情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

測定器に波動関数は適用できない! 「波束の収縮問題」「観測問題」は擬似問題

2024-09-19 14:33:08 | 物理学・量子力学
量子力学は、測定によって波動関数の瞬時収縮(波束の収縮)が起きるとしています。
この収縮はシュレーディンガー方程式に従わないので「波束の収縮問題」という難問になっています。

今回のブログでは、測定による波束の収縮という概念自体に根拠がない理由を示します。

(理由1)先のブログで示したことですが、測定器というマクロな物体に波動関数を適用することは出来ません。
測定器というマクロな物体が干渉縞などの波動性を持つ実験的裏付けが全くないからです。

(理由2)測定器は、物理量の測定値という情報を創発する器械です。しかし、量子力学には情報という概念がありません。従って、量子力学は測定器に関する現象を説明することは出来ません。
詳細は、ブログ「情報概念を利用した物理主義破綻の証明」をご覧ください。

以上述べた2つの理由により「波束の収縮問題」は擬似問題であることが分かります。

次に「観測問題」について検討します。
これは、測定器内部で粒子の波動関数と測定器の波動関数を重ね合わせることにより生じる難問です。

森田邦久『量子力学の哲学』、講談社現代新書2122(2011.9)、pp.85-87。
白井仁人、ほか『量子という謎』、勁草書房(2012.12)、pp.7-8。

この問題においても測定器内部でミクロの粒子の波動関数とマクロの測定器の波動関数を重ね合わせています。
しかし、この捉え方は前述の理由により間違っているのです。

従って、「観測問題」も擬似問題であることが分かります。


2種類ある波束の収縮!

2024-09-12 15:24:10 | 物理学・量子力学
先のブログで測定をしなくても波束の収縮があることを指摘しました。
今回のブログでは別の観点から波束の収縮について考察します。

電子検出フィルムというのがあります。
(外村彰『量子力学への招待』、岩波講座、物理の世界(2001.11), pp.8-9)

フィルム上の電子を検出する分子の数をnとします。
この電子検出分子群の直前における波動関数は電子検出分子というごく狭い範囲にあるので波束として表現できます。

このときの波動関数は次式のようなn個の波束の重なりで与えられます。
ψ=ψ1+ψ2+・・・+ψn (1)

電子銃から電子を1個発射します。
この電子はシュレーディンガー方程式の波動関数ψで表現されます。
1個の電子は電子検出フィルム上のn個の検出分子のどれかに衝突します。

電子を検出した分子の番号を仮にpとします。
この電子が検出分子pに衝突する直前の波動関数はごく狭い範囲にあるので、電子の波動関数は波束ψpになります。
n個ある波束の中の一つψpがランダムに選択されたことを意味します。

このときの波動関数の変化を次式で表します。
ψ → ψp (2)
この式は、波動関数ψがψpに収縮したことを意味します。

しかし、このときの波束の収縮は通常の測定によるものとは違います。
何故なら、pの値は1~nの中のどれかという条件だけであり、その具体的な値を測定していないからです。

以上の議論から波束の収縮は次の2種類あることが分かります。
(A)測定による波束の収縮
(B)測定によらない波束の収縮

なお、量子力学における測定による波束の収縮(A)とは、測定直後のものを意味します。
一方、測定によらない波束の収縮(B)とは、電子が検出フィルムに衝突する直前のものを意味します。
この点でも、(A)と(B)とでは波束の収縮の意味が本質的に違います。

次に、(1)式の右辺にある波束の確率振幅を計算します。
n個の電子検出分子は互いに重なっていないので、(1)式の右辺にあるn個の波束も互いに重なっていません。これらの波束は複素関数であることを考慮するとn個の波束は互いに直交していることが分かります。

従って、(1)式について次の関係式を得ます。
ψの確率振幅=ψ1の確率振幅+ψ2の確率振幅+・・・+ψnの確率振幅  (3)
右辺の確率振幅は、電子検出分子の位置におけるψの確率振幅で与えられます。




波動関数はマクロな物体に適用できない!

2024-09-09 16:35:03 | 物理学・量子力学
波動関数は粒子性と波動性を併せ持つ対象に適用できる概念です。
粒子性は、例えば電子が物体に衝突したときに起こる現象です。
波動性は、干渉縞などで確認できます。

通常のマクロな物体は、波動性を持ちません。
通常のマクロな物体が干渉縞を起こす実験などありません。

ところが、理論家はマクロな物体に対しても平気で波動関数を適用します。
その端的な例が天才科学者フォン・ノイマンが「シュレーディンガーの猫」の装置に対して波動関数を用いたことです。
この装置は、言うまでもなくマクロな物体の集合です。

森田邦久『量子力学の哲学』、講談社現代新書2122(2011.9)の86~87ページでは、電子のスピン測定器というマクロな物体に対して状態ベクトル(波動関数)を適用しています。
これは、波動関数の間違った使い方です。

更に、電子の状態ベクトルと測定器の状態ベクトルを重ね合わせの関係で表現しています。
これも、波動関数をその適用範囲を超えて使った典型的な誤用例です。


kindle previewer3はWord文書の目次と相性が悪い

2024-09-09 15:35:58 | その他
『情報と物質の関係に基づく世界像』、『対角線論法の欠陥』という電子書籍をKindleで出版しています。

このうち「世界像」についてはときどき改訂版を出しています。
原稿はWordで書いています。

改訂版を作成した後Wordで内容を確認し、改定前の文書を削除しました。
そして、改訂版をkindle previewer3で開くと何と削除した文書が表示されるのです。
そのことが分かったのは、目次の部分が改訂版のものと違うからです。

Kindleヘルプに相談したところ、改訂版の目次を更新していないからだとの回答でした。
そこで、改訂版の目次を更新してkindle previewer3で開くとWordによる目次と一致しました。

Wordで作成した文書を修正した後に目次を更新する必要があることを全く知りませんでした。
kindle previewer3のおかげでいい勉強になりました。


波束の収縮は電子が物体に衝突するときに起きる現象(測定とは無関係)

2024-09-09 10:17:06 | 物理学・量子力学
量子力学によれば波束の収縮は測定により起きます。
しかし、先のブログで波束の収縮は測定しない場合にも起きることを示しました。

今回のブログでは波束の収縮は電子や光子などが物質に衝突するときに起きていることを示します。

1個の電子を金属板に向けて発射します。
この電子が金属板上の点Pに衝突したとします。
すると、金属板の点PからX線や熱放射が放射されます。

電子が点Pから離れた空間では波動関数は広い範囲にあります。
一方、電子が点Pに衝突する直前の波動関数は狭い空間に局在する波束で表現されます。
これが波束の収縮と呼ばれるものです。

従って、波束の収縮は1個の電子や光子などが物質に衝突する直前に起きる一般的な現象であることが分かります。
この場合も測定は無関係です。