情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

脳の中の相互依存的三元論

2022-01-22 10:01:59 | 情報と物質の科学哲学
哲学の分野では、唯物論、唯心論などの一元論があります。
脳と心の両者を実在すると考える二元論もあります。

唯物論の主張は、
宇宙に存在するすべてのものは物質からできている
物質の現象は物理法則で完全に説明できる
というものです。
この主張はもっともらしいので、多くの信奉者がいます。

しかし、以前のブログ”物理還元主義は情報概念を消去あるいは還元できるか”において唯物論(物理主義、物理還元主義)には科学的根拠がないことを示しました。
従って、「脳という物質=心」という一元論は間違いであることが分かります。
一方、脳の中には物質と心の両者があるという二元論がありますが、これにも以下で示すような問題点があります。

周知のように脳現象において情報概念は不可欠です。
情報は、脳という物質と心とを結びつけるものなのです。
脳というシステムを科学的に捉えるには、物質、情報、心という三者を実在するものとする三元論が不可欠です。
このときの物質、情報、心という三者は独立した存在ではなく相互に依存した関係にあります。
しかも、三者は互いに還元することも出来ません。
これらの三者は、混然一体となって脳というシステムを構成しているのです。
この状況を相互依存的三元論と名付けます。

脳科学や脳神経科学は、脳内部で情報処理がなされているとしています。
それにも拘らず、心身問題を議論する際には脳の中にあるのは物質と心であり情報の存在を無視しています。
実に不可解極まりないことです。

脳科学者や脳神経科学者は、脳における情報の本質的役割について真剣に向き合うべきだと思います。

詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!

ロボットの行動を制御する物質と情報

2022-01-20 11:36:33 | 情報と物質の科学哲学
学習で得られた経験を利用して行動するロボットの行動は、
(1)物理的決定論
に加えて
(2)ロボット自身が環境との相互作用によるスーパー因果律にも影響されます。
 
特に注意すべきことは、
(1)ロボットの行動が物理則に従うことは必要条件ですが
(2)物理則はその行動を説明するための十分条件ではない
ということです。

例えば、
(1)ロボットの動きそのものは物理則に従いますが
(2)直進するか曲がるかを決めるのはロボットに組み込まれた
   プログラムです。
 
ロボットは、状況に応じて複数の選択肢から一つを選択します。
選択いう現象は、自然現象にはありません。
自然現象は、物理的決定論か偶然に従うだけです。

進化論に自然選択説(自然淘汰説)があります。
これは、「自然界が環境に適した種を選択している」ことを主張するのではありません。
「遺伝子の突然変異によって環境に適した種が残る」ことを主張するだけです。
→ 結果論

環境からの入力を利用してロボットが主体的な選択行為をするには
(1)先ず入力物理量を測定器などで情報化し
(2)その情報に基づいて複数の選択肢の中の一つを選択する論理的操作が必要です。

選択という概念は、動物の行動の主体性と密接に関係します。
餌と敵が見えたとき、餌を取るか敵から逃げるかの二者択一に迫られます。
下等な動物ほど選択肢の数が少なく、高等な動物ほど選択肢の数が多いです。
この選択行為が動物に可能になった時点でその動物に意識が誕生したと想像できます。

選択の自由が全くないのが決定論です。
決定論という言葉を聞くと
(1)物理的決定論を思い浮かべますが
(2)数学や論理学を含む情報則で記述される情報的決定論もあります。

高等動物やロボットは、情報駆動型制御システムです。
これらの現象を説明するには
(1)物理則による説明
に加えて
(2)情報処理/推論/計算/学習など情報に関係する情報則による説明
の二元論が不可欠です。

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物理主義はコンピュータの現象を説明できない

2021-12-23 16:05:46 | 情報と物質の科学哲学
物質現象は、物理法則で完全に説明できる。
脳も物質から出来ているので、脳や心に関する現象は物理法則で説明できる。

これが哲学者が唱える物理主義(物理還元主義)というものです。
哲学の教科書には今でも出ています。

当ブログでは、情報概念を用いて物理主義は成り立たないことを述べて来ました。
今回は、心や意識という超難解なものではなくコンピューターに関する現象を物理主義だけで説明できるかについて分析します。

コンピューターが物質で出来ていることは自明です。
従って、コンピューターに関する物質現象は物理法則で完全に説明できることも自明です。

しかし、コンピューター内を行き来するパルスが数値情報を担うことや、コンピューターが計算を行っていることを物理法則で説明することは原理的に不可能です

物理学は、パルスの電圧や電流について説明できますが、このパルスが情報を表現していることは説明できません。
物理学は、物質が情報を表現することに関しては何も言えないのです。
従って、コンピュータに関する現象を物理法則だけで説明できるとする物理主義は成り立ちません。

同じ理由で、測定器に関する現象も物理法則だけでは説明出来ません。






シャノンの功罪

2021-12-19 19:18:21 | 情報と物質の科学哲学
シャノンの画期的論文『通信の数学的理論』は、科学の世界に革命をもたらしました。
この成果により、情報は物質およびエネルギーと共に現代科学の三大基礎概念になったのです。

その成果があまりにも絶大だったためにシャノンの情報概念が普及しすぎるという負の効果をもたらしたのです。
周知のように、シャノンの情報には意味がありません。

しかし、この世界には意味のある情報が至る所にあります。
これらは、シャノン流の意味のない情報とは本質的に違うものです。

シャノン流の情報に慣れ親しんだ研究者は、敢えて情報とは何かを問うことを忘れています。
これがシャノンが意図せずにもたらした負の遺産なのです。

「環境から情報が入る」は間違い!

2021-12-19 16:24:12 | 情報と物質の科学哲学
環境から情報が入るという言い方は日常的に使われます。
しかし、これは事実に反するのです。

外界から感覚受容器に入るのは、物理的刺激に過ぎません。
その刺激が受容器のしきい値より大きいと、受容器はパルス列を出力します。
このパルス列は、刺激物質に関する情報を感覚野に伝えます。

つまり、外界からの刺激は受容器によって初めて情報化されるのです。
従って、外界から情報が入るというのは間違いです。
この言い方は便利ですが、情報概念の本質を見逃す大きな原因になっています。

情景などの情報が外界にあるとするのは錯覚です。
情景などはすべて脳内部で情報化されて意識化されるのです。