帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第四 秋歌上 (197)秋のよの明くるもしらずなく虫は

2017-04-10 19:00:06 | 古典

             

 

                        帯とけの古今和歌集

               ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

国文学が全く無視した「平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観」に従って、古典和歌を紐解き直せば、仮名序の冒頭に「やまと歌は、人の心を種として、よろずの言の葉とぞ成れりける」とあるように、四季の風物の描写を「清げな姿」にして、人の心根を言葉として表出したものであった。その「深き旨」は、俊成が「歌言葉の浮言綺語に似た戯れのうちに顕れる」と言う通りである。

 

古今和歌集  巻第四 秋歌上 197

 

是貞親王家歌合の歌          敏行朝臣

秋のよの明くるもしらずなく虫は わがごとものやかなしかる覧

是貞親王家(寛平の御時、宇多天皇と御兄弟のお方の家)の歌合の歌。 藤原敏行

(秋の夜の明けるも知らず鳴く虫は、我が如く、何となく哀しいのだろうか……飽きの夜の余情の、はてるも知らず泣く女は、吾が如く、ものが、悲しいのか・愛しいのか、駆る、乱)。

 

 

歌言葉の「言の心」を心得て、戯れの意味も知る

「秋…飽き…厭き」「よ…世…夜…余…余韻・余情」「あくる…(夜が)明ける…限界が来る…果てが来る」「鳴く虫…言の心は女…泣く女…嘆く女」「ものや…何となくか…我がものか…まぐあいか」「や…疑問を表す」「かなし…悲し…哀し…愛し・愛着する」「かる…(かなしく)ある…刈る・狩る…めとる…まぐあう…駆る…追いたてる…衝動にかられる」「覧…らん…らむ…推量の意を表す…見…まぐあい…乱…乱れ」。

 

秋の夜の明けるのもしらず鳴く虫は、我と同じように、ただもの哀しいのだろうか。――歌の清げな姿。

飽きの夜の余情が果てるのもしらず泣くおんなは、我の如く、もの悲しいのか・ものが愛しいのか、かりに駆りたて、見るに乱れる。――心におかしきところ。

 

男が厭きと感じる飽きの夜あけの、おんなのありさまを言い出した歌のようである。

 

(古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による)