中国絵画を目当てに東洋館へ。
その前に5階の陶磁器につかまってしまいました。
●5階10室【朝鮮の陶磁】2019.10.22~2020.4.14
今回は鮮やかな彩色の磁気とはまた違った、素朴絵のような絵付けの陶磁器が集まっていました。
東洋的な、岸田劉生の言葉を借りれば、”間の抜けた” 感じがなんともよくて、お持ち帰りしたいくらい。
原三国時代から朝鮮時代までの陶磁の流れをメモ:
◆朝鮮半島では原三国時代に楽浪の影響を受けて製陶技術が発達。それまでの赤焼きから、窯で灰色に焼き上げた土器が登場する。
◆三国時代(4世紀~676)には陶質土器に発展。各地で覇を競う有力者の成長と相俟って、地域ごとに多様な形態の土器が作られるようになる。
◆6世紀に登場した印花文土器や緑釉陶器は、統一新羅時代(676~935)に完成される。
◆高麗時代(918~1392)には中国の影響で青磁の生産が始まり、独自の様式が完成。主に宮廷で使用される。
「青磁鉄地掻落参葉文水注」高麗12世紀
「青磁鉄地象嵌草葉文瓶」高麗12~13世紀
◆朝鮮時代になると粉青沙器(主に灰色の胎に、白土で印花を押して象嵌を表したり、掻き落としで模様を描いたりして装飾を施した器)や白磁など、多様な陶磁器が焼かれるようになる。
「粉青鉄絵魚文瓶」朝鮮15~16世紀、「粉青鉄絵魚文俵壺」朝鮮15~16世紀
民窯とのことで、魚の線描きが大胆で楽しい。魚のモチーフは、個人的に東南アジアでお土産ものやで見かけると、なにかと買ってしまうやつ。
◆次第に青磁より白磁の生産のほうが主流になってくる。両班に好まれ、15世紀に設けられた官営の窯で上質の白磁が作られるようになる。
左「白磁皿」朝鮮15~16世紀、右「白磁面取壺」朝鮮18世紀
韓流ドラマの両班の部屋にありそうな上品な感じ。時代が進むにつれて肌理こまやかになっているのが印象的。
15世紀後半ごろには、鉄絵、青花などの下絵付けが焼かれるようになる。
「鉄砂雲竜文壺」朝鮮17世紀
民画的なおおらかさ。
青花は中国、日本のものも展示されている。
中国・明の虎が愛らしい。しかも5客セット♡。
「青花虎文皿」景徳鎮皿 明17世紀
少しずつ顔が違う手描きの良さ。いいにっこり具合。
かわいい虎にニコニコしていたら、日本のうさぎの皿に射貫かれてしまった(!)。
「染付吹墨亭兎図皿」伊万里17世紀
月から飛び出したような宇宙ウサギが、UFOに遭遇している?。ナルト雲も愛らしい。吹き付けた墨が青く発色し、夜空に見える。
見返り具合が最高♡。
UFOかと思ったのは私だけか。。英題では「Dish with a Rabbit and Pavilions」。「亭」でしたか。もの知らずで、最近は英題に教えられることが時々ある。
東屋からみたウサギに秋の風情を感じたという情趣なのかな。兎、雲、亭を同じ大きさでこう配置するところがすてき。和菓子、漬物、お団子…、真ん中に置くものによってさらにファンタジーが広がりそう。
朝鮮の皿も同じ路線の楽しさ。
「青花山水魚文皿」朝鮮19世紀
「青花雲鶴文皿」朝鮮19世紀
顔♡
周りを雲で埋め尽くすところが、余白で語る日本と少しちがうのかな。
「青花蓮池魚文皿」朝鮮19世紀
これもびっちり蓮を描きこんでいるのだけれど、魚が天地逆で、不思議な浮遊感がある。
(3匹の三すくみ状態?)
青花の壺も吉祥画題。(朝鮮19世紀)
この鶴と亀は、妙に風格をみなぎらせている。
「青花花鳥文双耳壺」朝鮮19世紀
手馴れた筆致、濃淡の効果にも留意している。
頸の立ち上がりが高い壺は、朝鮮王朝の官窯で焼かれた白磁や青花によくみられる。官窯では専門画員を招いて絵付けを行っていたと、解説にある。
取っ手に、うなぎ犬のような霊獣
今回の陶磁器は、中国、日本、朝鮮と、なんともかわいくおおらかな系譜のものがそろっていました。
4階の中国書画へつづく。