情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

『ロジ・コミックス』 論理学者ラッセルの執念と狂気

2020-10-23 17:09:17 | 数学
ドクシアディス他『ロジ・コミックス-ラッセルとめぐる論理哲学入門』、
筑摩書房(2015)
という劇画風のかなり風変わりなコミックスがあります。

バートランド・ラッセルの伝記を兼ねた論理学と集合論の歴史です。
絵もきれいで非常に面白いストーリーになっています。

ラッセルと彼の師であるホワイトヘッドの共著『プリンキピア・マテマティカ』で数学の基礎を論理学で構築しました。

この中で、ラッセルは”1+1=2”を証明するために何と362頁も費やしたそうです!!!
何という執念でしょうか。
ここまで来ると、もはや狂気に近いものを感じます。
このようなイギリス固有の不屈の精神を”ジョンブル魂”というそうです。

アリストテレス以来の論理学者とされるゲーデルの「狂気」も納得できるような気がします。



対角線論法の反例 対角線論法自体のパラドックス

2020-10-21 09:03:43 | 数学
(1)カントールの対角線論法は、0と1を含まない開区間(0,1)に含まれる無限小数の濃度に対して適用されます。

便宜上、無限小数を2進表示します。

(2)対角線論法は自然数と区間内の無限小数が1対1に対応すると仮定し、その対応表を作ります。

(3)対応表内の無限小数に対角線論法を適用して得られる無限小数が”.000・・・になる場合を考えます。
もちろん、この可能性を排除することはできません。

(4)この無限小数”.000・・・は、0に等しいので開区間(0,1)に含まれません。

(5)0に等しい無限小数”.000・・・”は開区間(0,1)の定義により対応表にはもとから含まれていません。

(6)対応表に含まれていない無限小数”.000・・・が出てきても矛盾は生じません

従って、前述のような場合には対角線論法自体が成り立ちません

(7)仮に無限小数”.000・・・”が対応表に含まれているとすると、開区間の定義によりこの値は正になります:
.000・・・>0!!!
これは明らかにパラドックスです。

結局、対角線論法にはこのような欠陥もあるのです。
対角線論法の本質的な欠陥についてはこちらをご覧ください。


依存は還元を意味しない 心と脳の関係

2020-10-18 09:07:36 | 情報と物質の科学哲学
心は脳という物質に依存しています。
物質は物理法則に従います。
従って、心は物理法則に従うというのが物理主義です。

しかし、依存という関係は必ずしも完全な対応関係を意味しません。
例えば、計算回路は物質で出来ていますが、その機能は物理法則に還元出来ません。
その理由は、計算規則が物理法則に還元できないからです。
設計者が計算法則を実現するように回路を作ることによって計算機能を実現できるのです。

脳神経回路には情報処理機能があります。
この機能は、物理法則に還元出来ません。
心に関する現象は、脳神経回路の情報処理機能により実現されています。
この機能が物理法則に還元できないので、心の現象も物理法則に還元出来ません。

物理主義の最大の過ちは脳神経回路の情報処理機能を無視していることにあります。


クオリアは入力物質情報の解読結果である

2020-10-15 09:19:13 | 情報と物質の科学哲学
クオリアの謎は未だに完全には解けていません。
当ブログでもクオリアに関する記事をたびたび取り上げました。
また、クオリアに対する仮説を提案しました。
今回は、シャノンの通信モデルを参考にした補足説明です。

・感覚受容器に外部から物質が入力します。
・受容器は、入力物質に関する情報を創発します。
・受容器は、その情報を符号化したパルスを送信します。
・感覚野は、このパルスを受信し復号化して解読します。
・その解読結果は、クオリアとなって意識されます。

入力物質によってどのような行動を取るかは極めて重要なことです。
種類の異なる受容器が送信するパルスはどれも同一形式のパルスです。
それらのパルスが担う情報を識別することは不可欠です。
その解読結果であるクオリアは動物の生存にとって重要なのです。
このように捉えるとクオリアの不思議さが解消できるのではないでしょうか。

動物は、膨大な時間をかけた進化の過程でこの不思議な機能を偶然に獲得したのです。