情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

波束の収縮は測定前に起きている! 波束の収縮のパラドックス!

2024-08-26 14:33:25 | 物理学・量子力学
「波動関数の収縮(波束の収縮)は測定によって生じる」というのが量子力学の定説です。
言い換えると、測定しない限り波束の収縮は起きないということです。
並木美喜雄『量子力学入門ー現代科学のミステリー』、p.102、岩波新書210 (1995.3)

この定説は、測定概念に対する物理学者の誤解に因るものであることを思考実験で示します。

電子を1個ずつ発射する電子源があります。
その前方に電子検出フィルムがあります。
(外村彰『量子力学への招待』、岩波講座、物理の世界(2001.11), pp.8-9、参考)

更に、検出フィルムの全体を写す動画カメラがあります。
このカメラは、フィルム上に生じた黒点を順次記録します。

電子源から発射された1個の電子が検出フィルムに衝突すると検出フィルムに黒点が生じます。

電子が検出フィルムに衝突する前の電子の状態は波動関数で表現されます。
一方、検出フィルム上の黒点は狭い空間にあります。
この状態を測定による波束の収縮といいます。
(並木『量子力学入門』)

ここまでの過程では検出フィルム上に黒点という物質現象が生じただけです。
そのことは前述のフィルム撮影動画で確認できます。
まだ測定はなされていないことに注意してください!

検出フィルム上の黒点の位置を測定した時点で初めて測定が完結するのです。
しかも、黒点の位置の測定はフィルム撮影動画を測定者の都合のいい時間に見て行えばいいのです。

ここまでの過程を時間順に示します。
(1)電子検出フィルム上に黒点が生じる。(波束の収縮)
(2)測定者の都合のいい時間に動画記録を見て黒点の位置を測定する。

これらの事実から、波束の収縮は測定以前に起きていることが分かります。
「測定によって波束の収縮が生じる」という結論は成り立ちません!
まさに波束の収縮のパラドックスです!

光子源から発射された1個の光子が感光板に衝突して黒点が生じる場合も同様です。
感光板に光子が衝突して黒点という物質現象を起こしただけです。
まだ測定はなされていません。

測定は、
(1)電子検出フィルム上の黒点の位置情報を記録した時点、
あるいは、
(2)感光板上の黒点の位置情報を記録した時点
で完結します。
これらの記録をいつ誰が読み取るかは測定とは無関係なのです。

なぜ物理学者は電子検出フィルム上、あるいは、感光板上における黒点という物質現象の発生時点で測定がなされたと誤解するのでしょうか。

物理学における測定は、測定対象の物質現象が生じた直後に行うものであるとしています。
そうしいないと、対象とする物資現象が変化する可能性があるからです。
そのために前述のような物理学者の誤解を招いていると思われます。

更に、
(1)電子検出フィルムの目的が電子の衝突位置の測定、あるいは、
(2)感光板の目的が光子の衝突位置の測定であるとしているために、
「電子検出フィルムや感光板における物質現象(黒点)の生起=測定」
としていることも誤解のもとになっていると思われます。

一方、今回の思考実験における電子検出フィルム上、あるいは、感光板上の黒点は時間が経過しても変化しません。
そのため、黒点が生じた直後にその位置を測定しなくてもいいのです。

更に言えば、電子検出フィルムや感光板における黒点の位置を測定しなくても波束の収縮は起きているのです。
測定は波束の収縮の必要条件ではありません。

以上の議論から波束の収縮は次の2種類あることが分かります。
(1)測定による波束の収縮
(2)測定によらない波束の収縮



ルビンの壺と立体地図用3Dメガネ

2024-08-20 14:33:16 | 人工知能・意識・脳科学
多義図形として有名なのがルビンの壺です。
背景が黒で中央に白い壺のような図形があります。

これを見ると中央にある白い図形が壺に見えます。
一方、背景の黒に注目すると壺の左右に人の顔が見えます。

面白いことに壺と顔が同時に見えることはありません。
必ず壺か顔のどちらかしか見えないのです。

この種の図形を多義図形といいルビンの壺の他にもあります。

これにヒントを得て立体地図で使う3Dメガネの場合にどうなるかを試しました。
3Dメガネには左が赤、右が青の半透明なフィルムが付いています。
(立体地図によっては左右逆のこともあります。)

このメガネで立体地図を見ると地図が立体に見えるのです。
3Dメガネと呼ばれる所以です。

さて、この3Dメガネで白紙を見るとどうなるでしょうか。
ルビンの壺から予想できるように白紙は赤と青が交互に見えるのです!
赤と青を同時に見ることは出来ません。

もし、赤に集中すれば赤だけが見えます。

脳は、白紙の色が赤か青の一方の色としてしか解釈できないようです。
多義図形も同じ理由と思われます。

3Dメガネをお持ちの方は是非試して下さい!

夏休みの自由研究としてどうでしょうか!



「シュレーディンガーの猫」放射線検出器に波動関数は適用できない!

2024-08-12 19:54:22 | 物理学・量子力学
「シュレーディンガーの猫」の概要:
猫がいる箱の中には、放射線同位元素、放射線検出器、検出されたとき毒ガス入りの瓶を割る装置などがあります。

放射線同位元素の状態は、”放射線放射前”を表す波動関数と”放射線放射後”を表す波動関数との重ね合わせになります。

この波動関数の重ね合わせ状態は放射線検知器、毒ガス入り瓶の破壊装置、猫の生死の状態もそれぞれの波動関数の重ね合わせになるというのが物理学者の考えです。

詳細は次の参考書をご覧ください:
並木美喜雄『量子力学入門ー現代科学のミステリー』、岩波新書210 (1995)

ここで、前述の検出器に波動関数を適用できるのか考えてみましょう。
波動関数は、粒子的性質と波動的性質を相補的にもつ素粒子、原子、分子などに対して適用できる概念です。
これらの微粒子は、干渉縞や回折を起こすので波動的性質を持ちます。

一方、検出器の場合はどうでしょうか?
この装置を床に落とすと床に傷がつくので粒子的性質を持ちます。
しかし、干渉縞や回折を起こさないので波動的性質を持ちません。
従って、検出器に対して波動関数を適用することは出来ないのです。

この検出器に対して波動関数を適用する「シュレーディンガーの猫」の議論に一体どのような意義があるのでしょうか。


観測(測定)過程における3種類の時間

2024-08-07 15:29:38 | 物理学・量子力学
観測過程には次のような3種類の異質な時間があります。

(1)観測器(測定器)で粒子が観測される前の”数学的時間”
このときの粒子の状態は波動関数で記述されます。
波動関数は複素数なので波動関数における時間は物理的なものではなく数学的なものです。

(2)粒子が観測器に入ったことで生じる物質現象における”流れる時間”
このときの物質現象を記述する時間は、いわゆる”流れる時間”です。
古典力学における時間と同じものです。

(3)観測器による観測結果の出力後における”静止した時間”
この観測器は観測結果を紙に印刷したものを出力するとします。
電子のスピンの観測の場合、紙には「上向きスピン」または「下向きスピン」という文字が印刷されます。
印刷用紙の状態を記述する時間は”流れる時間”ではなく”静止した時間”です。
この状態を物理法則で説明することは出来ません。
何故なら、印刷結果を印字する文字は物質的概念ではないからです。

なお、印刷用紙に印字された観測結果を読み取る時刻は観測者の都合によるものです。
観測結果に観測者の意思が影響することは不可能です。

従来の議論は、観測装置の出力結果が出た時点で観測結果を読み取ることを前提にしています。
観測問題における混乱は、すべてこの前提に起因するものです。

しかし、この前提には理論的根拠がなく、かつ、必然性もありません。
観測結果をいつ読み取るかは観測者の都合によるものだからです。






「シュレーディンガーの猫」に対するフォン・ノイマン解釈の矛盾

2024-08-07 14:35:33 | 物理学・量子力学
天才科学者フォン・ノイマンは「シュレーディンガーの猫」の生死を観測者の意識により判定しても理論的には矛盾しないことを示しました。

しかし、この解釈は猫の生死という客観的事実を観測者の意識という主観で判定できることを意味してます。
客観的事実を主観で説明できるとするノイマンの主張は明らかに矛盾しています。
ノイマンの主張はナンセンス以外の何物でもありません。