帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百七十一〕時奏する

2012-01-05 00:01:41 | 古典

  



                                             帯とけの枕草子〔二百七十一〕時奏する



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百七十一〕時そうする


 文の清げな姿

 時刻をお知らせする、とっても趣がある。たいそう寒い夜中などに、ことことと音して、沓擦りつつ来て、弓弦うち鳴らして、何の某、時丑三つ、子四つなどと遠声で言って、時の杭さす音など、とっても趣がある。「子九つ、丑八つ」などと里の人たちなら言う。すべて何の刻であっても、ただ四つの時のみ、杭にはさしたのだった。


 原文

 時そうする、いみじうおかし。いみじうさむき夜中ばかりなど、こほこほとこほめき、くつすりきて、つるうちならして、なんなのなにがし、時うしみつ、ねよつなど、はるかなるこゑにいひて、時のくいさすをとなど、いみじうおかし。ねこゝのつ、うしやつなどぞさとびたる人はいふ。すべてなにもなにも、たゞよつのみぞくいにはさしける。


 心におかしきところ

 伽、添う、する、とってもすばらしい。たいそう寒い夜中などに、こほこほと子おめき、来た、すり寄り来て、弓張り、うち鳴らして、何なの、何某、伽、憂し、三つ寝四つなど、よそよそしい声で言って、伽のくいさす、お門など、とってもすばらしい。「寝、九つよ。憂し、八つは」などと里の女たちなら言う。すべて、だれもかれも、ただ、四つ(夜十時ごろ)のみぞ、久井にはさしたことよ。


 言の戯れと言の心

 「時…とき…とぎ…伽…話を交わしつれづれを慰めること…夜伽…添寝」「そうする…奏する…お聞かせする…そふする…添うする」「こほこほ…こぼこぼ…からころ…ごろごろ…擬音」「こほめき…こおめき…おとこめき」「くつ…沓…来つ」「つる…弦…弓弦」「うし…丑…憂し」「みつ…見つ…覯しつ…媾しつ」「見…覯…まぐあい」「はるか…遠く離れているようす…気持が離れているようす…よそよそしく」「をと…音…おと…おとこと門」「と…門…女」「くひ…杭…おとこ…久井…久しきおんな」「さす…差す


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。