを失っている日本企業は多い。今はインターネットの時代であり、大変革期であることを改めて実感した。
このネットの時代に、ネット企業もそうでない企業も、もっとネットを理解して、さらに発展していくこと。気概をもって前向きにこのネット時代を生きていくことができるはずだ。そのためのヒントをアップルやグーグルは示してくれている。そのように感じた。
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