情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

情報のシステム依存性と非局所性

2019-04-30 19:46:48 | 情報と物質の科学哲学

情報はヒトが扱う特殊なものであると思われがちですが、情報概念の基本的要件(ブログ「情報概念の科学的定義」参照)を満たせば情報は機械にも実在します。

測定器が定義する測定値情報は、測定器の基準や性能に依存します。
このような状況を情報のシステム依存性と名付けます。

情報は、システム依存的存在(主観的存在の機械バージョン)です。
その点で情報概念は客観的な物質概念と本質的に違います。

認知科学に状況依存性という概念があります。
これは心理的なものです。
システム依存性は、状況依存性の機械バージョンです。

情報表現物質を測定器から切り離して観察すると情報を読取れません。
このような状況を情報の非局所性と名付けます。

情報は、システムおよびシステムが関わる対象にのみ存在します。
これらの性格は、物質の性格と根本的に違います。
物質は、他と無関係に存在する普遍的なものだからです。

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情報とは何か 情報概念の科学的定義

2019-04-30 17:03:46 | 情報と物質の科学哲学

科学の分野で情報概念が極めて曖昧に使われています。

そこで、「物質現象に情報が関係している」と言える必要十分条件は
次の4条件が満たされているときに限ることを提案します。

(1)物質現象として情報の定義と創発がなされている
(2)情報を表現する情報表現物質が生成されている
(3)情報の読取り機構がある
(4)読取り結果の利用がある

これらを情報概念の基本的要件と名付けます。
これは、情報概念の科学的定義と言えます。

情報表現物質の例をあげます:
測定器の出力
物質に描かれた文字、記号、設計図

遺伝情報という用語は物理学で使われますが、これは物理学者が遺伝子の仕組みを説明するために用いる便宜的なものです。

何故なら、遺伝子の作用は情報という用語を使わなくてもすべて物理法則だけで説明できるからです。

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測定器による情報の定義と創発

2019-04-30 16:01:24 | 情報と物質の科学哲学

測定器は、入力の物理量と基準物理量との比を情報として定義(創発)し、それを適当な物質で表現して生成(出力)します。
この出力を情報表現物質と名付けます。

情報表現物質は、抽象的な概念である情報を実体化したものと言えます。
情報表現物質が担う情報は単に物質に付随したものではなく本質的なものです。
何故なら、表現物質には任意性があるからです。

通信や記録に使われる記号は、情報表現物質の一種です。
神経回路網におけるパルスも情報表現物質の一種です。

光は、自然界における情報表現物質として解釈できます。
光は、時間軸と空間軸の情報を規定しているからです。

概念(この場合「情報」)に属する具体例を示して概念を定義するのを外延的定義と言います。
一方、公理的(天下り的)に定義するのを内包的定義と言います。

後のブログで説明するように情報にはシステム依存性があるので
情報の内包的定義は不可能です。

「情報とはパターンのことである」というよく見かける内包的定義には直ちに
「パターンとは何か」という疑問が生じます。
これに対しては
「秩序性あるいは組織性が見られるものである」
という回答が返されますが、これにも「秩序性とは何か」という疑問が続きます。
→ 無限後退
そもそも、秩序性や組織性いう概念はシステムに依存するのです。

測定値という情報は、測定器というシステムが定義したものです。
このシステムがあって初めて存在する概念です。

従って、情報概念はシステムを構成する物質の性質には還元できません。
この事実は、物理還元主義(物理主義)の限界を意味します。
→「情報概念を利用した物理還元主義破綻の証明」のブログで説明します。

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検出器とヒトの五感

2019-04-30 15:45:24 | 情報と物質の科学哲学

ヒトの五感にはそれぞれに特化した感覚受容器(入力物質の検出器)がありますが、
どの受容器の出力も同一形式の電気パルスです。
従って、これらのパルスから入力物質を特定することは出来ません。

それぞれの受容器の出力は、対応する脳の感覚野に接続されています。
感覚野が互いに独立していれば、ある意味で入力物質の違いに対処できるでしょう。
しかし、ヒトの脳のように感覚野同士が神経線維でつながっているときには入力物質の違いに対処できません。
何故なら、感覚野へのパルスはすべて同一形式だからです。

視覚野は、光受容器からのパルスの入力に対して神経網が反応します。
嗅覚野は、分子受容器からのパルスの入力に対して神経網が反応します。
この場合、これらの神経網には構造的な違いは全くありません。

構造的に同じ二つの神経網が同一形式のパルスからどのようにして入力物質の違いを読み取ることができるのでしょうか。
物理的には全く不可能なことです。
ヒトの脳は、このことをクオリアで実現しています。
進化の妙と言うしかありません。

検出器によって入力物質の物質的属性が抽象化され、その情報がパルスで運ばれます。
この情報を読取り、入力物質の物質的属性を何らかの意味で復元することを具象化と名付けます。

脳のクオリアは正にこの具象化を実現しているのです。

受容器は物質の検出器であり、感覚野は情報の検出器です。

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情報を定義して生成する検出器 感覚器(受容器)の本質

2019-04-30 10:32:31 | 情報と物質の科学哲学

検出器は、情報を定義して創発する最も簡単な機械です。

ガス検出器は、ガスが基準量より多いと緊急事態発生を意味する警報音を出力します。
この出力は一種類なので2値情報を出力しているのではありません。
しかし、
(1)出力がないときは”危険なし”という情報を暗に意味するので
(2)潜在的に2値情報を出力していると解釈できます。
この情報は、情報概念として最も原始的な性格を持ちます。
これを原情報と名付けます。

すると、次の拡張関係が成り立ちます。
 原情報 → 2値情報 → 多値情報 → アナログ情報

ガスを検出した検出器がパルスを出力し、その物質的作用で元栓が締まる制御装置を考えます。
このパルスは、制御装置に”情報を伝えている”と言う必要があるのでしょうか?
いいえ。
パルスが制御装置に与える作用はエネルギーという物理的作用に限られるからです。
敢て”情報を伝える”という言い方をする必要はないのです。

ここで、
(1)入力信号の大きさが検出器のしきい値を超えたら正のパルス
(2)超えなかったら負のパルス
それぞれ出力する検出器(しきい値素子)を考えます。
この検出器は、入力信号の大きさに関する2値情報の定義とそれを表現するパルスを生成します。
これが「機械による情報の定義と生成」の基本的形態です。

ここで、わざわざ情報の定義という表現を用いたのには極めて重要な意味があります。
検出器のしきい値は、検出器の都合により決められる恣意的な値であり、何ら客観的なものではありません。
検出器が生成する2値情報はその恣意的なしきい値によって決まるので、検出器が2値情報を定義するということに本質的な意味があるのです。

従って、この2値情報は検出器というシステムが定義するものであり、客観的な概念ではありません。
この性格を持つ情報をシステム依存的であると名付けます。

検出器の出力パルスは、入力信号と閾値との大小関係という2値情報を表現しています。
このような物質を情報表現物質と名付けます。

先のガス検出において特に注意すべきことは、出力パルスは検出された物質とは
全く無関係であることです。
このパルスは、
(1)検出器による”特定の物質を検出した”という情報化の代償として、
(2)検出された物質に関する一切の情報を失っています。
これを物理量の抽象化あるいは透明化と名付けます。

このことは自明ですが、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの受容器のように異なる入力物質に対して出力がすべて同一形式の神経パルスである場合には、極めて重要な意味を持つのです。

これらの抽象化(透明化)された神経パルスが神経回路網において別々のものとして
意識される理由は謎に包まれています。
この謎についての仮説を後のブログで提唱します。

生物進化の過程を見ると、
(1)まず検出器のような機能を持つ生物が出現し、
(2)その検出器が測定器のようなものに進化したと推測できます。

図式的には次のようになるでしょう:
物質検出(検出器)→ 信号化(感覚器)→ 情報化(神経回路)→ 意識化(神経回路)

最近、生物の進化と意識の起源との関係を詳細に論じた大著の邦訳が出ました:
トッド・E・ファインバーグ、ジョン・M・マラット(鈴木大地訳)
 『意識の進化的起源-カンブリア爆発で心は生まれた」-』、勁草書房、(2017)

意識という概念は非客観的なものであり、その定義も確立していません。
本書ではもっとも基盤的で感覚的な意識の本性と起源について説明しています。
そして、最初の脊椎動物が最初の意識を有していたと主張しています。
本書の議論は足が地に着いたものであり、意識を扱う哲学者の空理空論より
よほど説得力があります。

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