情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

神経系統による物質・エネルギー・情報の分類

2021-02-27 10:22:20 | 情報と物質の科学哲学
神経系統は、物質、エネルギー、情報の分類を実行しています。

1.物質の分類
感覚受容器には外部からの入力物質を分類する機能があります。
(嗅覚器)入力分子の分類
(味覚器)入力分子の分類
(触覚器)圧力強度の分類
(視覚器)光の波長の分類
(聴覚器)音の波長の分類

これらの受容器は、入力物質に関する情報を電気パルスに担わせて脳回路に送ります。
このとき注意すべきは各受容器からのパルスは全く同一形式のものなので、パルス自体を調べてもどの受容器からのものであるかを区別することが出来ないということです。

ところが、これらのパルスが各受容器に対応する感覚野に入ると、それぞれのクオリアが創発されて受容器からの情報を識別できるのです。

生物進化の過程を見ると初めに嗅覚や触覚が誕生したので受容器による物質の分類機能が次に述べる情報の分類機能より先に誕生したのです。

下等動物の中には嗅覚や触覚のみで生活している例もあります。

なお、物質の分類実現には計算や情報処理の類は不要です。

2.エネルギーの分類
ヴェーバー・フェヒナーの法則によると、外部入力の刺激の大きさ、すなわち、エネルギーの大きさの対数に比例して感覚の大きさが変わります。
この事実は、クオリアには外部刺激のエネルギーを分類する機能があることを証明しています。

3.情報の分類
外部にある物体のパターン認識は、情報の分類になります。
この場合、計算や情報処理の類が必要になります。

情報の分類機能は、神経回路の複雑な計算によってはじめて可能となります。

『トポロジカル物質とは何か-最新・物質科学入門』

2021-02-22 10:06:59 | 物理学・量子力学
長谷川修司、『トポロジカル物質とは何か-最新・物質科学入門』、
ブルーバックスB-2162(2021.1)、が発売されました。

数多くの不思議な性質を持つ物質について興味深く紹介されています。
読んでいて興奮します。
学生時代にこのような研究分野があることを知ったなら挑戦したいと思いました。

記事の中で特に面白かったのは、たった1個の原子の層からなる物質グラフェンです。
身近な物質グラファイトから粘着テープを使って単離されたそうです。
粘着テープを張り付けて引き剥がす作業を何回も繰り返して最後にたった1個の炭素原子の層からなる2次元物質グラフェンを作り出したというのです。

グラフェンの発明者ガイムとノボセロフは、2010年のノーベル物理学賞を受賞しました。
ガイム教授は、2000年に非常に強い磁場の中でカエルを浮遊させることで「イグノーベル賞」を受賞しています。

グラフェンの中の自由電子は、「質量ゼロのディラック電子」と呼ばれディラック方程式で表現されます。

ところで、同書の”はじめに”p.4に著者の意外な主張があるので引用します:

生命現象や意識の本質が、物質のまだ発見されていない隠れた性質に起因しているのではないかと考えても不思議ではないでしょう。
本書のテーマである「物質のトポロジカルな性質」も、人類がつい最近気づいたものなので、実は、その他にももっと私たちが知らない隠れた性質が物質に備わっていて、それらが生命や意識の本質と深く関わっているのかもしれないと想像しているのは私だけではない筈です。
物質科学の究極の研究テーマはそのあたりにあると考えています。
(引用終わり)

この主張は、物理法則ですべての現象を説明できる筈だという物理主義そのものです。
しかし、意識という概念を物理量で表すことは原理的に不可能です。
何故なら、物質と意識とはカテゴリーがまったく違うからです。

『マリス博士の奇想天外な人生』

2021-02-15 14:34:06 | その他
キャリー・マリス(福岡伸一訳)『マリス博士の奇想天外な人生』、ハヤカワ文庫NF290(2020.10)

新型コロナに関連する技術がPCR検査法です。
マリス博士は、その発明者として1993年にノーベル化学賞を受賞しました。

そのマリス博士の自伝です。
一読すると、マリス博士はノーベル賞受賞者のイメージから程遠い破天荒な人物であることが分かります。

PCR検査法を意外なアイディアで開発した経緯も述べています。
1992年に日本国際賞を受賞するために来日しました。
そのとき美智子様と会話されたときの内容も面白いものです。

ノーベル賞授賞式でのエピソードも破天荒なものです。

マリス博士の自伝には多くの警句がありますが、その中で特に印象に残ったものを紹介します。

p.102 ”お役所仕事が強力なのは、賢くないかわりに頑迷さを備えているからである。”

訳者の福岡伸一は、『生物と無生物のあいだ』、『動的平衡』などの著者としても有名です。

奇妙な夢「専門書」

2021-02-13 11:29:38 | 奇妙な夢
「複合技術の研究」という専門書の夢を見ました。
難しい内容のものですが、活字自体は明瞭に読めます。
それが何ページにも亘って読めるのです。
文章も違和感のないものです。
自分の専門分野の本ではありません。
翌日、ネットで同様なタイトルの本を探しましたが見つかりませんでした。

記憶の中の何かが取捨選択され編集されてこのような夢になったのでしょうか。
実に不思議です。

クオリアは量的情報の認知結果

2021-02-12 09:45:40 | 情報と物質の科学哲学
感覚受容器への物理的刺激と感覚との間にはヴェーバー・フェヒナーの法則が成り立ちます。
この法則は、感覚(クオリア)の大きさが感覚受容器への物理的刺激(物理量)の対数に比例するというものです。
この法則は、精神物理学(心理物理学)という学問で知られています。

感覚受容器は、外部からの物理量を情報に変換して神経パルスに担わせる機能を持ちます。
この時の情報は量的情報と名付けるものです。
クオリアは、この量的情報を感覚野が認知した結果創発されるものです。

哲学者は、クオリアを神秘なものとします。
しかし、クオリアを量的情報の認知結果と考えればクオリアの意義が明白になるのではないでしょうか。