量子現象には本質的にランダム性があります。
このランダム性は、量子力学の無知によるものではなく素粒子にもともと備わるものです。
ランダム性を数値的に表す概念に確率があります。
量子力学における確率概念には数学のものにはない著しい特徴があるのです。
それは、量子力学における確率は量子現象の測定で得られる相対頻度を意味するからです。
従って、この確率概念は量子測定と密接に関係しているのです。
この点が数学的確率と本質的に違います。
電子のスピンの測定を多数回行い、次の2つの結果が得られたとします。
事象1(上向きスピン)の出現回数=Su
事象2(下向きスピン)の出現回数=Sd
この結果から量子力学は
事象1の相対頻度=事象1の発生確率Pu=Su/(Su+Sd)
事象2の相対頻度=事象2の発生確率Pd=Sd/(Su+Sd)
であると結論します。
そして、理論の予測値がこれらの値にほぼ近ければ、その理論は正しいとっします。
量子力学における確率が前述のような相対頻度を意味することについて分析します。
相対頻度を求めるには、事象の出現回数を測定することが必要です。
つまり、出現回数は測定値になるのです。
先の量子現象の測定値は、基準量と測定量との比で定義される無名数(数値)になります。
基準量は全事象の出現回数の総数、各事象の測定量はそれぞれの出現回数です。
先の例では、
基準量=Su+Sd
各事象の測定量=SuとSd
測定値情報は基準量と測定量との比で定義されるので、量子現象の測定値が確率になることが分かります。
ここで忘れてならないのは、量子現象の測定値は測定器と量子(素粒子)との絡み合いにより創発されるものであることです。
従って、この測定値は測定以前には存在しません。
量子現象の測定値が含意するこのような性質は、古典力学にはありません。
言い換えると、量子力学における確率概念は測定と不可分の関係にあるのです。
古典力学における物理量は、測定以前に確定しています。
古典力学における確率は、分子の運動を正確に記述する方法が分からないため止むを得ず用いられているものです。
言うまでもなく、数学的確率は測定とは全く無関係です。
因みに、量子力学は数学的確率をそのまま用いており、前述のような視点は全くありません。