情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

非論理的な論理学者 ゲーデル

2020-09-22 09:24:48 | 数学
ピエール・カスー=ノゲス(新谷昌宏訳)
『ゲーデルの悪霊たちー論理学と狂気』、みすず書房 (2020.7)
という大著が発売されました。
ゲーデルは、不完全性定理を証明したことで有名です。
アリストテレス以来の偉大な論理学者と言われています。
1906年 チェコ生まれ
1930年 不完全性定理を証明
1940年 ヒトラーのユダヤ人排斥運動から逃れるためアメリカに移住
     プリンストン高等研究所に招かれる
1978年  死去
     
私たちは、論理学者に対して正確無比な考え方をする学者だというイメージを持っています。

ゲーデルは「連続体仮説」の証明に挑みましたが、結局挫折しました。
彼は、実数の概念に対して何の疑いも持ちませんでした。
論理学者ゲーデルがこの事実に気が付かなかったのは極めて不可解です。

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連続体濃度は実数とは独立な概念である

2020-07-15 10:56:23 | 数学

実数の集合の濃度は、連続体濃度と呼ばれcで表示されます。
一方、実数の集合とは全く異質な無限記号列集合の濃度もcになるので、連続体濃度は実数の集合とは独立な概念であることが分かります。
以下で、そのことを証明します。

以前のブログで対角線論法には多くの欠陥があることを指摘しましたが、以下では対角線論法が正しいという仮定のもとで議論します。

(定義)有限個の基本記号を無限個並べたものを無限記号列と名付けます。
一例として2つの基本記号 A および B を任意の配列で無限個並べた無限記号列 S を次式で表します。
S = s1 s2s3....、但し、si= AまたはB。
このとき、次の定理が成り立ちます。
(定理1)
  すべての無限記号列 Sを要素とする無限集合Σの濃度|Σ|は非可算です。
  ℵ0 <|Σ|  (1)、ℵ0は自然数の濃度。
(証明)
  無限集合Σに対して対角線論法を適用します。

(定理2)
  無限集合Σの濃度|Σ|は、すべての実数の集合の濃度cに等しい。
  |Σ|= c  (2)
(証明)
  無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になるので、無限記号列と無限小数とが1対1に対応するからです。

(定理3)
  無限小数は、無限記号列の特別なものです。
(証明)
  無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になります。

(定理4)
  無限集合Σは、2値論理演算のもとで加法群になります。
(証明)自明

(定理5)
  無限集合Σに含まれる記号列の中で循環する記号列をすべて含む集合を
Σrep とすると、この循環型無限記号列集合の濃度は可算です。
|Σrep|= ℵ0
(証明)
  周期1の記号列は2つ、周期2の記号列は4つ、以下同様なので、それらに自然数を対応させることができます。

si = f (i)なる関数 f (i) があるとき、その無限記号列を定義可能な無限記号列と名付けます。それ以外の無限記号列を定義不可能な無限記号列と名付けます。
循環型無限記号列は、定義可能な無限記号列です。
有理数の集合は、循環型無限記号列集合の特別なものです。

定義不可能な無限記号列そのものを数学的命題のなかで用いることはできません。
その意味で、定義不可能な無限記号列は非論理的概念です。
これは、定義不可能な無限小数が非論理的概念であることと同様です。

(定理6)
  Σの濃度|Σ|に対して次のいずれかが成り立つとしても矛盾は生じません。
  |Σ|< c  (3)
  |Σ|= c  (4)
  |Σ|> c  (5)
(証明)
  Σに含まれる定義不可能な無限記号列が非論理的概念なので、(3)~(5)のいずれもその真偽性を証明できないからです。
言い換えれば、(3)~(5)のいずれもそれが正しいとしても、あるいは、誤りであるとしても矛盾は生じないからです。

(定理7)
  ℵ0 <|Σ|<c  (6)
を否定することも肯定することもできません。
言い換えると、無限記号列の濃度|Σ|は連続体仮説の反例になり得ます。
(証明)
  (6)式の左半分は対角線論法が正しいという仮定のもので得られた定理(1)の(1)式によります。
一方、(6)式の右半分は定義不可能な無限記号列が非論理的概念であることを用いた(3)式によります。

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数学は完璧な精密科学か?

2019-06-07 14:32:43 | 数学
数学は精密科学の王とされています。
確かにその厳密性、論理性を見ると誰もが納得できます。

しかし、数学のすべての分野がそうであるとは限りません。
集合論の歴史を見ればそのことが分かります。
集合論の誕生から様々なパラドックスが指摘され、その度に対応策が講じられて来ました。
クロネッカーらの直感主義者は、集合論の創始者であるカントールを厳しく糾弾して、カントールをノイローゼにしました。

20世紀数学の巨峰ヒルベルトは数学の価値は自由性にあるとしてカントールを擁護しました。
現代の数学者で集合論に疑義を挟む人はいないでしょう。
万が一、そのような主張をする数学者がいれば”色物数学者”のレッテルを貼られることは必至です。

しかし、当ブログの「非論理的な無限小数」「非論理的な対角線論法」において、無限小数には定義不能な無限小数が存在し、そのことが実数の非可算濃度の要因になっていることを示しています。

結局、集合論には不完全なところがあり、数学は完璧な精密科学とは言えないことが分かります。

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非論理的な対角線論法

2019-06-07 09:13:09 | 数学
カントールの対角線論法は、自然数の濃度より実数の濃度の方が大きいことを証明する手段として今でも教科書や参考書に載っています。

しかし、この証明法には数学を専門にしない人を煙に巻くようなところがあるので、ネットを見ると多くの反論や疑問があります。

東大名誉教授で哲学者の野矢茂樹による「無限論の教室」(講談社現代新書)は、この対角線論法に対する疑問を中心に無限にかかわる話題を取り上げています。
大学での講義をまとめたもので、初心者にも無限の不思議さをさまざまな角度から取り上げています。
語り口も軽妙でとても読みやすくお薦めです。

当ブログも「非論理的な無限小数」について書きました。
結論は、「数字がランダムに続く無限小数は、非論理的である」ということです。

つまり、無限小数は、次の異質な集合に分けられます:
無限小数={定義可能な無限小数} ∪ {定義不能な無限小数}

カントールの対角線論法には非論理的な定義不能な無限小数も含まれています。
これは取りも直さず対角線論法自体も非論理的であることを示しています。
当然、その結果得られる連続体濃度非可算)も非論理的な概念になります。

因みに、定義可能な無限小数の集合の濃度は可算になることがゲーデル数を使うことにより容易に証明できます。
言い換えると、実数が非可算濃度になる原因は、定義不能な無限小数の存在にあるのです。
定義不能な無限小数を一つの確定した概念として認めて、それらを1個、2個と数えることにどのような根拠があるのでしょうか。
そのようなことが精密科学の王とされる数学で許されることなのでしょうか。

更に、実数が定義可能な無限小数だけかなるとしても何ら矛盾は生じません。
何故なら、定義不能な無限小数そのものを数学的論証に取り上げること自体が不可能だからです。

以上の分析は、連続体仮設の反例に応用できます。

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