情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

人間と人工知能による認識には本質的な違いがある

2022-01-30 16:15:28 | 人工知能・意識
深層学習は急速に発展しています。
そのパターン認識能力は、人間のそれを凌駕しているとも言われています。
このことから人工知能は人間と同じ意味で認識しているとされています。
しかし、これは錯覚であることを以下で証明します。

便宜上、手書き数字認識の場合について考えます。

人間は、手書き数字を見てそれがどの数字であるかを判定します。
これが人間による認識と呼ばれるものです。

一方、人工知能の場合は手書き数字を二次元データで表し、そのパターンの特徴を抽出し、その結果をもとにして手書き数字がどの数字であるかを判定します。
これが人工知能による認識と呼ばれるものです。

ここで注意したいのは、人工知能には入力文字を「見る」という機能(仕掛け)がないことです。
更に、入力文字は情報処理の過程で消失することです。

従って、人間の場合のように入力を見ながら手書き数字がどの数字であるかを判定するという状況がないのです。

別な言い方をすると、人間の場合「入力文字は〇〇である」となりますが、人工知能の場合には単に「〇〇である」となって主語がないのです。

人工知能は、手書き数字のパターンが0から9までのどれに該当するかを分類しているに過ぎません。

以上の分析から分かるように、人間の「認識」と人工知能の「認識」には本質的な違いがあります。

「意識は情報処理結果の読取り現象である」説

2022-01-25 09:46:34 | 人工知能・意識
先のブログ「クオリアは感覚野による受容器情報の読み取り結果である」を参考にして今回は感覚以外の意識全体について考察します。

神経回路網で情報処理をしていることは周知の事実です。
脳は、この情報処理の結果を読み取る必要があります。
この読み取り結果が意識という現象となって現れると推測できます。

そこで、これを「意識は情報処理結果の読取り現象である」説として提唱します。

チャーマーズらの意識に関する議論は抽象的なものでしたが、今回提唱する説は意識の現象に合理的な裏付けがあることを示しています。

脳と意識とは情報を介した機能的因果関係にある

2022-01-24 09:12:12 | 人工知能・意識
ロボット内部では物質と情報とが相互作用しています。
ということは、物質と情報とが何らかの因果関係にあることを示唆します。

物質と情報とは異質な存在なので直接的な因果関係は成り立ちません。
この因果関係はロボットの機構によるものです。
ロボットの機構が物質と情報という異質なもの同士の因果関係を作り出しています。
このような因果関係を機能的因果関係と名付けます。

実は、脳と意識とはこのような機能的因果関係にあると推測できます。
この場合、脳と意識との間には直接的な因果関係は有りません。
両者の間には情報が介在しています。

脳は、情報を介して意識と機能的因果関係にあるのです。

代表的哲学者であるチャーマーズは、脳と意識とを直接的な因果関係で理解しようとするので意識をハードプロブレムと呼んでいるのです。

脳は、情報を介在して意識と機能的因果関係にあると捉えれば意識の謎はいくらか解けるのではないでしょうか。




脳やコンピューターはただの物質ではない!!!

2022-01-22 10:52:48 | 人工知能・意識
脳科学などの本には「脳はただの物質である。その物質から何故意識が生じるのか」という記述が頻繁に登場します。

しかし、脳はただの物質ではありません。
生きている物質なのです。
この自明な事実を脳科学者たちは無視しています。
これでは、脳に関する謎を解くことは決してできません。

因みに、コンピューターもただの物質ではありません。
コンピューター内部には非物質的な情報が存在しています。
それなのに科学者はなぜ「ただの物質であるコンピューターから非物質的な情報が生じるのか」を問わないのでしょうか。
科学者にとって情報概念はあまりにも日常過ぎて空気のような存在であるからなのでしょうか。


脳の中の相互依存的三元論

2022-01-22 10:01:59 | 情報と物質の科学哲学
哲学の分野では、唯物論、唯心論などの一元論があります。
脳と心の両者を実在すると考える二元論もあります。

唯物論の主張は、
宇宙に存在するすべてのものは物質からできている
物質の現象は物理法則で完全に説明できる
というものです。
この主張はもっともらしいので、多くの信奉者がいます。

しかし、以前のブログ”物理還元主義は情報概念を消去あるいは還元できるか”において唯物論(物理主義、物理還元主義)には科学的根拠がないことを示しました。
従って、「脳という物質=心」という一元論は間違いであることが分かります。
一方、脳の中には物質と心の両者があるという二元論がありますが、これにも以下で示すような問題点があります。

周知のように脳現象において情報概念は不可欠です。
情報は、脳という物質と心とを結びつけるものなのです。
脳というシステムを科学的に捉えるには、物質、情報、心という三者を実在するものとする三元論が不可欠です。
このときの物質、情報、心という三者は独立した存在ではなく相互に依存した関係にあります。
しかも、三者は互いに還元することも出来ません。
これらの三者は、混然一体となって脳というシステムを構成しているのです。
この状況を相互依存的三元論と名付けます。

脳科学や脳神経科学は、脳内部で情報処理がなされているとしています。
それにも拘らず、心身問題を議論する際には脳の中にあるのは物質と心であり情報の存在を無視しています。
実に不可解極まりないことです。

脳科学者や脳神経科学者は、脳における情報の本質的役割について真剣に向き合うべきだと思います。

詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!