情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

物理学者の情報概念は量子ビットかエントロピーだけ

2021-01-29 09:41:57 | 情報と物質の科学哲学
ブラックホールに関して「情報損失問題」というのがあります。
ブラックホールからホーキング放射が出ることに関係しています。

量子のエネルギーやその他の物理量はすべて離散的なものなので、それをビット表示したものを情報と呼んでいます。
ですから、一般の人が考える情報概念とは全く異質なものです。

更に、物理学者に不可欠な測定器が創発する情報概念とも無関係です。
奇妙なことに物理学者は測定値が情報の一種であることに無関心なのです。

物理学者の頭の中にある情報概念は、エントロピーか量子ビットだけです。
量子ビットで表示される量子情報は、量子コンピューターや量子通信などにおいて重要な役割を果たしています。

最近の宇宙論では量子宇宙というものが話題になっています。
これは、一般相対論と量子論を組み合わせた量子重力という概念で宇宙の仕組みを解明しようというものです。

最近の宇宙論は話題満載でとても面白いです。
銀河同士の衝突をスパコンでシミュレートする実験も報告されています。
一体どれくらい多くの連立方程式を立てているのでしょうか。


2つの異質な情報概念

2021-01-27 09:39:03 | 情報と物質の科学哲学
情報は、現代科学に不可欠な概念です。

情報概念は、2つの異質な種類に分けられます。

(1)環境に関する情報概念
カンブリア紀に感覚器を持つ動物が大量に誕生しました。
これらの動物は、餌や外敵などに関する情報を得ることが必要です。
そのために環境からの光や音などを感覚器に取り込み脳内部で情報化したものをパターン認識します。
その結果を利用して行動します。

(2)通信に関する情報概念
同種の動物間では鳴き声などによる情報交換がなされます。
ヒトは、文字、記号、図形などを用いて情報交換をします。
これらの情報概念は歴史的にみるとごく最近発明されたものです。

アナログ温度計とディジタル温度計の本質的違い

2021-01-24 09:54:44 | 情報と物質の科学哲学
アナログ温度計とディジタル温度計には本質的な違いがあります。

(1)アナログ温度計による測定
赤い液の高さがどの目盛と一致しているかを人間が見て温度を測定します。
このとき温度計自体が温度の測定値を示していると錯覚している人がいます。
しかし、事実は違います。

温度の測定値は、次のような過程を経て人間の脳内部で決定されます。
温度計からの光が感覚受容器に入ります。
受容器に入った光は電気パルスに変換され視覚野に入ります。
神経回路網による情報処理により温度計の赤い液の高さがどの目盛と一致しているかが判定されます。
その結果が温度の測定値という情報として認識されるのです。
このように温度の測定値は脳内部で初めて生成されるのです。

(2)ディジタル温度計による測定
温度計内部の半導体装置により温度測定が実行されます。
測定値の情報が数値として液晶に表示されます。
このように温度の測定値はディジタル温度計内部で生成されるのです。
人間は、その数値を見て温度を認識するだけです。

古典物理学の時代には測定器の目盛を見て測定値を得ていました。
物理学者は、測定器自体が測定値を指示していると錯覚したのです。
物理学者は、脳の認知機能に関心がなかったからです。
測定値という情報が脳内部で生成されることに気付くはずはありません。

この傾向は近代の物理学者にも引き継がれて、量子論の観測問題の要因になったのです。




観測問題の「隠れた変数」

2021-01-23 09:36:01 | 情報と物質の科学哲学
量子論には隠れた変数は存在しないことが理論と実験で証明済みです。

しかし、観測問題には「隠れた変数」が存在することを証明します。

(1)観測者が猫の生死を判定する場合
観測とは、観測者が観測対象についての情報を得ることです。
シュレーディンガーの猫の場合、観測者が箱の窓から内部を覗いて猫の生死を判定します。
この判定は、観測者の脳内部で行われます。

脳神経回路の情報処理機能を用いて猫の生死に関して”生きている”、または、”死んでいる”という2値判定をします。

2値判定とは、観測内容を1または0のどちらであるかを決めることです。
言い換えると、2値判定は観測内容を2値情報に変換しているのです。
この過程で、2値情報が生成されています。
この2値情報が観測問題の「隠れた変数」になります。

脳神経回路の情報処理機能を物理法則で説明することは出来ません。
更に、この判定は脳の認知機能によるものであり主観的なものです。
この点に関しても物理学とは相容れません。

(2)測定器が猫の生死を判定する場合
先のブログのように猫の生死の判定という問題を箱内部の毒ガス分子の有無を測定器を用いて判定する問題に単純化します。

この測定器は、判定結果を2値情報として出力します。
この時点で毒ガス分子の”有”(猫は生きている)、または、”無”(猫は死んでいる)の判定は完了しています。
因みに、判定結果を観測者がいつ確認するかは観測問題と無関係です。

結局、測定器による場合にも2値情報という「隠れた変数」があることが分かります。

以上のように、観測問題には「隠れた変数」があるので量子論と矛盾します。
即ち、観測問題は擬似問題なのです。


物理学者のダブルスタンダード説明

2021-01-21 10:58:24 | 情報と物質の科学哲学
先のブログで説明したように測定器には一般の機械にない特異な性格があります。
それは、測定器が測定値という情報を出力するからです。
この情報という概念は、物理学にはありません。

ところが、奇妙なことに物理学者はこの事実を無視しています。
測定器も物質なのでその現象は物理法則で説明できるからです。

しかし、物理法則で説明できるのは測定器に関係する現象の物理量だけです。
測定器から出力される情報に関しては説明出来ません。
情報は物理量ではないからです。

物理学者は、頭の中で測定値という情報の意味を解釈します。
これが問題になるとは考えていません。

物理学者は、測定現象を物理量と測定値情報の解釈という相容れない二つの基準を用いて説明しているのです。
これは、物理学者らが測定現象をダブルスタンダードで説明していることを意味します。

物理学者による説明は、一見すると科学的であるとの印象を与えます。
しかし、前述した通り事実に反する説明なのでこれを詐欺説明と名付けます。

ノーベル賞受賞者であるペンローズやクリックは、量子論で脳や心の現象を説明できると主張しています。
しかし、前述のように測定器の現象でさえ物理法則だけでは説明できないのです。
従って、ペンローズらの主張は明らかに机上の空理空論です。