情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

情報は客観的概念ではない!

2021-12-31 10:57:26 | 人工知能・意識
シャノンの情報概念を用いているチャーマーズ、トノーニ、人工知能・人工意識研究者を初め多くの人は情報が客観的概念であると信じていますが、これは全くの誤解です。
その理由を説明します。

先ず、以下の議論で用いる客観的概念の定義をします。
客観的存在とは、自然法則(物理法則)に従う対象である。

この定義は、自然科学において認められているものです。

この定義から直ちに非物質的存在である情報は客観的概念ではないことが帰結されます。

一方、脳における情報も以下の理由で客観的概念にはなり得ません。
脳内で情報が生じるのは以下の過程によります。
(1)物理的刺激が感覚受容器に入ります。
(2)刺激量が受容器のしきい値より大きいとパルス列が送出されます。
(3)このパルス列は、単なる物質ではありません。
(4)このパルス列は、刺激物質に関する情報を表現しているからです。

受容器の特性は個人個人で違うので、同一の刺激量に対する応答も違います。
これは、パルス列が運ぶ情報の内容が個人個人で違うことを意味します。
つまり、感覚野に入る情報は客観的なものにはなり得ないのです。

これらの事実から脳内にある情報は主観的概念であることが分かります。

情報が客観的存在であると多くの人が誤解しているのは、シャノンの革命的功績により情報概念が空気のような存在になり、それが実在していると錯覚していことによると思われます。


もう一つのハードプロブレム 生命現象

2021-12-27 19:51:28 | 哲学
チャーマーズは哲学者にクオリアの謎というハードプロブレムを解けと言いました。
脳という物質からクオリアという神秘的なものが生じる理由を解き明かせというのです。

チャーマーズは、どうして物質から生命が生じるのかというハードプロブレムに言及しないのでしょうか。
この問題の方がクオリアより根源的ではないでしょうか。

脳と心に関心を持つ哲学者は、物質からなぜ生命が生じるという問題に対して答えていません。

物質から生命が生じるという問題より脳からクオリアが生じるという問題の方が遥かに難しい筈です。

生命の謎に答えていない哲学者がどうしてそれより遥かに難しいクオリアの謎に答えることが出来るのでしょうか。
本末転倒と言うべきです。

哲学者は、クオリアの謎より生命の謎に挑戦すべきです。
それを解決すれば、哲学者にもノーベル生物学賞が与えられるのです。


クオリアそのものの説明は原理的に不可能

2021-12-26 10:56:34 | 哲学
チャーマーズはクオリアというハードプロブレムに挑めと言います。

しかし、クオリアそのものを言葉で説明することは出来ません。
言葉で説明できないものを言葉で説明することは原理的に不可能です。

クオリアに関して説明できることは、せいぜい感覚野のどの部分を刺激するとどんなクオリア(例えば、”赤い”とか“痛い”)が生じるかということを被験者が報告するだけです。
このときの報告は、言葉によるものでありクオリアそのものの報告ではありません。

言葉に関して最も熟達している哲学者達がこれらのことに言及しないことは実に奇妙です。

チャーマーズ「意識は自然現象である」説は間違っている

2021-12-25 16:15:54 | その他
哲学者チャーマーズは『意識する心ー脳と精神の根本理論を求めて』の序文で、意識を自然法則の支配下で起こる自然現象とみなすとしています。
更に、意識が自然現象であることに異議を唱えることは難しかろうとも言っています。

自然現象とは自然法則つまり物理法則に従う現象のことです。
つまり、チャーマーズは人間も物質なので物理法則に従うはずだという唯物論者の一人であることを意味します。
しかし、同著で自分は唯物論には組しないとも言ってます。
明らかに、矛盾しているのです。

コンピューターは物質ですが、その現象を物理法則だけで説明することは出来ません。
物理法則で説明できるのはコンピュータ回路の電磁気的現象に関してだけです。
コンピューターが計算していることを物理法則は説明できません。
そのことは、人間が解釈していることなのです。

チャーマーズ「意識は自然現象である」説はトンデモ説ではないでしょうか。