情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

波動関数における決定論と確率論

2023-01-30 09:25:00 | 物理学
シュレーディンガー方程式を満たす波動関数の状態変化は決定論的であると言われます。
このときの決定論という用語の意味は、古典力学における決定論の意味とは本質的に違います。
古典力学における決定論は、時間の経過とともに物質の状態が決定論的に変化するもので、あくまでも実空間における話です。

一方、波動関数における決定論は複素空間におけるものです。
複素空間における波動関数の値は初期状態が決まると同時に決まります。
時間の経過とともに変わるというのではありません。

波動関数の決定論についてはどの教科書にも書かれていますが、先のブログで指摘したように波動関数には確率論的性質もあるのです。

波動関数における決定論は、量子の波動的性質によるものです。
波動関数における確率論は、量子の粒子的性質によるものです。

シュレーディンガー方程式は検出された電子には適用できない!

2023-01-28 11:04:29 | 物理学
当ブログでは観測による波動関数(波束)の収縮問題が擬似問題であることについて様々な角度から指摘してきました。

今回は、そもそもシュレーディンガー方程式は検出された電子には適用できないことを指摘します。

その理由は至極簡単なことです。
検出された電子の位置は確定しており、これが波動関数の収縮を意味しています。
この電子は静止しているので運動量 p は0です。
ド・ブロイの関係式 λ=h / p によれば、この電子の波長 λ は無限大になります。

ということは、電子の波動関数 exp( ( kx - ω) ) という概念自体が成り立ちません。
つまり、検出された静止している電子にシュレーディンガー方程式を適用することは出来ないのです。

このことは自明だと思いますが、なぜ物理学者はこれに気づかないのでしょうか。
私の推測では、本能的に物理学者は現象を時間発展的に捉えるためだと思います。
更に、基本方程式ですべての現象を説明しようとする習性があるからでしょう。



量子のサイコロとそれを振る機械とは何か

2023-01-26 10:11:59 | 物理学
アインシュタインは”神はサイコロを振らない”と主張して量子力学を批判しました。
しかし、量子にはもともとランダムな性質があるのでアインシュタインの主張には無理があります。

ところで、”量子のサイコロ”とは一体何を意味しているのでしょうか。
それは、波動関数のことだと思います。
何故なら、検出前の量子の状態は波動関数で表現され、波動関数には以前のブログで示したように確率的性質があるからです。
波動関数が意味するサイコロは抽象的な乱数サイコロです。

電子の位置やスピン、光子の偏光などの量子の状態を検出する機械が検出器です。
検出器はこれらの情報を出力します。
従って、検出器が量子のサイコロを振っているということになります。

量子もつれは”量子情報のもつれ”を意味する

2023-01-24 10:58:21 | 物理学
量子もつれ(絡み合い、エンタングルメント)という不思議な現象があります。
EPRパラドックスで指摘された有名な現象です。
量子もつれは、「シュレーディンガーの猫」の問題に登場し多くの議論を巻き起こしました。

量子もつれは量子コンピューターに使われており、量子情報科学で頻繁に登場する概念です。

量子もつれは、電子のスピンや光子の偏光の測定で確認できます。
このときのスピンや偏光という概念は物質的なものではなく、電子や光子という量子が担う情報を意味しています。

ですから、量子もつれは”量子情報のもつれ”を意味しているのです。


波動関数の絶対値の2乗は電子検出の確率分布に対応する

2023-01-21 16:13:35 | 物理学
二重スリット実験における干渉縞は検出電子の確率分布により生じることを前回のブログで示しました。

電子が検出された位置に波動関数(波束)が収縮するという問題について多くの議論がなされています。
当ブログではこの問題が擬似問題であることを度々主張してきました。

今回は、干渉縞が示す確率分布に対する波動関数の役割について取り上げます。

1列に並んだ多数の検出器が捉える電子の個数について考えます。
検出器の大きさは有限なので検出器が捉える電子の個数は、実験回数を増すに従って増えていきます。
但し、波動関数の干渉により一部の検出器には電子は1個も到達しません。

各検出器に到達する電子の総計を並べた頻度分布の曲線は実験回数を増すに従って滑らかになります。
そしてその曲線は最終的には一定の曲線に収束します。
これらの頻度を規格化すれば最終的な確率分布が得られます。

波動関数は多数の独立な電子集団(超時空独立量子集団)のランダムな振る舞いを表現しています。
このことは、波動関数に確率的性質があることを意味します。

波動関数は複素数なので実数である確率とは対応しません。
そこで、波動関数の絶対値の2乗を取れば実数になります。
これが前述した電子の確率分布に対応していると考えられます。

最後に注意して欲しいことがあります。
それは、干渉縞は電子の固有の性質により出来るものであり、波動関数やボルンの確率解釈があって初めて出来るものではありません。
これらの理論は、あくまでも干渉縞を説明するためのものですから。