情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

クオリアの謎が解けない理由「言葉で表現できない現象を言葉で説明することは不可能」

2024-08-04 14:44:08 | 感覚(クオリア)
クオリアとは感覚質そのもののことです。
例えば、赤いリンゴを見たときに感じる”赤い”という自覚そのもののことです。
このクオリアを言葉で表現することはできません。

脳科学者たちは様々な手法で脳内の物質現象からクオリアが生じる理由を解明しようとしています。
しかし、脳内の物質現象がクオリアを引き起こす法則を確立することは以下の理由で不可能です。

(1)客観的な法則から主観的なクオリアを帰結することはできません。
異なるカテゴリー同士を法則で関係づけることはできないからです。
例えば、数概念と物質概念とを法則で関係づけることはできません。

(2)言葉で表現できないクオリアを言葉で表現された法則で説明することは論理的に不可能です。
もしこれができると仮定するとパラドックスが生じるからです。

脳科学者たちが解明できることは、例えば皮膚を針で刺すと脳回路のどの部分が反応して”痛い”というクオリアが生じるかという対応関係だけです。



クオリアは感覚受容器に入る光・音・分子に対する認識結果である

2024-08-03 14:45:08 | 感覚(クオリア)
クオリアは感覚器に入った刺激に対して感じる心理的印象のことです。
例えば、ある波長の光が目に入ったときの「赤」という質感自体です。
この質感自体を言葉で表現することはできません。

クオリアに対する研究は哲学、心理学、脳科学、物理学などで行われてきましたが、未だに最終的結論は得られていません。
(クオリアに関する記事がWikiにあります。)


今回は、「クオリアは感覚受容器に入る光・音・分子に対する認識結果である」という仮説を提唱します。

感覚受容器は、ヒト以外にも鳥、昆虫、魚などの動物にもあります。
これらの動物が生存していくためには、感覚受容器に入る刺激が何であるのかを認識することが必要不可欠です。
この事実を説明できるのが今回提唱する仮説です。

この仮説によれば鳥、昆虫、魚などの動物にもクオリアがあり、それによって生存しているのです。
クオリアは、ヒトだけのものではないのです!

今回提唱する仮説は非常に説得力を持つものと自負しています。
皆さんはどう思われますか?





クオリアとは何か クオリアの起源 「クオリア=受容器情報実体化 、意識の起源」説

2022-03-08 19:21:20 | 感覚(クオリア)

受容器に入力した物質が脳の中で感覚化される不可思議な現象について考えます。
この過程を下図の「感覚情報実体化モデル」として提案します。

このモデルで強調したいことは、捉えどころのない感覚という概念を脳内に実在するものとしていることです。

以下、図中の番号に沿って説明します。

①外界にある対象物です。
②対象物からの入力物質です。
③受容器は、入力物質の物理量が一定のしきい値を超えるとインパルス列を出力する検出器の機能を持ちます。
 (入力物質)(受容器の種類)
   光      視細胞
   音波     聴細胞
   圧力     触細胞
   分子     嗅細胞、味細胞
④受容器の出力インパルス列は、入力物質に関する検出情報を担います。
 これらの関係において特に注意すべき点は、各受容器の出力は
 すべて同じ性格の電気パルス(インパルス列)であることです。
 つまり、インパルス列だけを見る限り入力物質の違いは分かりません。
  受容器は、物理量を抽象化(透明化)する機能を持ちます。
 ここまでの過程は、種々の人工センサーとして実現されています。
⑤大脳新皮質の一部である。それぞれの感覚に対応した領域があります。
  構造的には全く同じ神経細胞ネットワークです。
  ネットワーク間には電気インパルスが縦横無尽に行き来しているだけです。
  ここまでの過程は、すべて物質現象として物理則で完全に説明できます。
⑥ここからの過程は、非物質現象です。
  感覚野で種々の感覚のもとが生じます。
  受容器(検出器)された入力物質に関する情報が感覚野で読み取られます。
  その読取り結果(=情報の意味)がクオリアとなって実体化され意識化されます。
  感覚(クオリア)は、脳内に実在するものです。
  物理学や唯物論はこれを否定しますが、感覚現象が物質現象でないことは自明です。
  感覚そのものを物理的に測定することも不可能です。
  脳波や血流を測定すると感覚との間に相関があることは実証されています。
  但し、その事実から両者間に物理的因果関係があることは証明できません。
  何故なら、物質現象と心理現象とはカテゴリーが違うからです。
⑦具象化(意識化)された感覚は、受容器の属性として付与されます。
  例えば、”痛い”という感覚は感覚野ではなく指先に生じる
  失われた指先に痛みを感じるという幻肢がそれを証明しています。
  この機能があるからこそ外部からの障害にうまく対処できるのです。
  正に進化の賜物です。
⑧視覚情報の場合、感覚具象は更に対象物の属性として間接的に付与されます。
  そのため、今見ている像が外部に実在していると錯覚します。

クオリアは、感覚野によって情報が実態化(意識化)されたものです。

ここまでの議論からクオリア意識の原始的形態であると推測できます。

これを「クオリア=意識の起源」仮説と名付けます。

意識に関する哲学者の議論は、専ら言葉に関わるものです。
そのことが多種多様な混乱をもたらす主要因になっています。

しかし、そもそも意識という現象は言葉を持たなかった人類の祖先にもあったと考えるのが自然であり合理的でもあります。
従って、意識に関する哲学者の議論は意識の本質から外れたものと言えます。

最近、生物の進化と意識の起源との関係を詳細に論じた大著の邦訳が出ました:
トッド・E・ファインバーグ、ジョン・M・マラット(鈴木大地訳)
 『意識の進化的起源-カンブリア爆発で心は生まれた」-』、勁草書房、(2017)

意識という概念は非客観的なものであり、その定義も確立していません。
本書ではもっとも基盤的で感覚的な意識の本性と起源について説明しています。
そして、最初の脊椎動物が最初の意識を有していたと主張しています。
本書の議論は足が地に着いたものであり、ヒトの意識を扱う哲学者の空理空論より
よほど説得力があります。

ロボットには感覚野がないのでクオリアは生成出来ません。
ロボットの脳に相当するニューラルネット内部の過程は、すべて計算過程あるいは情報処理過程です。
それ以上でも以下でもありません。

 

詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!

動物の行動に不可欠な感覚情報 情報概念の誕生

2022-03-08 09:09:46 | 感覚(クオリア)
動物は感覚を利用して行動します。
感覚受容器に入る刺激は、パルス列に変換されて感覚野に送られます。
これらのパルス列は、刺激に関する情報を運びます。

光や音や匂いなどの刺激のどれも同一形式のパルス列に変換されるので、パルス列だけではもとの刺激が何であるのかを識別できません。

感覚野にはこれらのパルス列が運ぶ情報を異なる感覚に変換する機能があります。
動物は、この感覚を利用して行動を決定します。
これがクオリアの正体なのです。
不可解なものとして捉えられているクオリアには、このような合理的な意味があるのです。

昆虫にも微小脳がるので環境に適した行動を実現できます。
ノーベル生理学・医学賞を受賞したフリッシュが解読したミツバチのダンスは、あまりにも有名な例です。
水波誠『昆虫ー驚異の微小脳ー』、中公新書1860(2006)

感覚という概念を情報の一種として捉えて「感覚情報」と名付けます。
動物の叫び声は、警戒や求愛という感覚情報を運びます。
これは動物が進化の過程で情報という概念を獲得したことを意味します。
従って、情報概念は脳の出現と同時に誕生したことが分かります。

感覚情報は、言語情報より遥かに古い情報概念です。





クオリアの解明 「クオリアは感覚野による受容器情報の読み取り結果である」

2022-01-14 16:33:35 | 感覚(クオリア)
クオリアは、受容器情報を読み取った結果生じるものです。
その根拠をガスセンサーとの対比を用いて説明します。

ブログでは、「物質現象に情報が関係している」と言える必要十分条件は次の4条件が満たされているときに限ることを提案しています。

(1)物質現象として情報の定義と創発がなされている
(2)情報を表現する情報表現物質が生成されている
(3)情報の読取り機構がある
(4)読取り結果の利用がある

これらを情報概念の基本的要件と名付けます。
これは、情報概念の科学的定義と言えます。

因みに、脳科学における情報概念は極めて曖昧なものです。

器械系と生体系における情報の役割を比較するために簡単な例としてガスセンサーと嗅細胞からなるシステムを次のようにモデル化します。
(器械系の過程)
ガスがガスセンサーに入ります。
ガスセンサーは特定のガスを検出すると、その情報をパルスで表現して出力します。
その情報表現物質が情報の読取り器に入ります。
読み取り器は読み取った情報”ガス検出!”を出力します。

(生体系の過程)
ガスが嗅細胞に入ります。
嗅細胞は特定のガスを検出すると、その情報をパルスで表現して出力します。
その情報表現物質が嗅覚野に入ります。
嗅覚野は読み取った情報を”ガスの臭いのクオリア”として出力します。

器械系の過程と生体系の過程とは上のモデルで確認できるように対応関係があります。

結局、臭いのクオリアは嗅覚野によるガス情報の読取り結果であると推測されます。
そのクオリアによって動物は行動を決定します。
クオリアにはこのような合理的裏付けがあることが分かります。
クオリアに哲学者が言うような神秘性を感じる必要はありません。

一般に感覚野は、前述のような受容器情報の読み取り器官としての役割があります。
感覚野にこのような機能が備わっているのは、生命の進化によるものなのです。

哲学者が何故物質からクオリアが生じるのかを問う(ハードプロブレム)のであれば、その問いの前に何故物質から生命が誕生したのかを問うべきなのです(第2のハードプロブレム)。