帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百七十〕屋は

2012-01-04 00:13:18 | 古典

  



                      帯とけの枕草子〔二百七十〕屋は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百七十〕屋は


 文の清げな姿

 小屋は、丸太小屋、東屋。


 原文

 屋は、まろや、あづまや。


 心におかしきところ

 女は、自分よ、(男の)吾妻か。


 言の戯れと言の心
 「屋…家…言の心は女」「まろ…自称の代名詞…自分自身…自我」「まろや…丸太柱草葺き屋根の小屋…自分自身よ」「や…詠嘆の意を表す…疑問の意を表す…反語の意を表す」「あづまや…東屋…草葺きの壁のない小屋…吾妻や…(男の)吾妻か」。



 催馬楽の「東屋」を、同じ「聞き耳」で聞きましょう。


 東屋の、まやのあまりの、その雨そそぎ、われ立ち濡れぬ、とのど開かせ、かすがひも、とざしもあらばこそ、その殿戸、われささめ、おし開いて来ませ、われやひとづま。


 清げな姿

 「東屋の、真屋の軒端の、その雨滴そそぎ、我は立ち濡れた、殿戸を開いておくれ」

 「かすがいも、戸閉まりも、しているなら、その殿の戸、わたしは閉めるでしょうが・していない、押し開いていらっしやい、わたしは人の妻か・君の妻」。


 心におかしきところ

 吾妻ではないの、間やの余りの、そのお雨そそぎ、わたしは立ち濡れ寝る、との門開いてよ、かすがいも、戸ざしもあるじゃなし、そのこの門、わたしが閉ざすかしら、おし開いていらっしゃい、わたしは人の妻か・君の妻よ。

 

 「屋…女」「殿……女」「戸…と…門…女」「ま…間…女」「あまり…屋根の余り…軒…有り余れるところ…おとこ」「その雨…軒の雨滴…おとこ雨」「ぬ…完了…してしまった…寝」「ささめ…閉ざすでしょう…ささ女…よき女」「さ…美称」「め…女」「や…疑問の意を表す…反語の意を表す」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
 
 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。