先日、国立新美術館の日展を見に行きました。
日本画の今年の特選は、動物の絵が多い印象でした。
そのなかでとくに印象に残ったのが、こちらの羊です。
前川和之「結びつき」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/7e/2f48ff49dec45e06dca7ed55efe13e26.jpg?1732423524)
介護が必要になった未年のお母さまのもとに、作家を含む子供たちが戻ってきて、新たな結びつきがうまれたと。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/f6/bb15ac3d49af8c8bc7de29532a4b49e8.jpg?1732423525)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/f6/bb15ac3d49af8c8bc7de29532a4b49e8.jpg?1732423525)
老いていく親を守り、心配しながらも、なすすべもなく老いは進んでいく。
私も先日の父親からの電話でずっと気になっていることがあり、この羊たちに自分を見るような気になってしまったのです。
川田恭子「予感」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/3e/6f9719cb3bcae467366afdc1872caef5.jpg?1732423525)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/3e/6f9719cb3bcae467366afdc1872caef5.jpg?1732423525)
黄色に惹かれて近づいたのです。
すると、目がコレ…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/5f/393648dc67648f77924203671b8fc157.jpg?1732423525)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/5f/393648dc67648f77924203671b8fc157.jpg?1732423525)
ビビッと感応していますよね。
なんの「予感」なのだろう。
地底のマグマからなにかを感じ取ったのだったら…。遅かれ早かれ、Xdayが迫っているのは間違いないのです。
このあとも何度か、人智をはるかに超えた自然を見せられ、畏怖の念を呼び起こされました。
松崎良太「桜島」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/a5/581b7c0585f29e0e62ccdc4276def533.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/b7/ff91d924b7e93763a05d4fa1e29014ca.jpg?1732423596)
遺作とあります。
陽をさえぎり、真っ暗にしてしまう噴煙。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/9f/f9e4fd6eca6fb5a3c3fccf1e7cfaaacd.jpg)
凄いとしか言葉が見つからないのですが、陽の隙間に描かれた船に、一縷の共生を感じました。
こちらもまさに、地球のドラマ。
古澤洋子「地球のドラマⅡ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/82/83458a8ab6ca7364a03c2fc89efc6e64.jpg?1732423596)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/82/83458a8ab6ca7364a03c2fc89efc6e64.jpg?1732423596)
地球規模のスケールが凄すぎる。(凄いしかいえない語彙のなさ…)
雨柱、わきたつ積乱雲。雷鳴。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/fd/622df4b4db5a65b4c81337d15bb0d399.jpg)
気象だけでなく、地のパワーにも目を見張りました。
そこには町が。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/19/45e56fd599472b3433125c7a4e79e409.jpg?1732423596)
凄いのだけれど、これほどの規模の現象を、このようにひいて俯瞰させられると、果てもない宇宙規模の出来事ではなく、地球のうえでの気象の出来事。その下にいるのが自分たちだと、ふっと足元の地球を感じたりもするのでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/19/45e56fd599472b3433125c7a4e79e409.jpg?1732423596)
凄いのだけれど、これほどの規模の現象を、このようにひいて俯瞰させられると、果てもない宇宙規模の出来事ではなく、地球のうえでの気象の出来事。その下にいるのが自分たちだと、ふっと足元の地球を感じたりもするのでした。
そうすると月は、地球と宇宙の間の存在となるのでしょうか。
宇宙だけれど、地球とセット。私たちの身体や潮の満ち引きに切っても切り離せない。
林秀樹「月の下風」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/8c/8f5aaaa5dc38c0c95cf80284370a11b0.jpg?1732434651)
ドイツ表現派みたいな、ざわめく気。
月の引力なのか、大気の動きか、流されると言うよりも、引っ張られているよう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/76/778915d11b210d2f92b7ab87663897d6.jpg?1732434651)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/5c/3300bccba1c76dfb7cd7a06bf6a6710c.jpg?1732434650)
一転して、今回は静かな世界に救われることもありました。
水野収「デイブレイク」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/4b/b367a5eebeea3e0d74077964184c8861.jpg?1732423673)
えもいわれぬ色調に、見入るばかり。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b2/14b11b6f2a4ab5028a9a02f48f3ea6f5.jpg?1732423673)
インドのマハーボディ寺院。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b2/14b11b6f2a4ab5028a9a02f48f3ea6f5.jpg?1732423673)
インドのマハーボディ寺院。
ブッダが悟りを得たという瞬間は、どのような景色に包まれていたかをイメージして周りの村を写生させてもらったとのこと。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/1b/12899f1e661e4c136e60ab0dc9801e9f.jpg?1732423673)
悟りといっても、荘厳に描くとかいうことでなく、森からは鳥の群れが飛び立ち、木々の隙間から寺院が見え、ただただ村の風景が静かに。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/1b/12899f1e661e4c136e60ab0dc9801e9f.jpg?1732423673)
悟りといっても、荘厳に描くとかいうことでなく、森からは鳥の群れが飛び立ち、木々の隙間から寺院が見え、ただただ村の風景が静かに。
だからかなのか、見ていると、心の中にこんなにきれいな色調が広がって、心地よいです。
今この瞬間は、たとえ私でも私のなかみをスキャンしたらとってもきれいかも?!。
改めて、そんな効果がある絵がときどきあることを実感します。
加藤晋「凍える月」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/cb/d097e302732d45c800d0909f7cd0fc0f.jpg?1732423805)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/cb/d097e302732d45c800d0909f7cd0fc0f.jpg?1732423805)
あまりにきれいで声がでそうでした。
アラスカで一年過ごしたことがあるとのこと。
マイナス40度まで凍り付いたら、空気が極限まで澄みきって、こんなにきれいに月の光を通すのでしょうか?。
一枝一枝がとてもきれいな白に輝くのでしょうか?![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/de/63d6f30b024ef8844b2b74b0ea0f5518.jpg?1732440107)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/53/4aaaf0a2d77e2ef616c4f69f4dcb3213.jpg?1732440110)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/de/63d6f30b024ef8844b2b74b0ea0f5518.jpg?1732440107)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/53/4aaaf0a2d77e2ef616c4f69f4dcb3213.jpg?1732440110)
至福の埋没。
まるでサンゴの海にただよってるような気にもなりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/cd/c87b3a83f2752978f0e926e3dc30bf27.jpg?1732440108)
こんなに凍り付いても、どこか温かみを感じるのは、作家の人がらなのでしょうか。
小さくあの生きものたちが紛れていたのを発見したときは、とても嬉しかったです。
ひと一人を大きく包む日展の絵の大きさに感謝。
しかし、こんなに大きな面積にこんなに描き続けられることが、どうしても信じられません。
この後も、そんな信じられない絵にいくつか出会い、絵に満たされる体感を満喫しました。
池内璋美「静穏」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/e4/b5a24bb39821d166c410b64ffd95eb76.jpg?1732423673)
風の振動さえ水面を動かさないくらいに静か。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/0c/de028233c85b7d999810b4af03c6436d.jpg?1732440145)
久米伴香「風光る」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/8d/e7ab736a1a142be246b5dcc66b6e0279.jpg?1732423765)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/b6/5b75984a3f7e0d13f5bf0765cb14e8e5.jpg?1732423765)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/8d/e7ab736a1a142be246b5dcc66b6e0279.jpg?1732423765)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/b6/5b75984a3f7e0d13f5bf0765cb14e8e5.jpg?1732423765)
岩田國佑「田園」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/61/e190499af3699feff19b1440d7513d95.jpg?1732423768)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/61/e190499af3699feff19b1440d7513d95.jpg?1732423768)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/7b/a4caa88395473b3551f532c14f27fc6c.jpg?1732440176)
絵のなかに小さな発見や小さな喜びに出会うときは、嬉しくなります。
山崎隆夫「悠々」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/ee/6ab730a9d2bd819d09263a7bff90ef3e.jpg?1732423675)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/ee/6ab730a9d2bd819d09263a7bff90ef3e.jpg?1732423675)
花がわくわくしている感じがして、とてもかわいいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/32/1433bccd102fbdd9f296f13c9cfd85f8.jpg?1732423765)
鯉も赤い小さな魚も、マイペースでまさに悠々。
市橋節子「春の傍」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/23/e818f41c33ecb236617244832acb5572.jpg?1732423768)
黄色くともる様子や白いわたぼうしが、ほっこり喜ばしいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/23/e818f41c33ecb236617244832acb5572.jpg?1732423768)
黄色くともる様子や白いわたぼうしが、ほっこり喜ばしいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/62/0048d91b3ff913af982b28b7e56e69b1.jpg?1732423805)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/d8/a46affb911f09b0b3904d7bc0140cb6c.jpg?1732423805)
中出信昭「浄蓮」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/80/bad4875f806d3c146b8d7e5d66487e2a.jpg?1732423593)
ほの暗いなかに、花がまるで螺鈿のように輝いていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/ef/63e750668b9a31df3a9670fa45098641.jpg?1732434706)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/47/b1dcd42b4d887756c3b392b02cff9f15.jpg?1732423594)
そのあいまには、平等院鳳凰堂の雪中供養菩薩像のように舞っていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/c6/0f574d3fef938e0d6f3527eda84ba27f.jpg)
佐藤和歌子「ソロモンの指輪」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/49/efdc2f0f431c960bacd3d5898e88344c.jpg?1732423527)
ソロモン王は10の指輪を用いて、魔人を使役し、動物と会話し、善悪を正しく判断したということです。
この三頭だての動物はハイエナかな。
象に乗る普賢菩薩像を思い出しました。
下から見上げると、墨や胡粉のうえに、金がきらめてとてもきれいでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/fb/5147ff848d552bbe55c7722fc267b3a1.jpg?1732423527)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/fb/5147ff848d552bbe55c7722fc267b3a1.jpg?1732423527)
こんな心持になるまで生きててみたいと思う絵にも出会います。
川崎鈴彦「池畔の桜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/7c/9f7282577c0b1c469b3e8215a5927ff8.jpg?1732423675)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/0a/7ad733b958ba1470020fa097033261b3.jpg?1732423675)
99歳だそうです。
うまく言えませんが、毎年いいなあと思います。
昔は私は別にそんな長生きしなくても…と思っていましたが、幾人もの90、100を超える日本画家の絵を見るようになってから、この境地になってみたいと思うようになりました。
そのころにも、元気に日展に行ける脚力を保たなければ。
結局今年も疲れてしまって、洋画や工芸は見られませんでしたが。