情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

確率複素ベクトルと確率の干渉

2022-05-18 14:21:11 | 数学
半径Aの複素円を考えます。
この複素円の半径と円周を共にn等分すると複素円はn×n個の素領域に分割されます。
これらの素領域を等確率で生起する根源事象とみなします。
すると、素領域の生起確率は複素円の面積A×Aに比例します。

いま、位相θをもつ素領域が生起したとします。
これと同位相の複素ベクトルψ=Aexp(iθ)と位相θをもつ素領域とは1対1に対応します。
そこで、複素ベクトルψ=Aexp(iθ)の生起確率をA×Aで定義します。
便宜上、0<A≦1/2とします。
このベクトルを”確率複素ベクトル”と名付けます。

次に、2つの確率複素ベクトルをそれぞれψ1=A1exp(iθ1)及びψ2=A2exp(iθ2)とします。
このとき、2つの確率複素ベクトルを合成した確率複素ベクトルψに対して次式が成り立ちます。
ψ=Aexp(iθ)=ψ1+ψ2 =A1exp(iθ1)+A2exp(iθ2)
=A1cos(θ1)+A2cos(θ2)+i{A1sin(θ1)+A2sin(θ2)}

この合成されたψの生起確率は振幅Aの2乗で次式のように与えられます。A×A=A1×A1+A2×A2+2A1×A2cos(θ1-θ2)
なので合成確率複素ベクトルの生起確率は
0≦A×A≦1
となります。

特にA1=A2の場合、
合成確率複素ベクトルの生起確率=1(θ1とθ2が同位相):
合成確率複素ベクトルの生起確率=0(θ1とθ2が逆位相)
が成り立ちます。

0<A1及び0<A2がであるにも拘わらずθ1とθ2が逆位相のときに合成確率複素ベクトルの生起確率が0になるのは奇妙なことです。
この現象は、ψが複素数であることに起因しています。



有理数の剰余演算に関する分配則

2022-05-17 16:12:52 | 数学
通常の剰余演算は、正の整数に対して定義されています。
この場合、a、b、n を正の整数とするとき剰余演算に関して次の分配則が成り立ちます:
a modn = ((a modn) + (b modn))modn

以下で、有理数に対しても同様な分配則が成り立つことを示します。
m、n、p、q を正の整数とします。
すると、q /p を法とする演算は次のようになります。
m1/n1 = m1p/n1q mod(q /p ) (1)
m2/n2 = m2p/n2q mod(q /p ) (2)
m3/n3 = m3p/n3q mod(q /p ) (3)

このとき、次の関係があるとします。
m3/n3 = m1/n1+ m2/n2 (4)
ここで、両辺の剰余演算mod(q /p ) を (1)(2)(3) 式を用いて行うと次式になります。
m3p/n3q mod(q /p ) = ((m1p/n1q mod(q /p ) + m2p/n2q mod(q /p )) mod(q/p )

更に、(4)式を用いると結局次式が成り立ちます。
(m1/n1+ m2/n2) mod(q /p )
 = (( m1/n1 mod(q /p ) + m2/n2 mod(q /p) )) mod(q /p )
これが有理数に関する剰余演算の分配則です。


すさまじくて痛ましい天才数学者ナッシュの生涯

2021-03-17 08:21:36 | 数学
シルヴィア・ナサー(塩川優訳)『ビューティフルマインド-天才数学者の絶望と奇跡-』、新潮社(2002.3)

ナッシュ均衡でノーベル経済学賞を受賞したナッシュの伝記です。
ラッセル・クロウが主演し数々の賞を受賞した映画”ビューティフルマインド”の原作です。

同書では、若き天才数学者を獲得しようとしたいくつかの大学とナッシュとの駆け引きを初め、プリンストン大学における天才秀才の学生たちの生活が生々しく描かれています。
後日有名になる数学者の卵たちとのやりとりにも興味を惹かれます。

ナッシュ均衡のアイディアをフォン・ノイマンに伝えたときの感想は”不動点定理の一つに過ぎない”という酷評でした。
それを聞いたときナッシュは、ナッシュ均衡のアイディアがノイマンのゼロ和ゲーム理論をはるかに凌いでいたことをノイマンが悟ったための嫉妬のせいではないかと感じたようです。

ナッシュは、ナッシュ均衡の成果で自分がフィールズ賞を受賞できると信じていましたが、それを逃したために精神状態がおかしくなりました。

ナッシュは、自分の才能を信じて数学の難問に挑戦し続けました。
超難問であるリーマン予想を解決したいという天才たちは後を絶ちません。
ナッシュもその誘惑にとらわれましたが結局挫折しました。
そのこともナッシュの精神に一層のダメージを与えたようです。

連続体仮説を証明しフィールズ賞を受賞したコーヘンもリーマン予想の解決に挑戦しましたが失敗しました。
コーヘンは、ナッシュの5年後輩です。

ハイゼンベルクの不確定性原理は間違っているという考えを無謀にもアインシュタインに相談したところ、やさしくたしなめられたそうです。

ナッシュは、病院への入退院を何度も繰り返しました。
精神状態がおかしくなってプリンストン大学構内をさまよって壁に頭を打ち付けたりおかしなことを言ったりしたために”ブリンストンの幽霊”と呼ばれたこともありました。

精神状態が不安定な時には、世の中のささいなことにも因果関係があると信じて新聞の隅々まで目を通して自分なりの関連付けをしていました。
このよう傾向はゲーデルにもみられます。

ナッシュが精神分裂病になってからも何人かの数学者仲間は、天才数学者ナッシュを何とか立ち直らせたいと応援しました。
何十年もかけて精神分裂病は寛解しました。

天才の想像を絶する集中力にはいつものことながら圧倒されます。



『ロジ・コミックス』 論理学者ラッセルの執念と狂気

2020-10-23 17:09:17 | 数学
ドクシアディス他『ロジ・コミックス-ラッセルとめぐる論理哲学入門』、
筑摩書房(2015)
という劇画風のかなり風変わりなコミックスがあります。

バートランド・ラッセルの伝記を兼ねた論理学と集合論の歴史です。
絵もきれいで非常に面白いストーリーになっています。

ラッセルと彼の師であるホワイトヘッドの共著『プリンキピア・マテマティカ』で数学の基礎を論理学で構築しました。

この中で、ラッセルは”1+1=2”を証明するために何と362頁も費やしたそうです!!!
何という執念でしょうか。
ここまで来ると、もはや狂気に近いものを感じます。
このようなイギリス固有の不屈の精神を”ジョンブル魂”というそうです。

アリストテレス以来の論理学者とされるゲーデルの「狂気」も納得できるような気がします。



対角線論法の反例 対角線論法自体のパラドックス

2020-10-21 09:03:43 | 数学
(1)カントールの対角線論法は、0と1を含まない開区間(0,1)に含まれる無限小数の濃度に対して適用されます。

便宜上、無限小数を2進表示します。

(2)対角線論法は自然数と区間内の無限小数が1対1に対応すると仮定し、その対応表を作ります。

(3)対応表内の無限小数に対角線論法を適用して得られる無限小数が”.000・・・になる場合を考えます。
もちろん、この可能性を排除することはできません。

(4)この無限小数”.000・・・は、0に等しいので開区間(0,1)に含まれません。

(5)0に等しい無限小数”.000・・・”は開区間(0,1)の定義により対応表にはもとから含まれていません。

(6)対応表に含まれていない無限小数”.000・・・が出てきても矛盾は生じません

従って、前述のような場合には対角線論法自体が成り立ちません

(7)仮に無限小数”.000・・・”が対応表に含まれているとすると、開区間の定義によりこの値は正になります:
.000・・・>0!!!
これは明らかにパラドックスです。

結局、対角線論法にはこのような欠陥もあるのです。
対角線論法の本質的な欠陥についてはこちらをご覧ください。