量子力学は、測定によって波動関数の瞬時収縮(波束の収縮)が起きるとしています。
この収縮はシュレーディンガー方程式に従わないので「波束の収縮問題」という難問になっています。
今回のブログでは、測定による波束の収縮という概念自体に根拠がない理由を示します。
(理由1)先のブログで示したことですが、測定器というマクロな物体に波動関数を適用することは出来ません。
測定器というマクロな物体が干渉縞などの波動性を持つ実験的裏付けが全くないからです。
(理由2)測定器は、物理量の測定値という情報を創発する器械です。しかし、量子力学には情報という概念がありません。従って、量子力学は測定器に関する現象を説明することは出来ません。
詳細は、ブログ「情報概念を利用した物理主義破綻の証明」をご覧ください。
以上述べた2つの理由により「波束の収縮問題」は擬似問題であることが分かります。
次に「観測問題」について検討します。
これは、測定器内部で粒子の波動関数と測定器の波動関数を重ね合わせることにより生じる難問です。
森田邦久『量子力学の哲学』、講談社現代新書2122(2011.9)、pp.85-87。
白井仁人、ほか『量子という謎』、勁草書房(2012.12)、pp.7-8。
この問題においても測定器内部でミクロの粒子の波動関数とマクロの測定器の波動関数を重ね合わせています。
しかし、この捉え方は前述の理由により間違っているのです。
従って、「観測問題」も擬似問題であることが分かります。